熊本豪雨で被災の「釜田醸造所」が復活の一滴 人吉市のしょうゆ業者 「長いようで、あっという間」
2020年の熊本豪雨で浸水した人吉市鍛冶屋町の「釜田醸造所」は9日、被災後に初めて仕込んだ「もろみ」から、生しょうゆを搾った。滴のこぼれ落ちる様子を見守った3代目社長の釜田顕さん(56)は「ここまで長いようで、あっという間だった。この滴の音は、とても感慨深い」としみじみ語った。
午前8時、従業員2人がこうじや大豆、酵母などを混ぜたしょうゆの元となる「もろみ」を、布製の袋に流し込み、「舟[ふね]」と呼ばれる容器に積み重ねると、重みでしょうゆが袋から染み出した。30分後、舟に付いた蛇口から、生しょうゆが流れ出ると豊かな香りが広がった。
豪雨で工場は床上1メートル以上浸水。「もろみ」を発酵させる全6タンクに泥水が流入し、生産できなくなった。この3年半は、福岡の業界団体から仕入れた「もろみ」を使っていた。
一方、釜田醸造所の味を特徴付けていた酵母は、泥水の浸入を受けながらも、タンクの底に無事残っていた。そのため、熊本県産業技術センターの支援を得て酵母を抽出。昨年3月の仕込みで酵母の培養液を投入し、創業時から続く味を復活させた。
今後、不純物の除去や加熱処理をして、しょうゆが完成する。県内外の300人以上によるクラウドファンディング参加者への返礼や直売などを、4月末の大型連休前までに始める予定。釜田さんは「たくさんの支援をいただいた。これからも愛される店でありたい」と話した。(金村貫太)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本豪雨-
人吉市「くまりば」内の温泉復旧 5月1日から 源泉かけ流し、ヒノキ造りの湯船
熊本日日新聞 -
被災した八代市坂本村の農地、復旧の軌跡を動画に 市が制作、職員ら心情交え解説
熊本日日新聞 -
肥薩線・人吉-吉松間の復旧、「熊本、宮崎、鹿児島の3県交えた会議体で方向性」 JR九州社長
熊本日日新聞 -
土地区画整理事業で安全祈願祭 豪雨被災の人吉市紺屋町 28年度内完了目指す
熊本日日新聞 -
豪雨時の事前行動計画、町内会ごとに作成 人吉市・西瀬校区
熊本日日新聞 -
要支援者の避難誘導を議論 梅雨入り控え、球磨村で防災会議
熊本日日新聞 -
熊本豪雨で被災の坂本橋、新橋の架設始まる 八代市坂本町 工期は25年2月まで
熊本日日新聞 -
振興の財源やスケジュール、国と熊本県に要望 五木村議会のダム対策調査特別委
熊本日日新聞 -
TSMC進出関連「渋滞解消」「地下水保全」で推進本部 熊本県の木村知事就任 五木・相良村を18日訪問
熊本日日新聞 -
五木村長、川辺川「流水型ダム」受け入れへ 21日、村民集会で説明 地元首長の協議会は「早期着工」要望
熊本日日新聞