【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑤】「災害ボランティアセンター」開設に支援相次ぐ
昨年4月14日夜、全国社会福祉協議会(全社協)の全国ボランティア・市民活動振興センター副部長、園崎秀治[しゅうじ](46)は徳島県にいた。ボランティアの歩みを全社協の冊子で特集する取材で、「熊本で震度7」の一報は関係者と会食中。「これはまずい」。熊本行きを即断すると翌朝一番の新幹線に乗り込めるよう、すぐに徳島県社協のスタッフが車で岡山市まで送ってくれた。
園崎は現職に就いた2005年以降、社協の災害対応をけん引してきた。今でこそ災害ボランティアセンター(災害ボラセン)の市町村社協による開設・運営は地域防災計画などに位置付けられるが、法的根拠はなく「当初は、なぜ福祉の人間が災害ボラセンを担わなければならないのか、と反発もあった」。
翌15日、JR博多駅で災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)の石井布紀子(51)らと合流した。支援Pは05年、前年の新潟県中越地震での災害ボラセン検証を契機に発足。中央共同募金会やNPO、企業・経済団体などで構成し、災害時は災害ボラセン支援に経験豊富な人材を送り込んでいる。
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)の事務局長、明城[みょうじょう]徹也(46)とも連絡を取っていた園崎らは、必要な支援の規模を見極めようと熊本市東区などの被災地へ。益城町社協の事務局長、國元秀利(61)と面会し、「情報発信を急がないと混乱する。その点は慣れた私たちがやりましょう」と連携を約束した。
その朝、國元は益城町長西村博則(61)から直接、災害ボラセン開設を要請されていた。資機材の調達や受け入れ態勢を整えるため、開設日と見定めたのは「21日」。ところが翌16日の本震で、拠点となる町中央公民館が使用不能に。過去の訓練で協力してきた自治会長や民生委員らも被災し、想定の態勢とは程遠かった。町民グラウンドも使えず、開設場所さえ決まらない。
しかし被災者があふれ、問い合わせも相次いでいる。「何とか21日に開設できないか」。脳裏に浮かんだのは、若いころに仲間とソフトボールをした井関熊本製造所のグラウンドだった。町北西部で九州自動車道からアクセスしやすく、通行可能な第2空港線も近い。協力を求めると井関側は「企業があるのは地域のおかげ」と快諾。当初想定の21日に災害ボラセンが動きだした。
ボランティア団体が連携・調整を図る「火の国会議」に対し、個人ボランティアの受け皿として欠かせないのが災害ボラセンだ。混乱が続く中、開設支援に動いたのは、全社協や支援Pに限らない。地元で市町村社協を後方支援する県社協とタッグを組んだのが、JVOADの会員団体でもある日本青年会議所(JC)だった。(小多崇)=文中敬称略
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
「安全な車中泊」普及へ、熊本で産学官連携 避難者の実態把握、情報提供…双方向のアプリ開発へ
熊本日日新聞 -
石之室古墳、石棺修復へ作業場設置 熊本市の塚原古墳群 2027年度から復旧工事
熊本日日新聞 -
中居さん引退「気持ちの整理つかない」 県内ファン、驚きと困惑
熊本日日新聞 -
4期16年「県民の幸せに尽くした」 前熊本県知事・蒲島氏が講演 熊日情報文化懇話会1月例会
熊本日日新聞 -
【あの日から 阪神大震災30年=インタビュー「熊本への助言」㊦】伝承、防災考えるきっかけに 北淡震災記念公園総支配人の米山さん
熊本日日新聞 -
2026年夏に観光企画「熊本DC」 県、JR、観光団体などの実行委が設立総会 全国に魅力発信
熊本日日新聞 -
旧熊本市民病院跡地、商業施設に 同仁グループが落札 スーパーなど誘致、2026年12月開業予定
熊本日日新聞 -
【あの日から・阪神大震災30年=インタビュー「熊本への助言」㊥】「生の資料」防災に生かす 人と防災未来センター主任研究員の林田さん
熊本日日新聞 -
熊本地震で被災…大津町のカライモ農園、国から「宝」と評価された理由は?
熊本日日新聞 -
【あの日から・阪神大震災30年=インタビュー「熊本への助言」㊤】30年過ぎても「被災者」 見えない傷、長期支援を 神戸市のNPO法人「よろず相談室」元代表の牧さん
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学びましょう。
※この連載企画の更新は終了しました。1年間のご愛読、ありがとうございました。エフエム熊本のラジオ版「聴いて得する!お金の話『まね得』」は、引き続き放送中です。