【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑨】環境改善向け「避難所アセス」実施
「熊本地震・支援団体火の国会議」の出席者は昨年4月30日、100人を超えた。東日本大震災の被災地で支援を続ける団体、大学や生協、子育て支援、生活困窮者支援など多様な団体が県内外から集結。支援活動が具体化していく一方、「大規模避難所は生活環境が整ってきたが、それ以外は改善が必要」といった報告も絶えなかった。
県のまとめによると避難所開設のピークは4月17日で、指定外も含め計855カ所。避難の長期化は必至で、生活環境の向上と運営に当たる行政職員の負担軽減が必要だった。「そのためには避難所の状況把握が必要。確かな目とチェックリストがいる」と県健康福祉政策課長の野尾晴一朗(53)。
内閣府が、避難所の「質の向上」を掲げて4月に示したガイドラインがあった。「質の向上とは、『人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送ることができるか』。避難所ではぜいたくだという批判は当たらない」として、「衛生的な環境の維持」などのチェックリストをまとめていた。ただ全60ページもあり、混乱した県内の被災地で使うには重厚すぎた。
野尾は、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)の事務局長、明城[みょうじょう]徹也(46)と協議。改善に直結する37項目を厳選し、A4判1枚の「避難所運営チェックリスト」を作成した。5月1日には訪問調査の実施も市町村へ周知。避難所に詳しいNPOメンバーらを2~4日、抽出した118カ所に集中投入するという官民協働の「避難所アセスメント」だった。
既に閉鎖された避難所もあり、調査できたのは82カ所。このうち、▽足腰が悪い人の寝具(段ボールベッドなど)▽洗濯できる環境▽女性専用の着替え、物干しスペース▽授乳スペース-などを整備した避難所は半数以下だった。心配な避難所を絞り込んで、スタッフ派遣や段ボールベッドなどを手配。避難所の集約に当たっては居住スペースを一般、高齢者、子ども連れに区分するなど、成果に結び付けた。
内閣府のガイドラインの前提には、2013年8月に示された避難所の「指針」があった。そこでは東日本大震災を振り返り、「被災者の心身機能の低下や疾患の発生・悪化が見られた」「多くの高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児を抱えた家族、外国人らが被災したが、避難所のハード面の問題や他の避難者との関係などから自宅での生活を余儀なくされることも少なくなかった」などと指摘されていた。こうした状況は、熊本の被災地でも少なからず発生した。
今回の避難所アセスに参加したレスキューストックヤード(名古屋市)の常務理事、浦野愛(41)は、避難所に向けるべき視点を強調する。「命と健康と尊厳を守るために必要な最低限の生活環境が整っているかだ」(小多崇)=文中敬称略
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