熊本地震で被災…大津町のカライモ農園、国から「宝」と評価された理由は?

大津町でカライモの栽培から販売までを手がける「なかせ農園」が、地域活性化や所得向上の優良事例を表彰する農林水産省の「第11回ディスカバー農山漁村[むら]の宝」に選ばれた。2016年の熊本地震で貯蔵庫などが被災。復旧に合わせて経営を法人化し、障害者を雇用する「農福連携」にも取り組み、事業を拡大した点が評価された。
同農園は貯蔵庫で熟成させたカライモを「蔵出しベニーモ」の商品名で販売している。地震で貯蔵庫や選果場が全半壊し、窓やサッシが壊れ、コンテナが散乱した。中瀬靖幸社長(38)は「中に入ることも怖かった」と振り返る。

一方で畑ではカライモが育っていた。いち早い復旧を目指したが熊本県内に業者がおらず、3カ月後、宮崎県の業者を頼り着工した。貯蔵庫の拡大を決断し、容量を80トンから140トンに増やし、温度や湿度、二酸化炭素濃度も管理できるようにした。経費は約6500万円かかった。
それまでの家族経営では借り入れが難しく、事業を法人化。障害者を含む社員10人体制とし、作付面積も3ヘクタールから13ヘクタールまで広げた。
障害者雇用に踏み切ったのは、現社員の南健太さん(26)との出会いだった。17年に大津支援学校から就労体験で受け入れた際、丁寧な作業に感心して採用。現在は町内の就労支援施設「真功会」からも毎日5~6人を受け入れており、余分な根のカットやサイズの選別に当たっている。
農山漁村の宝には本年度、全国から495件の応募があり、なかせ農園は優良事例30件の一つに選ばれた。7日、首相官邸で授賞式があった。中瀬社長は「大津町特産のカライモの消費拡大につなげるとともに、農福連携が経営にもプラスになることを知ってほしい」と話している。(林田賢一郎)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
地震で崩れた熊本城石垣、修復の担い手育成を 造園職人向けに研修会
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災の油彩画、修復報告展 御船町出身・故田中憲一さんの18点 熊本県立美術館分館
熊本日日新聞 -
熊本城復旧などの進捗を確認 市歴史まちづくり協議会
熊本日日新聞 -
熊本市の魅力、海外メディアにアピール 東京・日本外国特派員協会で「熊本ナイト」 熊本城の復興や半導体集積
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災…益城町が能登支える「芋フェス」 11日、NPOなど企画 能登の特産品販売、トークショーも
熊本日日新聞 -
「安全な車中泊」普及へ、熊本で産学官連携 避難者の実態把握、情報提供…双方向のアプリ開発へ
熊本日日新聞 -
石之室古墳、石棺修復へ作業場設置 熊本市の塚原古墳群 2027年度から復旧工事
熊本日日新聞 -
中居さん引退「気持ちの整理つかない」 県内ファン、驚きと困惑
熊本日日新聞 -
4期16年「県民の幸せに尽くした」 前熊本県知事・蒲島氏が講演 熊日情報文化懇話会1月例会
熊本日日新聞 -
【あの日から 阪神大震災30年=インタビュー「熊本への助言」㊦】伝承、防災考えるきっかけに 北淡震災記念公園総支配人の米山さん
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学びましょう。
※この連載企画の更新は終了しました。1年間のご愛読、ありがとうございました。エフエム熊本のラジオ版「聴いて得する!お金の話『まね得』」は、引き続き放送中です。