「生活に不安」58% 前年比4ポイント増 自宅再建、家計に重く

熊本地震4年 被災者150人聞き取り調査

熊本日日新聞 | 2020年04月10日 00:00

 熊本日日新聞社は9日、2016年4月の熊本地震で住宅被害を受けた被災者150人を対象に、約1年ごとに聞き取っている生活状況や復興の実感についての追跡調査の結果をまとめた。

 自宅再建や災害公営住宅(復興住宅)の整備が進んだことにより、住まいの不安を抱える人が減る半面、家計や仕事など金銭面の課題を抱える被災者は固定化されている現状が浮かんだ。一方、住まいの再建が進んでも心身の負担が癒えない人も多く、外から見ただけでは判断できない内面の苦悩も垣間見えた。2回に分けて伝える。(熊本地震取材班)

 「現在や今後の生活に不安や不満があるか」との問いに「ある」と答えたのは28%(31人)。「どちらかといえばある」の30%(34人)を加えると58%となり、1年前の前回調査より4ポイント増えた。

 不安や不満を感じる内容(複数回答)で最も多かったのは「家計・生活費」の28%(31人)で、前回から5ポイント増。自宅再建のローンや貯金の取り崩しが重くのしかかるケースが多かった。「収入が低く、復興住宅の家賃を毎月払えるかどうかわからない」=益城町、自営業女性(72)=など、仮設住宅を退去したことによる新たな負担の問題もあった。

 前回まで最多だった「住まい」は20%(22人)に減少。県内の復興住宅は3月末までに全て完成したが、益城町の土地区画整理や県道4車線化などで自宅再建のめどが立たないことを不安・不満の要因に挙げた被災者もいた。

 仮設住宅を退去した後、町営住宅への入居を望んだものの、「地震を機に息子と同居したため世帯収入の条件が合わず、アパートを借りている」=大津町、元保育士女性(56)=など希望通りの住まいが実現できないケースも複数あった。

 今回新しく加えた設問「失ったり傷ついたりして、取り戻せないものは」(複数回答)では、「住まい」と「家計」がともに27%(30人)で最多。「心の傷」の20%(22人)、「体調」の19%(21人)が続いた。

 「心の傷」「体調」と回答した被災者の9割近くは、住まいを確保できていた。その一方で、「地震のストレスによる突発性難聴が治らない」=菊陽町、派遣社員男性(49)、「地震前の場所に戻れず、隣人も変わり、不眠やいらいらが治らない」=熊本市、小学校教諭男性(57)=など生活環境や仕事の変化による心身の負担のほか、子どもが当時の揺れや光景を突然思い出すフラッシュバックを訴える声も目立った。

 県などは住まいの確保を生活再建の目安としているが、それだけでは推し量ることのできない被災者の苦悩が、新たな設問によって浮き彫りになった。

 ※追跡調査は熊本地震から半年となる2016年10月に始め、17年からは毎年4月までに実施。今回で5回目。23~89歳の男女111人(前回125人)から回答を得た。

被災時「水が必要」が最多

断水教訓に、備蓄心掛け

 「発生当初に必要性を感じたものは」を複数回答で尋ねたところ、「水」が最多の56%(62人)。多くの被災者が水の確保に苦労した実態がうかがえた。当時の体験を教訓に、水の備蓄を心掛けているという声も多くみられた。

 熊本地震の被災地では、長期の断水を余儀なくされた。回答では「常に水の確保に必死だった」「飲み水や生活用水として大量に使う」「水がないと食事もできない」など、当時の切実な状況が浮かび上がった。

 県立大を3月卒業し、仙台市の中高一貫校の社会科教諭になった熊本市北区出身の村上明里さん(23)は「水や食料を備蓄しておらず、水を調達するため、甲佐町や菊陽町まで行った」と回答。現在は乾パンと3日分の水を備蓄しているという。

 一方、益城町の自営業女性(72)は「行政も備蓄し、すぐに供給できる体制をつくってほしい」と注文。給水車や貯水施設の充実を求める声もあった。

 次いで多かったのが、45%(50人)が回答した「トイレ」。断水でトイレの水が流せず、多くの被災者が不便を強いられた。中には「畑に穴を掘ってしのいだ」と答えた人もいた。

 西原村の会社員、加藤みな子さん(60)は「避難所のトイレは不衛生で、水で流せるトイレに殺到していた。災害用トイレがあると安心」と振り返った。

 3番目に多かったのは、41%(45人)が答えた「正確な情報」。「水や食料はどこでもらえるのか、正しい情報がなければ受け取れない」との意見のほか、「津波が来る」「ライオンが逃げた」など当時、実際に聞いたデマの拡散を懸念する回答も相次いだ。

 嘉島町の病院事務、津田美奈子さん(49)は「正しい情報が一番必要。緊急時には何を信じていいのか、分からない」と訴えた。

 このほか、「食料」32%(36人)、「地域コミュニティー」「避難所」31%(34人)、「ボランティア」27%(30人)、「家族」24%(27人)などと続いた。

政治・行政機関の対応

「評価」6割、前年並み

 熊本地震後の県や市町村、県議会、市町村議会の対応について、ある程度を含め「評価する」は前年と同水準の60%(67人)。インフラ復旧の進展や行政職員の親身な対応が評価の理由に上がる一方、生活再建支援の継続を求める声も目立った。

 内訳は「評価する」24%(27人)、「ある程度評価する」36%(40人)、「あまり評価しない」12%(13人)、「評価しない」6%(7人)、「どちらともいえない」22%(24人)。

 「評価する」理由は「グループ補助金や義援金が支給された」「仮設団地や災害公営住宅が早く完成した」など。「評価しない」では「議員が意見を聞いてくれない」「各種申請手続きが煩雑で融通が利かない」「自治体によって支援にばらつきがある」などが挙がった。

 必要な公的支援については、迅速で正確な情報提供をはじめ、住まい再建後の見守り、医療費減免の復活、高齢者の暮らしのケアといった中・長期的な施策を求める声が目立った。

 災害対応や復旧・復興に求める取り組みは、企業誘致による経済活性化や大規模な防災訓練、記憶や教訓の風化防止、議員数や報酬削減による財源確保などが挙がった。

「住まい確保」9割弱

「復興実感なし」2割

 熊本日日新聞社の被災者聞き取り調査で、住まいを「再建・確保できた」「見通しが立った」とした人の割合は9割弱。昨年の前回調査から微増だが、生活基盤の整備が進んだことがうかがえる。

 内訳は「再建・確保できた」76%(84人)、「見通しが立った」10%(11人)。仮設住宅を退去して新築・再建した自宅に移った人が目立ち、実家や復興住宅に住む予定の人もいた。

 一方、住まい再建・確保の「見通しが立っていない」とした人は9%(10人)いた。理由は「再建資金が乏しい」「ひびが入ったままの借家の修理について大家と話し合えない」「宅地造成や道路整備が終わるのに、あと2年かかる」など、まだ一定の期間や資金を要する人が少なくない。

 復興を実感するかどうかについては「実感する」が30%(33人)だった。「ある程度実感する」の44%(49人)と合わせると74%となり、前回より7ポイント増えた。国道57号の復旧ルートや県道の4車線化が進んでいることなどが理由に挙がった。

 ただ、「あまり実感できない」が18%(20人)、「全く実感できない」が4%(4人)で計22%。前回より5ポイント減にとどまった。

 理由として「自宅が再建できずに取り残されていると感じる」「地区の道路や用水路の復旧が置き去り」「観光客減少などで飲食店経営が厳しい」といった声が上がった。

 「復興は実感するが、町の風景が変わってしまった」などを理由に、「どちらとも言えない」と答えた人も5%(5人)いた。(熊本地震取材班)

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