【あの時何が 益城町役場編③】突き上げ「ドーン」まさか、またか
2016年4月14日夜。益城町の現地対策本部が置かれた役場駐車場には避難者が増え続けていた。午後9時26分の震度7に続き、午後10時7分の6弱、15日午前0時3分には6強と、激しい揺れが断続的に襲う。次第に冷え込みも厳しくなる。
「ひとまずミナテラスに移ってもらおう」
図書館やホールを備えた複合施設の町交流情報センター「ミナテラス」は、役場から約1キロ南東にある。15日未明、災害対策本部はあふれる避難者をミナテラスに移す方針を決めた。ただ、高齢者や子どもの姿も目立つ。陥没や亀裂ができた真っ暗な道を歩かせるわけにはいかない。「自衛隊の車両を集めて輸送してもらいましょう」。自衛官だった町議会議員の宮崎金次(71)が提案し、ピストン輸送が始まった。
一方、町災害対策本部を保健福祉センター「はぴねす」に移した町長の西村博則(61)は焦りの色を濃くしていた。町が把握する区長らの連絡先はいずれも固定電話の番号しかない。ほとんどが避難して自宅を離れ、災害対策本部を移したことさえ伝えられずにいた。「これでは各地域の被害状況が本部に入って来ない」。西村は天を仰いだ。
現地対策本部を任された総務課長の森田茂(61)も警察や消防などとのやりとりに追われながら、不安を募らせていた。はぴねすに移った西村と十分に連絡が取れず、どの職員がどこで何をしているのかも分からない。続々と到着する自衛隊車両をどこに配置するか。犠牲者が出た場合の仮安置をどうするか。次々と迫られる判断に「何とかするしかない」と自分に言い聞かせた。
午前5時すぎ。九州電力が配備した高圧発電機車によって役場庁舎の電源が回復すると、西村は災害対策本部を役場庁舎に戻した。午後には余震回数も減りつつあった。「これで落ち着いて災害対応に専念できる」。西村はそう思い始めていた。
総務課防災係長の岩本武継(51)は午後10時すぎ、この日最後の記者発表を終えた。慣れない報道機関とのやりとりに追われ、すぐにでも横になりたい気分だった。しかし、防災係長としての仕事は山積している。災害対策本部がある3階から2階に下り、総務課の自席で書類に向き合った。
16日午前1時25分。庁舎全体が「ドーン」と突き上げられた。書類が床に崩れ落ちたかと思うと、再び停電。岩本の体は激しく左右に揺さぶられ、両手で机の端を握って踏ん張った。「震度7」。壁に掛かった地震計の文字が、暗闇の中で不気味に光った。「まさか、またか!」。課内には職員数人が残っていたが、言葉を発する者は誰もいない。窓の外では、月明かりに照らされた街並みが土煙を上げていた。(益城町取材班)=文中敬称略、肩書は当時
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