熊本県とJR九州、豊肥線複線化の協議を検討 一部区間で TSMC進出、利用者急増に対応
熊本県とJR九州が豊肥線の輸送力強化を目指し、一部区間の複線化に向けた協議を検討していることが10日、分かった。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出に伴い、熊本駅(熊本市)-肥後大津駅(大津町)間の利用者の急増に対応する。整備の効果を考えれば、駅間の距離が長い区間の複線化が有力だ。
豊肥線は、上り(熊本方面行き)と下り(大分方面行き)の列車が同じ線路を走る単線。複線化する区間は確定していないが、駅間距離が4・0キロと最も長い竜田口(熊本市)-武蔵塚(同市)間のほか、3・7キロと2番目に長い原水(菊陽町)-肥後大津間や、3・1キロで3番目に長い三里木(菊陽町)-原水間が選択肢とみられる。
豊肥線の熊本-肥後大津間(22・6キロ)の2023年度の平均通過人員は1日当たり1万2889人で増加傾向が続く。JR九州が民営化した1987年度からは2・6倍に増えた。
TSMCの進出を機に、半導体関連企業の集積が加速。TSMC工場の最寄りの原水駅は23年度の1日当たり乗車人員が前年度比33%増の1445人となった。JR九州管内の駅では3番目の伸び率で、通勤通学時間帯の混雑が激しい。
関係者によると、県とJR九州は対応が必要との認識を共有。単線のままでは朝のピーク時に運行本数を増やすといった対応が限界に近づいており、複線化の協議が現実味を帯びた。
県は7月、政府に提出した財政支援の要望書に豊肥線の機能強化を明記。その概算事業費約130億円には複線化に関する費用が織り込まれているという。
県とJRの協議では、各駅の構内設備改良も議題となる見通し。線路が1本しかなく上下列車の行き違いができない東海学園前駅や、線路が2本あっても安全装置がないために列車が同時に進入できない原水駅が想定される。
取材に対し、JR九州は「現在は豊肥線の機能強化の必要性を検証している段階だ」と答えた。(立石真一、田代智也)
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