ジャズレコード、思い出再び 泥水に漬かった800枚 人吉市の山口さん、幼なじみのコレクション洗浄
人吉市駒井田町のビデオカメラマンで元オーディオ機器販売の山口信也さん(71)は、2020年の熊本豪雨で泥水に漬かったジャズレコード約800枚の洗浄を続けている。幼なじみの尾方憲二さん(70)=同市下青井町=のコレクション。「800枚はすごい。捨てさせるわけにはいかない」と、これまで約10分の1を洗浄した。
レコードは、尾方さんが学生時代から集めた1950年代の演奏が中心。ビバリー・ケニーやジョニ・ジェイムスら女性ボーカルがお気に入りだ。
熊本豪雨で尾方さんの平屋の自宅は、球磨川の氾濫のため床上2・5メートルまで浸水した。リビングに置いていたレコードは、プレーヤーやスピーカーとともに泥水に漬かった。廃棄の文字が頭をよぎった。
大のジャズ好きの山口さんが救いの手を伸ばした。自身も、球磨川支流の山田川の氾濫で店舗と自宅が全壊判定を受ける被害に遭ったが、レコードの洗浄を買って出た。
レコードの溝に合わせ、複数のブラシや洗剤を使用。洗浄後は実際に音色を確かめて、雑音があれば再び洗った。洗浄技術はオーディオ販売を通して身に付けたという。ジャケットはレコードを収納するには難しい状態だが、できる限り洗っている。
尾方さんは豪雨後に自宅近くで喫茶店「人吉あるぽらん」を開いた。店では復活したレコードを音源に、山口さんがCDに録音した音楽を流している。「やっぱり、若いころ集めた音楽を聴くと懐かしくなるね」。幼なじみ2人は、大好きなジャズにきょうも酔いしれる。(東寛明)
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