【あの時何が 益城町役場編⑩】未経験のがれき処理 仮置き場は混乱
益城町の住宅約1万棟のうち、熊本地震で9割以上が被災、全半壊は半数を超えた。倒壊した家屋や家財道具はがれきと化し、町中にあふれた。「増え続けるがれきの山を、どうにかしなきゃいけないと必死だった」。住民生活課長の森部博美(59)は膨大な災害がれきと格闘した当時を思うと、胸が苦しくなる。
初動は早かった。前震翌日の2016年4月15日、町長の西村博則(61)は、町総合体育館近くの旧益城中央小跡地を1次仮置き場に指定。すぐに受け入れを始めた。約1万6千平方メートルの広さがあり、地震による損傷も小さかった。
ただ、避難所対応に職員を取られ、現場に配置できたのはわずか3、4人。災害がれき処理の経験もノウハウもなく、運営は初日から混乱した。運び込まれた多種多様ながれきは、混在したまま積み上がり、危険物と思われるものも含まれていた。
翌16日、仮置き場を訪れた環境省の担当者から災害がれきを分別するよう指導が入る。処分場に運び出すことを考えると、収集段階で可能な限り分別しておくことが必要だった。森部らは直ちにコンクリート、木材、家電など6品目の分別を始める。しかし、町の防災行政無線や回覧板は使えず、住民に周知できない。「分別なんて聞いとらんぞ!」。何も知らずにがれきを運んできた住民たちの怒りを買った。「急きょチラシを作って避難所などで配ったが、十分に伝えきれなかった」と森部は悔やむ。
本震後、さらに搬入量は増え、がれきの山はみるみる大きくなっていった。5月の大型連休明けには、がれき置き場を拡大。一角には約30世帯が車中泊避難をしていたため、移動を要請して回ったが、「どこに移動すればいいのか」と訴える人もいた。初日から現場を任された住民生活課の松永昇(54)は、早朝から深夜まで分別作業や打ち合わせに追われ、住民からの苦情にも対応した。「来る日も来る日も同じことの繰り返しで、考える余裕などなかった」
7月上旬に公費解体が始まると、仮置き場の周辺道路は連日トラックが長蛇の列を作った。仮置き場内の通路の配置が原因で、木くずの搬出作業の間、搬入車両の進入がストップ。待ち時間が数時間に及ぶこともあり、住民や解体業者のいら立ちをあおった。このため、町は9月上旬、仮置き場を一時閉鎖して再整理に着手。搬入と搬出が同時にできるよう通路を新たに設けた。
町の災害がれきは17年4月時点の推計で32万トンを超えた。発災直後、がれき置き場の確保を迫られた西村は県幹部に連絡を取り、町北東部のテクノリサーチパーク内にある県有地を2次仮置き場として使えるよう要請していた。「がれき処理が大きな課題となった東日本大震災の先例がずっと頭にあった」と西村は明かす。2次仮置き場の受け入れが始まるのは、公費解体が本格化する直前の16年9月末だった。(益城町取材班)=敬称略、肩書は当時
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