【あの時何が JVOAD・火の国会議編②】大震災の反省「中間支援が必要だ」
昨年4月16日未明に発生した熊本地震の本震。レスキューストックヤード(名古屋市)の常務理事、浦野愛(41)が滞在していた大津町の揺れは震度6強だった。災害救援に関わって20年超の浦野も「東日本大震災で支援に入った東北で5強は経験したけど、6強は初めて」。大地震の恐怖を実感した。
ホテルを出ると、助けを呼ぶ声がした。家財道具が散乱したアパートで腰を抜かした女性を救出。しゃがみ込むほどの激しい余震が続く。町役場近くでは、多くの住民が屋外に集まっていた。ブルーシートが敷かれ、水や毛布も配られていたが、中には生後間もない赤ちゃんや車椅子の高齢者もいた。「この人たちだけでも建物に入れてあげないと」。周囲と協力して誘導したころには、白々と夜が明け始めていた。
同宿だった全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)事務局長の明城[みょうじょう]徹也(46)も、住民らをサポートした。しかし、本来の役目は直接的な支援ではなく「中間支援」。俯瞰[ふかん]したコーディネートが求められていた。
「東日本大震災で支援活動を展開したNPOなどのネットワーク組織は、連携体制が構築されていなかったため支援の全体像が把握できず、現地での活動が困難を極めた」
明城が用意していた準備会に関する資料の記述だ。簡潔にまとめたA4判2枚には「行政や企業などとの連携も限定的で、有効に機能したとは言い難い」とも。中間支援を欠いた大震災の反省を踏まえ、2013年7月に始動した準備会は、モデルとしたNVOAD(全米災害救援ボランティア機構)を視察。内閣府や経団連などとの協議も重ねた。3年がかりの準備が大詰めを迎えた最中に起こったのが熊本地震だった。
本震前の4月15日午後4時。明城の姿は、熊本市中央区の手取天満宮近くの雑居ビルにあった。準備会メンバーの一つ、日本NPOセンターから紹介された樋口務(56)を訪ねるためだった。
樋口が理事を務めるNPO法人エヌピーオーくまもとは県内で唯一、日頃からNPOのコーディネートやマネジメント支援などに取り組む中間支援団体。多くの地元団体と通じた存在が災害時に生きる、と明城は期待していた。とはいえ、2人は初対面。「JVOADなんて聞いたこともなかった」という樋口は、「それでも信頼できると判断したのは日本NPOセンターの紹介だった点に尽きる」と振り返る。
支援P(災害ボランティア活動支援プロジェクト会議)や全社協(全国社会福祉協議会)など、準備会の主要メンバーも動きだしていた。ただ、連携が欠かせない被災市町村とどう信頼関係を構築するかは見通せていなかった。(小多崇)=文中敬称略
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