「鈴」や「西」、実は「龍」も… あなたは知ってる? 文化庁や自治体職員に聞いた「窓口で問題になりやすい漢字」
「SNSこちら編集局」で「令和の『令』の下の部分をカタカナの『マ』の上に点を打った形(楷書体)で書くと、行政機関の窓口で書類を突き返されることがある?」という記事を掲載したところ、多くの反響が寄せられた。今回は文化庁や自治体職員に聞いた、窓口で確認や書き直しを求められる可能性もある「手書きで問題になりやすい漢字」を紹介する。
まずは「鈴」。「令」と同じく手書きでは右側のつくりの部分をカタカナの「マ」の上に点を打った形で書くことも多いが、印刷物などの明朝体は「鈴」だ。デザインが違うだけで同じ漢字。間違いではないが、常用漢字の「領」や「冷」、人名用漢字の「伶」「怜」「玲」「澪」なども窓口で引っかかりやすい。
住所を書く時に多用される「西」は5画目の終筆をはねるかはねないかが問題になる。手書きでは4画目と5画目を真っすぐに下ろす書き方も見られるが、自治体窓口では「俗字」とされる。自治体によっては書類に俗字で書かれていた場合、後で書き直すこともあるという。
「麗」は「鹿」の上にある点二つを縦に打つか斜めに打つかがポイント。同じように点の打ち方が問題になる漢字に「言」や「均」などがある。「美」や「幸」は6画目と7画目の横棒の長さで、「真」や「直」は2画目の縦棒を垂直に下ろすか左斜めに下ろすかで違いが出る。「奏」や「邦」も横棒が問題になる。
「花」はくさかんむりの下、右部分の横棒が「乚」に当たるだけか突き抜けるかが鍵。「牙」も2画目に注意が必要だ。「松」はつくりの「公」の筆押さえの書き方が引っかかりやすいなど、自治体側の確認作業も大変そうだ。
自治体で使うシステムによっても、デザインの違う字が登録できるかどうかに差が出るという。
例えば「龍」は人名用漢字ではなく、1画目の点を横に倒した形が正式な人名用漢字だ。新聞紙面でも通常は使用しない形だが、熊本市などでは正式な人名用の形でしか名前として登録できない。しかし、熊本県の天草市役所で使うシステムでは「龍」でも登録できるため、結婚などで本籍地が他の自治体に変わった場合、戸籍の名前の漢字表記が微妙に変わるケースもあるという。天草市に出生届で「龍」を含む名前が提出された時には、市職員がこのリスクを説明。すると大半の人が正式な人名用漢字での登録を希望するという。(東有咲)
楷書体の出生届 「書き直しさせられた」
熊日には複数の読者から「昔、実際に自治体の窓口で漢字の書き直しを求められた」という体験が寄せられた。
そのうちの1人、熊本県天草市の会社員女性(41)は18年前、娘の出生届を当時の本渡市役所(現・天草市役所)に提出する際、名前の「鈴」のつくりの部分を「マ」の上に点を打った楷書体で書いていた。すると窓口で「この漢字では戸籍としての登録ができない」と言われ、書き直した記憶があるという。この体験から、娘に名前の漢字を教える時や小中高校の卒業証書の漢字調査では明朝体の「鈴」の形で統一させた。
天草市市民課によると、合併前でもあり18年前の記録は残っておらず、実際に突き返したかどうかは確認できなかった。ただ、少なくとも現在は書き直しを求めることはないという。
天草市では現在、「令」や「鈴」のようにデザインが違う同一漢字はもちろん、書き方の癖などで疑問が生じる漢字は、出生届の「その他」欄に登録可能な明朝体の漢字も記載し、提出者にも説明している。
市民課は「出生届はお子さんの名前を最初に申請するもの。あとから『聞いていなかった』とならないよう特に丁寧な説明を心がけている」とした。(東有咲)
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