【あの時何が 熊本市民病院編⑩】不眠不休の搬送、スタッフも疲弊

熊本日日新聞 | 2017年4月13日 00:00

熊本市民病院から患者を搬送するため救急車に乗せる医療スタッフ=2016年4月16日(北九州総合病院提供)

 県外の転院先が決まった熊本市民病院(同市東区)の患者13人がいる。一刻も早く搬送したいが、ドクターヘリはいつ来るか分からない。昨年4月16日。DMAT(災害派遣医療チーム)の北九州総合病院医師、高間辰雄(40)は、陸路の搬送手段について考え続けた。

 1人は人工呼吸器をつけた4歳女児。心臓手術後に合併症を発症し、輸液ポンプ10本を常時必要としていた。移動が困難なため、ICU(集中治療室)に残ったままだ。「この子はヘリでは難しい」。上空では気圧が変化するため、酸素ボンベの積み込みは危険と判断した。輸液ポンプ10本を載せられる場所もヘリにはない。

 救急車で搬送するにもポンプ全部を載せるのは困難だ。「搬送中だけ、どれか外してもらえないですか」「外せるものは一つもありません」。主治医は首を横に振った。

 近くの道路に自衛隊車両の列が見えた。大型の救急車もあった。あれならポンプ10本を載せられる。切迫早産の4人も「横になる」ことができる。救急車を借りようと、高間は緊急消防援助隊の消防隊員に相談。「自衛隊は任務以外のことはできません」という返事に諦めた。

 自前の救急車を使うしかない。高間は、車内の医療器具やスタッフのかばんなどを下ろし、スペースを広げた。ポンプのサイズを測って積み込む場所を綿密に計算すると、10本がすっぽりと車内に収まった。

 しかし車内の電源に10本のコードを一度に差し込むと、バッテリーが持たない。臨床工学技士が同乗し、膝の上にコンセントを置いた。一部のポンプを接続し、外したポンプから「電源不足」のエラーが出ると、充電済みと差し替えることにした。九州大病院(福岡市)まで約2時間、手作業の差し替えが続いた。

 切迫早産の妊婦4人の転院先は、聖マリア病院(福岡県久留米市)。DMATチームのスタッフに「行ってくれ」と指示した高間は、ポケットにあった携行食のあめを妊婦に配り、「“女子会トーク”しながら、みんなで仲よく行ってくださいね」と明るく送り出した。「本当に女子会トークでしたよ」。後で、スタッフから報告があった。

 救急車を運転したスタッフも不眠不休だった。チームは前震後に熊本入りし、15日の昼夜にかけ患者搬送に奔走。東熊本病院(益城町)での搬送中、本震に遭った。休む時間はない。「疲弊したスタッフを使ってしまったことは間違いだった」。高間はそう振り返るが、ほかに選択肢はなかった。

 輸液ポンプ10本とともに福岡まで搬送した4歳女児は5日後、転院先で亡くなった。連絡を受け、高間は涙した。女児はその後、震災関連死に認定された。(森本修代)=文中敬称略

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