大学無償化「評価せず」6割 「子ども3人以上限定」に不満 熊日S編アンケート
政府が多子世帯を対象に大学授業料などを無償化する方針を示したことに対し、熊日の「SNSこちら編集局(S編)」がアンケートをしたところ、「全く評価しない」「あまり評価しない」と答えたのが計62・2%となり、「評価する」「ある程度評価する」の計37・8%を上回った。「3人以上を扶養する世帯」など、支援の対象が限定的であることへの反対意見が多かった。
アンケートは13~15日、S編のLINE会員を対象に実施し、熊本県内を中心に1404人が回答した。
政府案について、「全く評価しない」が最多の442人、次いで「あまり評価しない」が431人。「ある程度評価する」は337人、「評価する」は194人だった。
世帯年収別で見ると、どの所得層でも「評価しない」の合計が約6割を占めた。年代別では、20代以下で「評価する」が58・6%だった一方、30代以上の63・1%が「評価しない」と答えた。
不満な点を複数回答で尋ねたところ、「子どもが3人以上に限定される」が最多の921人、「長子が扶養から外れたら支援の対象外になる」827人、「財源がなく、国の借金が増える」606人と続いた。「所得制限を設けるべきだ」は463人、「私立は全額免除に届かないケースがある」が421人だった。
少子化対策として有効かという問いには、「全く有効でない」「あまり有効でない」が計883人で、62・9%を占めた。
政府が11日に公表した「こども未来戦略」案は、「次元の異なる少子化対策」の施策や財源を具体化。子どもを3人以上扶養する世帯に対し、2025年度から大学や専門学校などの授業料を無償化することを盛り込んだ。所得制限は設けないが、3人きょうだいの場合、長子が就職して扶養から外れれば、2、3人目は支援の対象から外れる。22日に閣議決定した。
アンケートは、無作為抽出する世論調査とは性格が異なる。(清島理紗)
◆「経済的に助かる」と評価 一方で「対象外」に悲痛な声
子どもを3人以上扶養する世帯を対象に、政府が打ちだした大学授業料などの無償化。熊日の「SNSこちら編集局」が行ったアンケートには、「経済的に助かる」と評価する声の一方、きょうだい間の年の差や進路選択によって恩恵を受けられないことへの不満が寄せられた。少子化対策にはまず若者世代や乳幼児期支援の拡充を求める意見も多く、政府の政策と国民の生活感の隔たりが浮き彫りになった。
「夫を早く亡くし、子ども3人を育てている。明るい未来を感じた」(熊本市、40代主婦)、「人材を育てる上で画期的」(熊本市、30代女性、パート)-。
大学無償化に対しては、子育て世代から喜ぶ声が寄せられた。公務員の20代女性(荒尾市)は「無償化はかなりありがたい。2人子どもがいて年子。3人目は諦めかけていたが、こんな政策があれば、頑張ってもう1人作りたい」と前向きだ。
一方、3人を扶養する家庭でも、長子が就職すると下の子どもたちは対象から外れるため、きょうだいの年の差によって支援の有無や期間が左右される。会社員の40代男性(熊本市)は、「子どもは大学3年、中3、中1なので子ども3人でも対象外。毎月100時間近い時間外労働をしてぎりぎり維持している」と悲痛な声を上げた。
大学無償化よりも前に着手すべき施策があるという不満も目立った。
「奨学金返済を支援すれば、子どもを産む余裕が生まれるのでは」(和水町、20代女性、歯科衛生士)、「不妊治療の援助を」(荒尾市、30代女性、パート)、「全ての子どもの高校までの授業料や給食費、制服代などの無償化を」(西原村、30代女性、事務)など、これから子どもを持つ人や出産後の養育に対する支援を求めた。
回答者1404人の7割は女性。助産師の30代女性(熊本市)は「3人目を妊娠中。(家事や育児を全て一人でこなす)ワンオペは本当につらい」と、女性に負担が大きく偏っている状況を訴えた。
なかなか実効性が上がらない歴代政権の少子化対策。教員の60代男性(熊本市)は「防衛費などにはいくらでも税金を出すのに、少子化対策は対象を限定するのでは、国民の理解は得られない」と漏らした。
会社員の30代女性(熊本市)は「今から3人目を産んでも、将来にわたって支援が続くのか疑問。日本の将来への希望が見いだせないことも少子化の原因だ」と分析。少子化問題の根っこに、政治不信も垣間見えた。(清島理紗、堀江利雅)
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