【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑪】各団体の個性、経験値生かして支援 

熊本日日新聞 2017年9月14日 00:00
掲示物を見ながら打ち合わせをするピースボート災害ボランティアセンター(PBV)の辛嶋友香里さん(左)=益城町(PBV提供)
掲示物を見ながら打ち合わせをするピースボート災害ボランティアセンター(PBV)の辛嶋友香里さん(左)=益城町(PBV提供)

 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)によると、熊本地震の被災地支援に当たったボランティア団体は昨年5月末時点で297団体に上った。うち県内は82団体で、残る7割超を県外が占める。少人数の任意団体から本格的な法人まで、災害支援に限らず地域防災や環境、人権、福祉など得意分野は幅広かった。

 「何でもできるわけではないが、それぞれの経験値を生かせるのが各団体の強み」とJVOAD事務局長の明城[みょうじょう]徹也(46)。被災住民と団体間でトラブルが生じることもあったが、「被災者のための活動に真摯[しんし]に取り組んだ団体がほとんど」。東日本大震災で起きたNPOによる5千万円超の委託事業費横領事件の背景には行政と団体の閉鎖的な関係があったとされるため、「火の国会議」はオープンな場を徹底した。それぞれの活動や姿勢に多くの視線を向けることで、悪質な団体へのチェック機能を働かせたという。

 実際の支援活動では、各団体の個性が力強さにつながった。

 一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンター(PBV、東京都)の母体は、「地球一周の船旅」で知られる国際交流NGOピースボート。世の中への関心が高い若者たちのネットワークがある。

 火の国会議で進行役も務めたPBV事務局長の上島安裕(35)は、支援が必要な報告が挙がるたびに「誰かできますか?」と投げ掛けた。机上の議論で終わらせず具体的な課題解決へ。引き受け団体の呼び掛けを続けたのは「いざとなれば、私にはピースボートの仲間がいるという安心感があったから」だという。PBVは昨年末までに143人を被災地に投入、活動人数は延べ2700人を超えた。

 上島は「国際交流を通じ、異なる文化を理解する姿勢を学んでいた仲間たちは、被災地ごとの考え方に合わせて行動する力も持っている」と話す。現地コーディネーターを務めた辛嶋友香里(33)の場合、ピースボートで旅した2010年にチリ大地震に遭遇したことが災害支援に身を投じた原点だという。熊本では被災者の声に耳を傾け、「隠れたニーズ、本人も気付かないニーズに目を凝らした」と振り返る。

 認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF、東京都)のように、中間支援を活動の軸とし、実行力のあるNGOなどをバックアップする団体もあった。近年は被災者へ分配する義援金だけなく、民間団体へ「支援金」を助成し、その活動を通じて被災者を支える方法も広がっている。熊本地震ではJPFに対してだけでも、企業などから5億円以上の支援金が寄せられ、現在も仮設住宅の自治会活動支援などに役立てられている。(小多崇)=文中敬称略

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