【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑥】個人ボランティア受け入れへ後方支援

熊本日日新聞 2017年9月8日 00:00
被災地支援活動に当たる民間団体などから100人以上が集まった「火の国会議」=2016年4月30日、熊本市中央区の県青年会館(JVOAD提供)
被災地支援活動に当たる民間団体などから100人以上が集まった「火の国会議」=2016年4月30日、熊本市中央区の県青年会館(JVOAD提供)

 日本青年会議所(JC)熊本ブロック協議会の椎葉聖[たかし](35)が昨年4月15日、あさぎり町の自宅を出たのは早朝5時だった。熊本地震の前震で九州自動車道は通行止めになり、国道219号を北上。八代市以北の「ものすごい渋滞」を抜け午前9時半、熊本市中央区の県総合福祉センターに着くと、2階では既に県社会福祉協議会とJCのメンバーが協議中だった。災害ボランティアセンター(災害ボラセン)開設に向け、両者で市町村社協を支援するためだ。

 JCは10年ほど前から県社協と協力関係にあり、2012年の九州北部豪雨では軽トラックなどを調達。14年以降は毎年、災害時の協力協定を結んでいた。今回の災害ボラセンでは、スコップなどの資機材や、がれきを入れる土のう袋が大量に必要とされていた。若手経営者たちが集う組織の強みを生かし、「JC内で呼び掛け、調達を急いだ」。当時、セーフティーネットワーク推進委員長だった椎葉は「3カ月ほぼ休みなしで、あさぎり町から被災地に通った」と振り返る。

 16日の本震後、県内JCは2本立てで動いた。熊本JC(熊本市)は被災者へ支援物資を提供し、熊本ブロック協は社協への後方支援に徹した。会長(当時)の日野正人(40)は地元の大津町で倉庫を確保し、全国から届く資機材を管理。人手不足の社協にはメンバーを派遣し、ボランティアの受け付けも手伝った。

 一部の災害ボラセンでは、民間団体と行政側の行き違いから混乱。支援が一時停滞する事態も生じたが、29日に御船町社協が正式開設して計16市町村で活動開始。県社協によると、通常のボラセンで対応した八代市も含め、計17市町村社協で受け入れた個人ボランティアは今年8月末で延べ12万人を超えた。

 JCは「火の国会議」にも20日から出席した。会議は県外団体が主力で、「自らも被災した県内団体はなかなか出席できる状況になかった」とエヌピーオーくまもと理事の樋口務(56)。それでも、「地元主体でこそ意味のある会議になる」と全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)の代表理事、栗田暢之[のぶゆき](52)らは考えていた。

 29日の会議。進行役は熊本ブロック協総務委員長の井陽太(28)だった。JCは専門性を生かし社会貢献する「最強のプロボノ集団」を自負し、日頃から理詰めで議論。一方、火の国会議は来るものを拒まずNPOなどの主体性を尊重した。「違いに戸惑いもあったが、支援活動を続ける上で得るものは大きかった」。それは、被災地での経験豊富な“プロたち”が見通していた「時間の経過で変化するフェーズ(局面)ごとに必要な支援」だった。

 避難生活の長期化は必至。混乱する避難所運営の支援がいよいよ急がれていた。(小多崇)=文中敬称略

RECOMMEND

あなたにおすすめ
Recommend by Aritsugi Lab.

KUMANICHI レコメンドについて

「KUMANICHI レコメンド」は、熊本大学大学院の有次正義教授の研究室(以下、熊大有次研)が研究・開発中の記事推薦システムです。単語の類似性だけでなく、文脈の言葉の使われ方などから、より人間の思考に近いメカニズムのシステムを目指しています。

熊本日日新聞社はシステムの検証の場として熊日電子版を提供しています。本システムは研究中のため、関係のない記事が掲出されこともあります。あらかじめご了承ください。リンク先はすべて熊日電子版内のコンテンツです。

本システムは「匿名加工情報」を活用して開発されており、あなたの興味・関心を推測してコンテンツを提示しています。匿名加工情報は、氏名や住所などを削除し、ご本人が特定されないよう法令で定める基準に従い加工した情報です。詳しくは 「匿名加工情報の公表について」のページ をご覧ください。

閉じる
注目コンテンツ
熊本地震