【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑥】個人ボランティア受け入れへ後方支援
日本青年会議所(JC)熊本ブロック協議会の椎葉聖[たかし](35)が昨年4月15日、あさぎり町の自宅を出たのは早朝5時だった。熊本地震の前震で九州自動車道は通行止めになり、国道219号を北上。八代市以北の「ものすごい渋滞」を抜け午前9時半、熊本市中央区の県総合福祉センターに着くと、2階では既に県社会福祉協議会とJCのメンバーが協議中だった。災害ボランティアセンター(災害ボラセン)開設に向け、両者で市町村社協を支援するためだ。
JCは10年ほど前から県社協と協力関係にあり、2012年の九州北部豪雨では軽トラックなどを調達。14年以降は毎年、災害時の協力協定を結んでいた。今回の災害ボラセンでは、スコップなどの資機材や、がれきを入れる土のう袋が大量に必要とされていた。若手経営者たちが集う組織の強みを生かし、「JC内で呼び掛け、調達を急いだ」。当時、セーフティーネットワーク推進委員長だった椎葉は「3カ月ほぼ休みなしで、あさぎり町から被災地に通った」と振り返る。
16日の本震後、県内JCは2本立てで動いた。熊本JC(熊本市)は被災者へ支援物資を提供し、熊本ブロック協は社協への後方支援に徹した。会長(当時)の日野正人(40)は地元の大津町で倉庫を確保し、全国から届く資機材を管理。人手不足の社協にはメンバーを派遣し、ボランティアの受け付けも手伝った。
一部の災害ボラセンでは、民間団体と行政側の行き違いから混乱。支援が一時停滞する事態も生じたが、29日に御船町社協が正式開設して計16市町村で活動開始。県社協によると、通常のボラセンで対応した八代市も含め、計17市町村社協で受け入れた個人ボランティアは今年8月末で延べ12万人を超えた。
JCは「火の国会議」にも20日から出席した。会議は県外団体が主力で、「自らも被災した県内団体はなかなか出席できる状況になかった」とエヌピーオーくまもと理事の樋口務(56)。それでも、「地元主体でこそ意味のある会議になる」と全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)の代表理事、栗田暢之[のぶゆき](52)らは考えていた。
29日の会議。進行役は熊本ブロック協総務委員長の井陽太(28)だった。JCは専門性を生かし社会貢献する「最強のプロボノ集団」を自負し、日頃から理詰めで議論。一方、火の国会議は来るものを拒まずNPOなどの主体性を尊重した。「違いに戸惑いもあったが、支援活動を続ける上で得るものは大きかった」。それは、被災地での経験豊富な“プロたち”が見通していた「時間の経過で変化するフェーズ(局面)ごとに必要な支援」だった。
避難生活の長期化は必至。混乱する避難所運営の支援がいよいよ急がれていた。(小多崇)=文中敬称略
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