【あの時何が JVOAD・火の国会議編⑦】運営厳しい避難所、プロの目でチェック
益城町住民生活課(当時)の奥村敬介(30)は昨年4月15日朝、広安小へ向かった。熊本地震の前震後、避難所に配置された町職員の一人として運営を担うためだ。体育館は使えず、住民は校舎に避難していた。
16日未明、本震。「急いで外に出ましょう」。避難者を誘導しようと足元を照らすと、地割れが走っていた。周辺の住民がさらに詰め掛け、校庭は人や車で埋まった。夜闇は冷たく、奥村らは校舎内から毛布をかき集めて配布。前震では、教員らが体育館のカーテンを切り分け、毛布代わりに配る場面もあった。想定外の震度7の連鎖。奥村は「もし3回目、4回目があったら…。そう考えると絶望した」。
ピーク時の避難者は校庭の車中泊も含め約800人。児童の保護者らが自衛隊提供の白飯をおにぎりにするなど協力し、学校側もサポート。支援団体も駆け付けた。
しかし、校舎内は土足で通路と寝床の区別もままならない。町の行政機能を回復するため、避難所を支える職員は徐々に減らされた。水道の復旧見通しなど情報が不足し、住民から不満が噴き出すことも。奥村らは「雰囲気が悪くならないようにするので精いっぱいだった」。
各避難所の課題は、ボランティア団体が連携・調整を図る「火の国会議」でも最重要テーマだ。毎夜の会議では炊き出しの状況などを共有。「運営担当者が疲れ切っている」「高齢者が廊下に寝ている避難所がある」。そんな報告が次々に挙がったが、解消は見通せなかった。
現場ではマンパワーも必要な知識・情報も足りない。ピースボート災害ボランティアセンター(東京都)の辛嶋友香里(33)は「益城町には厳しい状態の避難所が複数ある」との印象を抱いていた。町は、庁内態勢の立て直しと並行して「避難所の自主運営をサポートしてほしい」と全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD[ジェイボアード]、当時は準備会)へ打診。4月27日、広安小で辛嶋らによる運営支援が始まった。
「長期避難は私たちにとって未知のこと。想像力を発揮して何とか対応していた」と奥村。「やってきたことが正しいのか、辛嶋さんらプロの目でチェックし、修正してくれるのがありがたかった」
学校再開を2日後に控えた5月7日、避難者は校舎から体育館へ移った。衛生管理やプライバシーの確保を図ろうと、前日までに体育館内をカーテンで仕切り、世帯ごとのスペースはコミュニティーごとに再編。区画を割る通路は親しみやすく、くまモンや支援者の名を冠した。その一つが「奥村通り」。「ちょっと恥ずかしかったですよ」と奥村は振り返る。
通りごとに班分けされ、食事の配膳や掃除を分担する仕組みも定着した。困難な避難生活の中でも、住民は次第に落ち着きを取り戻していった。(小多崇)=文中敬称略
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