【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑩】益城町にも連携の場「顔見える関係」に
熊本地震の被災者支援に関する連携の場は、「火の国会議」を皮切りに拡大していった。
支援のもう一つの軸となった「県・県社会福祉協議会・NPO連携会議」は昨年4月28日にスタート。週2回ペースで集まり、民間団体主体となる火の国会議で共有した情報や議論の結果を受け、課題の解決を模索した。県庁内で調整役を担った福祉のまちづくり室長(当時)の木村忠治[ただはる](55)は「家屋の公費解体、被災者の健康維持、障害者の支援策など、個々の課題をできる限り担当課を交えて話し合った」。同様の連携会議は5月10日、熊本市でも始まり、NPOと市側が関係を深めた。
益城町でも連携の機会を設けられないか-。5月初め、火の国会議の存在を知ったMATEインターナショナル倶楽部代表、酒井陽子(64)はこんな思いに駆られた。県内で国際交流ボランティアに長年携わる酒井は益城町の自宅が破損し、車中避難していた。留学生や外国語指導助手の安否確認や支援物資の提供に走り回りながら、大きな不安を感じていたという。「(機能不全に陥った)町役場には頼れず、支援に来た人たちも誰を信用していいか分からない。情報も混乱してめちゃくちゃ」
経験豊富な災害ボランティアがそろう火の国会議にヒントを得た酒井は「看護や子ども支援など幅広いボランティア団体や、商工会など地元団体に声を掛けてみた」。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)の協力も得て5月12日、町内で連携会議を初めて開催。「このままじゃいけない」と共鳴した団体や被災住民、町行政も加わる「益城がんばるもん協議会」(MGM)が始動した。
「がんばるもん会議」とも呼ばれたMGMは、現場のニーズや支援情報をマッチングシートで合致させ、農作業の手伝いを必要とする被災者に協力団体がボランティアを投入するなどの仕組みを明確にした。「マッチングと支援活動の促進、そして必要に応じて、行政へつなぐ役割を目指した」と、MGMでマネジャーを務めた「くまもと友救[ゆうきゅう]の会」代表の松岡亮太(33)は振り返る。
今年7月まで活動したMGMはそれぞれの局面に応じ、「ケア」「癒やし」など必要なテーマに取り組んだ。酒井は「最初は『生きる』。危うい状態で避難している人を助け、生きる糧の支援物資を届けることに力を注いだ」と説明する。会議では若いメンバーが行政側と衝突する場面もあったが、「それだけのエネルギーがあれば、益城はきっと復興できる」と前向きに捉えていた。
何よりも連携の場が生み出した効果は大きかった。「お互いが『顔の見える関係』になれた。ボランティアへの信頼感が深まった」(小多崇)=文中敬称略
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
南阿蘇の復旧復興、バスと鉄道で巡ろう 高森町の南阿蘇鉄道が旅行ツアー 立野ダム、観光トロッコ列車も
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災の熊本城奉行丸西側、石垣の石材回収始まる 25年度から復旧に向けた設計へ
熊本日日新聞 -
熊本城カレンダー絵、入賞の12点決まる 熊本地震の復興応援コンテスト
熊本日日新聞 -
熊本市庁舎建て替え予算案に「反対を」 市民団体が市議会5会派に申し入れ
熊本日日新聞 -
将来ビジョン、市民と共有を 熊本市役所本庁舎の移転建て替え【核心評論】
熊本日日新聞 -
西原村の人口、熊本地震前まで回復 7042人に 回復後最初の赤ちゃんに認定証
熊本日日新聞 -
熊本市庁舎の移転建て替え、具体化へ 熊本市議会予算決算委 設計関連予算案を可決
熊本日日新聞 -
ぱっと見て分かる「ピクトグラム避難誘導標識」、熊本市は整備進まず 政府は推奨も…「熊本地震で避難場所周知された」
熊本日日新聞 -
熊本市営墓地で900区画が「無縁墓」に 承継者や縁者と連絡取れず、熊本地震で被害も手付かずのまま
熊本日日新聞 -
通潤橋上部の観覧5万人 22年4月の有料公開後
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「多重債務編」。10月4日(金)に更新予定です。