コロナ感染「周知せず拡大」 熊本市内事業所のクラスター 従業員ら訴えも対策義務、法令なく

熊本日日新聞 | 2021年09月22日 10:00

スマートフォンで勤務先のクラスターに関する情報を確認する男性従業員=熊本市

 熊本市のコールセンターで9月上旬、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)の発生が確認された。複数の従業員は、事業所側が感染防止対策を怠り、陽性者の確認を周知しないまま業務を継続したことが感染拡大につながったと訴える。ただ、事業所に従業員に対する感染状況の周知や、感染防止策を明確に義務付ける法令はないのが現状だ。

 複数の従業員によると、コールセンターでは一つのフロアに約70~80人が同時に勤務。業務用の電話機やパソコンなどは共用で、従業員同士の席の距離も近く、間仕切りもない密な状態だった。

 調査に入った熊本市新型コロナウイルス感染症対策課は「マスクの着用や体温測定は義務付けられていたが、消毒や換気などの対策が不十分だった」とする。従業員の入れ替わりが激しく、接触者など検査対象の把握も難航したという。

 陽性者の初確認は8月下旬。9月20日までに35人に拡大した。男性従業員の一人は「最初の陽性者の発生から約10日、職場内の感染の状況や検査の実施に関する連絡がなく、普段の業務が継続された。その間も陽性者は増えていた」という。

 男性は9月上旬のPCR検査で陰性だったが、「同居家族に持病があり、感染させていたらと思うと恐ろしい」と訴える。

 女性従業員の一人は、陽性となった従業員と職場で接触があったため検査を受けた。結果は陰性だったが、「やむを得ず休んだ期間の補償に対する説明も不十分で、退職も考えている」と明かす。

 熊本労働局や熊本市によると、新型コロナウイルス感染症に関して事業所側に労働者の感染拡大防止策を明確に義務付ける法令はない。感染防止策の実施を事業者の「責務」とした新型インフルエンザ対策特別措置法も努力義務にとどまる。保健所の指導も協力を求めているにすぎない。

 ただ、労働契約法上の安全配慮義務を怠ったとして、民事責任を問われる可能性はあるという。

 男性従業員は「使用者側が感染防止対策への意識が希薄な場合、労働者側は身を守るすべがない」と嘆く。

 事業所側は熊日の取材に対し、「熊本市保健所の確認と許可を得て17日に営業を再開した。感染対策に関するガイドラインなどをつくり、社内に周知する」と回答した。(隅川俊彦)

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