【あの時何が JVOAD・火の国会議編④】現場の課題「12分野」で解決めざす
![益城町社協の災害ボランティアセンター開設初日に集まった個人ボランティアら=2016年4月21日、益城町(高見伸)](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2021-03/IP170830TAN000047000_04.jpg?itok=0x6TTqYZ)
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)や政府が歩調を合わせ、枠組みを整えていた災害時の連携態勢。熊本地震で実践に突入したが、「正直言ってNPOと連携するイメージはなかった」と県健康福祉政策課長の野尾晴一朗(53)は振り返る。
一般に「災害ボランティア」とは、社会福祉協議会が設ける災害ボランティアセンターを通じて活動する市民のことだ。しかし、避難所支援チームミーティングが始まった昨年4月19日時点で、センター開設に至ったのは宇土、菊陽、菊池の3市町のみ。熊本市は前震翌日に開設方針を示したが、本震後に延期。激しい余震が障壁となっていた。
600カ所超の各地の避難所が運営に悲鳴を上げる中、野尾は「わらにもすがる思いだった」と言う。熊本入りしたボランティア団体は支援のプロと呼ぶにふさわしく、危機管理も徹底していた。「この人たちは信用できる」。現場で被災者から信頼感を得られるよう「熊本県」の腕章を貸し出すことになった。
県庁敷地内の平屋であった19日の初会合。「避難所以外の被災者に物資が届いていない」「洗濯できず下着が足りない」「避難所の責任者が明確でない」。各団体が現場で把握した生の情報が飛び交った。進行役を担ったピースボート災害ボランティアセンター(PBV、東京都)の事務局長、上島安裕(35)はある方向性を描いていた。「課題解決につながらなければ各団体が集まる意味がなくなる。目的は被災者支援だ」
イメージしたのは、熊本地震の2カ月前、JVOAD準備会が初めて開いた全国フォーラムでの南海トラフ地震発生シミュレーション。課題を12分野に分け、NPOなどが得意なジャンルで力を発揮しやすくしようと工夫していた。その発想の源流は、東日本大震災でPBVが後方支援した宮城県の石巻災害復興支援協議会の取り組みだった。石巻市社協と役割分担し、協議会はNPOなど団体の窓口となって活動をコーディネート。「生活支援」「心のケア」など12分科会で構成していた。
とはいえ、石巻でも「広範囲でみると支援の動きがばらばらになってしまった」と上島。熊本で挑むのはさらに広い県域支援だ。20日の会合から導入した熊本版「被災者支援の12分野」は、▽炊き出し・食事の提供▽避難所(在宅避難者含む)の生活環境の改善▽がれき撤去や家屋の掃除▽医療・レスキュー▽障害者や高齢者などの要援護者支援-など。21日には県青年会館(熊本市中央区水前寺)に移し、より多くの参加者を受け入れる態勢を整えた。
この夜、ミーティングの名を「熊本地震・支援団体火の国会議」に決定。各団体が寄せる課題は多岐にわたり、肝心の避難所の全貌もつかめないままだった。(小多崇)=文中敬称略
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