面会制限、妻の手握りたい コロナ禍の高齢者施設 画面越し、家族ら「切ない」

熊本日日新聞 | 2021年09月20日 07:00

妻にオンライン面会する杉山正見さん(左)と長女=16日、熊本市

 妻の手を握りたい。でも、会いたい人はタブレットの向こうにいる。1年半以上にわたる新型コロナウイルス感染拡大で、県内の高齢者施設でも面会制限が続いている。オンラインやガラス越しでの触れ合いに、家族は「切ないが、収束するまでの我慢」。もどかしくても、心はいつもそばにある。

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 「のぶちゃーん、元気そうね」

 熊本市南区の杉山正見さん(67)は、タブレットに写った妻(67)に向かって身を乗り出した。妻は若年性のアルツハイマー型認知症で、4月に市内の施設に入った。それ以来、直接会うことはできないままだ。

 月1回の面会では、杉山さんが施設に出向き、相談室と妻の居室をオンラインでつないでもらう。一緒に訪れた長女(39)と約5分間、呼び掛け続けた。「お母さん、顔色がいいね」「口を動かしているよ、何か言いたいんだね」。妻は会話ができないが、わずかな反応や変わらぬ様子を親子で喜び合い、杉山さんは涙をぬぐった。

 「在宅で介護していたころはスキンシップで気持ちを伝えていた。以前のように『頑張ってるね』と髪をなでてあげたいが、コロナ感染はもっと心配」。いつになったら会えるのかと不安は募るが、画面の中でも声を掛けることが心の張りになるという。

 認知症の人と家族の会県支部の世話人副代表を務める杉山さんは、介護仲間から「家族に直接会えず、寂しい」という声をよく聞く。「生きてればきっと会える。今が我慢のしどころ」と励まし合う。

 家族の苦悩に応えたいと、看取[みと]りの時期に限って入所者に面会を認めている施設もある。

 荒尾市の特別養護老人ホーム「白寿園」では、検温や健康チェックをした上で、入所者の部屋で約10分間会うことができる。施設長の鴻江圭子さん(69)は「家族と会うことが本人の安心感につながり、家族が心を整理する時間にもなる」と話す。

 同市の中村剛さん(84)は7月下旬、妻和代さん(当時81)を見送った。和代さんはその半月ほど前から、食事をとれなくなり、面会が許可された。

 コロナ禍以前は頻繁に見舞い、職員の間でも評判のおしどり夫婦。2人の時間を持つのは約10カ月ぶりだった。「やせ細った姿を見るのはつらかったが、名前を呼んで、手を握ることができた」と剛さん。

 「本来、面会は入所者と家族の権利だが、コロナ収束が見えない今、面会制限はやむを得ない」と県老人福祉施設協議会の跡部尚子会長(59)。その上で施設に配慮を求めた。「入所者の様子を小まめに伝えるなどコミュニケーションを深めて、家族の心に寄り添ってほしい」(清島理紗、志賀茉里耶)

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