熊本地震で被災…大津町のカライモ農園、国から「宝」と評価された理由は?

熊本日日新聞 2025年1月21日 17:12
カライモの貯蔵庫(奥)を拡大復旧させた「なかせ農園」の中瀬靖幸社長(右)。左は中瀬健二常務、中央は南健太さん=20日、大津町
カライモの貯蔵庫(奥)を拡大復旧させた「なかせ農園」の中瀬靖幸社長(右)。左は中瀬健二常務、中央は南健太さん=20日、大津町

 大津町でカライモの栽培から販売までを手がける「なかせ農園」が、地域活性化や所得向上の優良事例を表彰する農林水産省の「第11回ディスカバー農山漁村[むら]の宝」に選ばれた。2016年の熊本地震で貯蔵庫などが被災。復旧に合わせて経営を法人化し、障害者を雇用する「農福連携」にも取り組み、事業を拡大した点が評価された。

 同農園は貯蔵庫で熟成させたカライモを「蔵出しベニーモ」の商品名で販売している。地震で貯蔵庫や選果場が全半壊し、窓やサッシが壊れ、コンテナが散乱した。中瀬靖幸社長(38)は「中に入ることも怖かった」と振り返る。

熊本地震で被災した「なかせ農園」の選果場=2016年、大津町(同農園提供)
熊本地震で被災した「なかせ農園」の選果場=2016年、大津町(同農園提供)

 一方で畑ではカライモが育っていた。いち早い復旧を目指したが熊本県内に業者がおらず、3カ月後、宮崎県の業者を頼り着工した。貯蔵庫の拡大を決断し、容量を80トンから140トンに増やし、温度や湿度、二酸化炭素濃度も管理できるようにした。経費は約6500万円かかった。

 それまでの家族経営では借り入れが難しく、事業を法人化。障害者を含む社員10人体制とし、作付面積も3ヘクタールから13ヘクタールまで広げた。

 障害者雇用に踏み切ったのは、現社員の南健太さん(26)との出会いだった。17年に大津支援学校から就労体験で受け入れた際、丁寧な作業に感心して採用。現在は町内の就労支援施設「真功会」からも毎日5~6人を受け入れており、余分な根のカットやサイズの選別に当たっている。

 農山漁村の宝には本年度、全国から495件の応募があり、なかせ農園は優良事例30件の一つに選ばれた。7日、首相官邸で授賞式があった。中瀬社長は「大津町特産のカライモの消費拡大につなげるとともに、農福連携が経営にもプラスになることを知ってほしい」と話している。(林田賢一郎)

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