【あの時何が JVOAD・火の国会議編③】内閣府も参加、「連携の場」動きだす
熊本地震の県内避難者数がピークに達し、県人口の1割超となる18万3882人に上ったのは本震翌日の昨年4月17日。指定避難所分だけの集計で、指定外や車中泊を含めるとさらに膨らむ。対応は急務だった。
18日夜、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)事務局長、明城[みょうじょう]徹也(46)のスマートフォンが鳴った。いったん帰京した明城を引き継ぎ、現地対応していたピースボート災害ボランティアセンター(東京都)の事務局長、上島安裕(35)からだった。「明日の朝9時、県庁の現地対策本部で副大臣に会ってほしいと言っている」。要請したのは内閣府企画官(当時)の児玉克敏(48)。防災担当で、明城らとは旧知の仲だ。
東日本大震災以降、政府も災害時連携の仕組みを構築しつつあった。2013年改正の災害対策基本法では、国や地方公共団体は「災害時に果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならない」と追記。国の防災基本計画には、ボランティア団体が連携や情報提供の相手として加えられた。
防災基本計画の修正は地震後の16年5月だが、「既に文面はまとまっていた」と児玉。15年9月に鬼怒川が氾濫した茨城県常総市での県、市、県・市社会福祉協議会、地元NPO、そしてJVOAD準備会の6者による情報共有会議の実績を評価した提言が反映されたという。
18日、福岡経由で熊本入りした児玉は、政府代表の内閣府副大臣、松本文明(68)に経緯を説明。避難所の現状を危惧する松本に、児玉は進言した。「NPOが避難所のニーズを吸い上げ、市町村につなぐ。常総6者会議のような場でニーズの『つなぎ』は解決できるはず」。松本は「JVOADに会いたい」と即答した。
一方、東京で連絡を受けた明城。熊本空港は閉鎖中で翌朝の面会には間に合わない。その矢先、空港再開の一報が入った。翌19日午前7時40分着の羽田発臨時便で熊本に戻り、県庁へ。副大臣との面会、担当者間の意見交換で申し合わせたのは「避難所支援」の相互協力だった。
明城は準備会メンバーにメール発信した。「県庁敷地内の平屋を使わせてもらう。今日の夕方6時半から県とNPOとの打ち合わせを行う。現在参加団体に声掛けをしている」
避難所支援チームミーティングと称した会合にはNPOや内閣府、厚労省も交えた21団体・個人が出席。県福祉のまちづくり室長(当時)の木村忠治[ただはる](55)は「みなさんの力を借りて行政、民間、社協などが集まる場をつくりたい」と訴えた。
常総モデルはあったが、都道府県規模は例がない。2日後には「熊本地震・支援団体火の国会議」と命名される連携の場が、いよいよ動きだした。(小多崇)=文中敬称略
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
社会的弱者への配慮、平時から 障害、性的少数者、外国人…災害時に不平等感拡大 熊本市で「ぼうさいこくたい」
熊本日日新聞 -
震災被災の宇土櫓、骨組みだけに 熊本城保存活用委が視察、復旧状況を確認
熊本日日新聞 -
熊本県内2キャンパス、アピール強化と既存建物の見直しを 東海大新総長に就任した松前義昭氏に聞く
熊本日日新聞 -
地震で被災の本堂、修復完了 稚児行列で祝う 宇城市の光照寺
熊本日日新聞 -
熊本地震の横ずれ断層「恐ろしかった」 海外の高校生250人が益城町など見学
熊本日日新聞 -
熊本開催の「ぼうさいこくたい」閉幕 ワークショップ、シンポ…災害対策、教訓伝承学ぶ
熊本日日新聞 -
熊本市議会の自民会派4分裂、合流へのステップ!? 市役所建て替え巡り事態悪化 早期合流には「冷却期間必要」の声
熊本日日新聞 -
熊本など4弁護士会、災害時の法的課題共有 協定に基づき熊本市で会合
熊本日日新聞 -
ヴォルターズ新加入選手、熊本地震学ぶ 23日に益城町で愛媛戦「復興の力に」
熊本日日新聞 -
雁回山登山道 住民ら歩き初め 「城南コース」が8年ぶり開通
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「損害保険」。11月14日(木)に更新予定です。