熊本市議会、住民投票条例案を否決 市庁舎建て替えで市民団体が請求
熊本市議会(定数48、欠員1)は臨時会最終日の17日、市役所本庁舎の移転建て替えへの賛否を問う住民投票条例案を賛成少数で否決した。市民団体が法定数を上回る約1万9千人分の有効署名を集め、大西一史市長に条例制定を直接請求していたが、住民投票は実施されないことになった。
閉会後、大西市長は取材に「反対の皆さんにもご理解いただけるよう、しっかりと説明することが必要だと改めて受け止めた」と答えた。その上で「災害リスクのある庁舎を万全にし、行政機能を継続することは極めて重要だ」と述べ、市庁舎の建て替えに改めて意欲を示した。
条例案はこの日の本会議で、議長と欠席1人を除く45人で採決。共産党市議団2人、新風熊本市議団2人、創生熊本市議団2人、無所属2人の計8人が賛成し、残る37人が反対した。
採決に先立つ質疑、討論では計9人が登壇。共産の井芹栄次市議は「市庁舎建て替えという重要な決定に、市民は一度も賛否を問われていない」、創生の髙本一臣市議は「住民合意のプロセスを軽んじている」と賛成を訴えた。
条例案に反対する自民党市議団の古川智子市議は「市民の生命と財産を守るため、誠実に議論を重ねてきた」、公明党市議団の井本正広市議は「(国の財政支援が手厚い)合併推進債活用の機会を奪うことは、将来に大きな負担を残す」と主張した。
市は耐震性能不足が指摘されている本庁舎を桜町のNTT西日本の敷地に、中央区役所を花畑町別館跡地に移転し、建て替える方針。市議会は昨年9月、庁舎の移転建て替えに向けた設計関連経費を含む市提出の予算を可決した。
市民団体は事業費の増加に対する懸念や、耐震不足とする市の説明への疑問などを理由に「市民の合意形成を図るべきだ」と主張。有権者の50分の1を上回る1万8988人分の有効署名を集め、昨年12月に住民投票の条例制定を直接請求した。
大西市長は1月14日に開会した市議会臨時会に、住民投票の実施に反対する意見を付けて条例案を提出。同日の総務委員会は全会一致で否決していた。(臼杵大介)
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