【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑦】運営厳しい避難所、プロの目でチェック
![広安小の避難スペースを体育館へ移す前日、整備が進む仕切りや段ボールベッド=2016年5月6日(桑原孝太さん提供)](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2021-03/IP170906TAN000015000_02.jpg?itok=JhMb9rBK)
![【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑦】運営厳しい避難所、プロの目でチェック](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2021-03/IP170908MAC000005000_00.jpg?itok=Jhn5O9ID)
益城町住民生活課(当時)の奥村敬介(30)は昨年4月15日朝、広安小へ向かった。熊本地震の前震後、避難所に配置された町職員の一人として運営を担うためだ。体育館は使えず、住民は校舎に避難していた。
16日未明、本震。「急いで外に出ましょう」。避難者を誘導しようと足元を照らすと、地割れが走っていた。周辺の住民がさらに詰め掛け、校庭は人や車で埋まった。夜闇は冷たく、奥村らは校舎内から毛布をかき集めて配布。前震では、教員らが体育館のカーテンを切り分け、毛布代わりに配る場面もあった。想定外の震度7の連鎖。奥村は「もし3回目、4回目があったら…。そう考えると絶望した」。
ピーク時の避難者は校庭の車中泊も含め約800人。児童の保護者らが自衛隊提供の白飯をおにぎりにするなど協力し、学校側もサポート。支援団体も駆け付けた。
しかし、校舎内は土足で通路と寝床の区別もままならない。町の行政機能を回復するため、避難所を支える職員は徐々に減らされた。水道の復旧見通しなど情報が不足し、住民から不満が噴き出すことも。奥村らは「雰囲気が悪くならないようにするので精いっぱいだった」。
各避難所の課題は、ボランティア団体が連携・調整を図る「火の国会議」でも最重要テーマだ。毎夜の会議では炊き出しの状況などを共有。「運営担当者が疲れ切っている」「高齢者が廊下に寝ている避難所がある」。そんな報告が次々に挙がったが、解消は見通せなかった。
現場ではマンパワーも必要な知識・情報も足りない。ピースボート災害ボランティアセンター(東京都)の辛嶋友香里(33)は「益城町には厳しい状態の避難所が複数ある」との印象を抱いていた。町は、庁内態勢の立て直しと並行して「避難所の自主運営をサポートしてほしい」と全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)へ打診。4月27日、広安小で辛嶋らによる運営支援が始まった。
「長期避難は私たちにとって未知のこと。想像力を発揮して何とか対応していた」と奥村。「やってきたことが正しいのか、辛嶋さんらプロの目でチェックし、修正してくれるのがありがたかった」
学校再開を2日後に控えた5月7日、避難者は校舎から体育館へ移った。衛生管理やプライバシーの確保を図ろうと、前日までに体育館内をカーテンで仕切り、世帯ごとのスペースはコミュニティーごとに再編。区画を割る通路は親しみやすく、くまモンや支援者の名を冠した。その一つが「奥村通り」。「ちょっと恥ずかしかったですよ」と奥村は振り返る。
通りごとに班分けされ、食事の配膳や掃除を分担する仕組みも定着した。困難な避難生活の中でも、住民は次第に落ち着きを取り戻していった。(小多崇)=文中敬称略
RECOMMEND
あなたにおすすめTHEMES
熊本地震-
【能登地震半年 地方紙記者が見た被災地⑫】二つの被災地、つなぐ意義 熊本日日新聞社・堀江利雅記者
熊本日日新聞 -
吉田松花堂(熊本市)所有者に国重文指定書を伝達 「頑張って守る」
熊本日日新聞 -
熊本市役所本庁舎建て替え、市議会の議論が焦点に 議員にくすぶる異論、そもそも論…
熊本日日新聞 -
中央区役所「花畑町別館跡に」 熊本市長、市議会に移転案提示 「多くの市民が利用しやすい」
熊本日日新聞 -
熊本競輪場の正門前、花で明るく レース再開へ市民が植栽
熊本日日新聞 -
競輪選手、新市街「バンク」疾走 熊本競輪場再開前イベント
熊本日日新聞 -
熊本地震からの復興、動画と冊子に 九州農政局の若手職員が作成、能登の被災農家に配布へ
熊本日日新聞 -
五百旗頭さん送る会、歴代首相が参列 蒲島前知事「熊本県民のため力注いだ」
熊本日日新聞 -
当時6歳の姉、東日本大震災で犠牲に… 宮城の女子高生、益城町で13日から写真展 見つかった遺品など27点
熊本日日新聞 -
熊本・南阿蘇鉄道 駅はしごして 全線再開1周年記念イベント 高森町、南阿蘇村の8駅
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
「すべての道は熊本に通じる」とは、蒲島郁夫前知事が熊本県内の道路整備に向けた意気込みを語る際に使ってきたフレーズ。地域高規格道路などの骨格的な道路や鉄道網は、地域・産業の活性化はもちろん大規模災害時の重要性も注目されています。連載企画「移動の足を考える」では、熊本県内の〝足〟の現在の姿を紹介し、未来の形を考えます。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を目指す記者と一緒に楽しく学んでいきましょう。
※次回は「相続・贈与は難しい」後編。7月19日(金)に更新予定です。