川辺川の流水型ダム「環境アセス」了承 学識者の検討委が最終会合 国交省、手続き終了後に関連工事着手へ
国土交通省が球磨川の支流川辺川に建設予定の流水型ダムについて、学識者の検討委員会は24日、ダムの設計や工法の工夫などで「環境保全への配慮が適正になされる」と結論付けた国交省の環境影響評価(アセスメント)を了承した。国交省は近く、最終書面の「評価レポート」を公表してアセスの手続きを終え、関連工事に着手する。2027年度の本体着工、35年度完成を目指す。
同日、熊本市中央区の水前寺共済会館で開いた最終会合で、8月までに提出された環境相と国交相の意見を基に評価レポート案の補正について議論。「現段階で予測し得ない環境変化が起きた場合には追加措置を講じる」「実際の環境影響や保全対策は継続的に住民らに説明する」などの見解を反映させて公表する。
終了後、川辺川ダム砂防事務所の齋藤正徳所長は「アセスで示された環境への配慮を今後も重視し、地域住民の理解も得られるようにしたい」と総括した。
国交省が計画する流水型ダムは、20年7月豪雨を受けた治水対策として熊本県が建設を要請。国交省は1999年の環境影響評価法の施行前から旧ダム計画の関連工事に着手しているため、新たなダム建設は法アセスの対象外としたが、県の求めに応じて「法と同等」の手順で2021年6月から進めてきた。
現地調査を基に法手続きに準じた「配慮」「方法」「準備」「評価」の4段階のレポートを順次作成。検討委員会でダム工事や試験湛水[たんすい]、供用が水質や大気、生態系に与える影響と保全対策の議論を重ねた。
アセスでは絶滅危惧種クマタカや試験湛水で浸水する五木村の「九折瀬[つづらせ]洞」の希少な昆虫類、川の濁り、アユの遡上[そじょう]などへの影響を予測。本体の構造や工事などでの配慮を明記した。熊本県知事や市町村長、住民の意見も盛り込んだ。
アセス完了後、国交省は「技術検討会」を設置し、具体的な環境対策などを検討。本体着工の条件となる球磨川漁協との補償交渉に入るとみられる。(堀江利雅、小山智史)
◆川辺川の流水型ダム 2020年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系の治水対策として、蒲島郁夫知事(当時)が建設を要請し、国土交通省が計画。27年度の本体着工、35年度の完成を見込む。建設場所は旧川辺川ダム計画と同じ相良村四浦の峡谷。高さ107・5メートル、総貯水容量約1億3千万トンで、国内最大の治水専用ダムとなる。「穴あきダム」とも呼ばれ、普段は川の水をそのまま流し、洪水時のみ貯水して流量を調節する。
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