特集 熊本豪雨1年

熊本豪雨とは

 2020年7月3日夜から4日朝にかけて県南部を中心に記録的な大雨が降った。人吉市や球磨村、八代市坂本町など各地で球磨川や支流が氾濫し、芦北町や津奈木町でも土砂崩れが多発。気象庁は県内で初めて「大雨特別警報」を発表した。

 3~4日にかけて流域各地で24時間に400ミリを超える雨量を観測。球磨川の13カ所で氾濫が発生し、総浸水面積は1020ヘクタールに上った。浸水の深さは人吉市街地で3~5メートルなど、戦後最大級の水害となった。

 7日にも県北部を中心に大雨が降り、山鹿市や小国町などでも被害が発生した。

 一連の大雨による死者は65人、関連死と行方不明はそれぞれ2人。死者の中には、球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者14人も含まれる。

 家屋被害は全壊1491棟、半壊3112棟、浸水713棟、一部損壊2079棟。県は、県南部の7市町村に24団地808戸の建設型仮設住宅を整備した。賃貸住宅を利用するみなし仮設なども含め、6月現在1647戸3749人が仮の住まいを続けている。

 球磨川の治水策について蒲島郁夫知事は昨年11月、支流の川辺川への流水型ダムの建設推進を表明。これを踏まえ、国土交通省が検討を進めているが、流域住民の賛否は拮抗[きっこう]している。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中で初めての大規模災害となった。避難所では感染対策に追われ、ボランティアの受け入れも県内に制限された。

被害概要

7月4日1~8時の気象レーダー画像

 熊本地方気象台などによると、球磨川流域を約8時間、「線状降水帯」が覆い続けて豪雨を降らせた。停滞した梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだことに加え、大気中の水蒸気量が多かったのが要因とみられる。

熊本地方気象台のデータを基に作成(GIF画像)

人的被害

2021年6月3日現在

市町村 死者 行方
不明者
重症者 軽症者 合計
(人)
熊本市          
八代市 4 1 2 19 26
人吉市 20   7 11 38
荒尾市          
水俣市          
玉名市          
山鹿市 2     1 3
菊池市          
宇城市          
天草市       4 4
合志市          
南関町          
長洲町          
和水町          
南小国町          
小国町          
産山村          
西原村          
南阿蘇村          
甲佐町          
山都町          
芦北町 11 1 4 1 17
津奈木町  3       3
錦町          
多良木町          
湯前町          
水上村          
相良村          
五木村          
山江村          
球磨村 25   2   27
あさぎり町          
小計 65 2 15 36 118

住家被害

2021年6月3日現在

市町村 全壊 半壊 一部破損 床上浸水 床下浸水 合計
(棟)
熊本市     1   6 7
八代市 147 160 102     409
人吉市 900 1449 299 268 156 3072
荒尾市   133 150     283
水俣市   22 91     113
玉名市   8 18     26
山鹿市   8 20 1 7 36
菊池市 1 2 3     6
宇城市     1   48 49
天草市   22 269 17 75 383
合志市   1       1
南関町   39 8     47
長洲町         2 2
和水町   1 27   15 43
南小国町 9 29   38
小国町 3 29 20   40 92
産山村     1   1 2
西原村     1     1
南阿蘇村         2 2
甲佐町         5 5
山都町     1     1
芦北町 73 915 577     1565
津奈木町  4 12 89     105
錦町   64 75     139
多良木町 1 8 15   50 74
湯前町     41   1 42
水上村   1 4   6 11
相良村 18 90 75     183
五木村 1     1 5 7
山江村 11 14 20     45
球磨村 332 74 51     457
あさぎり町   51 91   7 149
小計 1491 3112 2079 287 426 7395

7月3、4日の球磨川流域雨量

※は欠測あり
国・県のデータを基に作成

人吉・渡地点の水位変化

連載「2020熊本豪雨 川と共に」

 線状降水帯の発生により県南部に降り続いた豪雨は、県内最大の大河・球磨川を氾濫させ、多くの人々を街もろとものみ込んだ。連載「川と共に」では、球磨川と向き合いながら連綿と流域で暮らし、突如、大水害に襲われた人々の思いや、生活再建の姿を年間企画として取材した。