元気な阿蘇、地域一丸で 支え合おう熊本【熊本地震復興再生会議 第9回シンポジウム】

熊本日日新聞 | 2020年04月14日 00:00

高森町長 草村大成氏 くさむら・だいせい 高森町長、阿蘇市町村会長、南阿蘇鉄道社長。日本大文理学部卒。高森町出身、52歳
みなみあそ観光局戦略統括マネジャー 久保尭之氏 くぼ・たかゆき 一般社団法人みなみあそ観光局戦略統括マネジャー。東京大工学部卒。鹿児島市出身、29歳
阿蘇市観光協会長 菊池秀一氏 きくち・しゅういち 阿蘇市観光協会長、高菜漬け製造・販売「菊池食品」社長。熊本商科大経済学部卒。阿蘇市出身、50歳
小国町議 西田直美氏 にしだ・なおみ 阿蘇ジオパークガイド協会副会長、小国町議。北九州市立大文学部卒。小国町出身、66歳

 4年前の熊本地震で寸断された阿蘇地域の“大動脈”である国道57号、JR豊肥線、阿蘇大橋が2020年度中に復旧する。熊本日日新聞社が設けた「熊本地震復興再生会議」は3月20日、「阿蘇の復興」をテーマに第9回シンポジウムに代えて座談会を開催。高森町の草村大成町長や阿蘇市観光協会の菊池秀一会長ら阿蘇地域で活躍する4氏が、地域の現状や課題、復興の道筋などについて意見を交わした。(文・山口尚久、臼杵大介、写真・高見伸)
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【魅力高めるには】世界遺産へ思い共有 ブランド強化、推進を

 毛利聖一・熊日編集局次長 熊本地震の前よりも、阿蘇や熊本、九州を元気にしていくためにはどんなことが必要でしょうか。

 久保尭之・みなみあそ観光局戦略統括マネジャー 海外には非常に不便でも観光客が訪れる場所がある。行きたい、泊まりたい理由を作るのが民間の役割だ。阿蘇は知名度は高いが、ブランド力が弱い。活火山やカルデラは知られているが、草原は知られていない。長く火口見物一本で戦ってきたのが課題。ブランドイメージを作り直す必要がある。

 西田直美・小国町議 阿蘇は食べ物がおいしくて温泉もいいが、その素材を生かし切れていない。発信力も不十分だ。日本的な「おもてなし」の良さを、必ずしも外国人が望んでいない場合もある。海外の旅行代理店を対象に、阿蘇中岳第4火口見学のモニターツアーを実施したところ、危険性や利益はどれくらいかなど、有意義な意見が出た。

 菊池秀一・阿蘇市観光協会長 観光業者らが、それぞれの分野で再挑戦して、お客さま目線で望まれる地域にしていかないといけない。「道路が復旧すれば、またお客さんが来てくれる」という声もあるが、甘いと思う。観光業者だけでなく、国立公園を管理する環境省や、草原を維持している牧野組合などと共に稼ぎ、来訪者も含めて守っていく方向もある。

 草村大成・高森町長 そもそも住民が生活を楽しみ、元気な阿蘇をつくらないと、訪れた人も面白くないだろう。そのために危機管理と防災意識の強化が必要。西原村が素晴らしい防災マニュアルを仕上げている。これを基に阿蘇ならではの防災体制を取る。

 毛利編集局次長 ブランド力強化が課題との声が出ました。どうすればよいのか、考えを聞かせてください。

 久保さん 東京在住者を対象にしたブランドイメージの調査にかかわった。食については「イメージがない」「分からない」が最多だった。阿蘇の人たちにとっては「あか牛」が大前提になっているが、外の人にそのイメージはない。一度立ち止まって、どんな言葉やビジュアルで打ち出していくのか検討していく体制を作りたい。

 草村さん 阿蘇について「阿蘇山」以外は知られていないことを、住民に知ってほしい。あか牛には魅力があるが、畜産農家としては黒毛和牛の方が値段が高く市場も大きい。あか牛を生産するよう農家を説得できるのは、住民の生活を向上させるという強い思いを持った市町村長の役割だと感じている。

 西田さん 11人が認定されている「阿蘇地域通訳案内士」が、宮崎の高千穂や大分の別府、熊本市などでは活動できない。境界をなくしてガイドできるようになれば、大きなブランドになる。

 菊池さん 新型コロナウイルス感染拡大の問題が発生して、外国人観光客が全く入って来なくなった。まずは福岡や熊本など、足元の九州のお客さまに足を運んでもらう戦略が必要だ。その先に大阪や東京、そしてインバウンド(訪日外国人客)があると思う。

 草村さん 県と阿蘇郡市7市町村で、世界文化遺産の暫定リスト入りを求める提案書を国に出す(3月26日提出済み)。ただ、各市町村に温度差がある。一緒にやっていこう、阿蘇は一つ、という思いを住民と共有することが大事だ。

【再建への道筋は】まずは九州から集客 観光地、連携すべきだ

 毛利編集局次長 阿蘇は交通インフラが被災し、大動脈が途絶しました。4年がたち、ようやく国道57号、JR豊肥線、阿蘇大橋の復旧の見通しが立ちました。復興を実感していますか。

 菊池さん 観光面は時間とともに回復し、震災前の7、8割は戻ってきた。産業面は建設・土木の復興需要が大きく、阿蘇の産業をけん引している。ただ、生活面は国道57号が分断され、人口流出に歯止めがかからなくなっている。通勤や通学先がある大津町や菊陽町、熊本市に引っ越し、転入したままの状況だ。交通インフラが途絶えたのが一番厳しく、心の傷が大きい。

 久保さん 交通機関は便利になったが、事業者の再建が進まない現状もある。観光客については地震の影響で減った部分と、地震と関係なく減っている部分を分けて考えないといけない。ドライな言い方だが、「阿蘇大橋がないから」と、努力しない面もあった。再建に当たっては、地域に可能性を感じられるかが大事だ。

 西田さん 小国は被害が少なかったが、国道212号が大分側で寸断され、福岡からの観光客が途絶えた。小国も、甚大な被害を受けた阿蘇市などと一緒に報道され、「小国は大丈夫」という発信ができなかった。212号が通れるようになり、少しずつ回復した。

 草村さん 就任後すぐに九州北部豪雨、阿蘇中岳の噴火、熊本地震があり、阿蘇は災害と背中合わせだと強く感じた。大きな災害を経験したからこそ、防災意識を強固にする必要がある。災害という入り口があれば、大動脈が復旧する2020年度は大きな出口。それぞれの自治体が出口戦略を考えないといけない。22年度に復旧工事を終え、23年度に全線が再開する南阿蘇鉄道もアピールしていきたい。

 菊池さん 行政、民間が一緒にどうやるべきか。大きな花火を上げるか、コンパクトなキャンペーンを続けるか。カルデラ内を回遊してもらう仕掛けが必要と考えている。ただ、道路や鉄路の復旧の具体的な時期がまだよく分からないので、慌てている。

 西田さん 海外客にとって行政区は関係なく、一括して日本。阿蘇地域は、それぞれの観光地が頑張っているのに、連携できていない。行政、民間の誰が、いかに音頭を取るか、リーダーシップが大事だ。ただ、トップダウンにならざるを得ない難しさも感じる。

 草村さん 国道57号は、北側で二重峠[ふたえのとうげ]トンネルなど新しい道路の工事が進み、完成すれば、信号もなくて産業ルートとして大きな動脈となる。南側のもともとあった道路は生活・観光道路として、数年後にはすみ分けができる。20年度に何もかも開通するから準備しようと思っていた。その矢先の新型コロナウイルス。この対応を何とかしてからになる。

 久保さん インバウンド(訪日外国人客)が熊本、阿蘇単体のために来ることはない。重要なのは大分、福岡とのトライアングル。豊肥線が通ると海外客は呼びやすくなり、メリットは大きい。

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