九州の市町村、増える子育て支援費 5年前と比べ1・4倍に それでも15歳未満人口は9割弱の市町村で減少 <九州4紙合同企画>
5月5日は「こどもの日」。近年、市町村が子育て支援にかける予算は大幅に伸びている。柱となる「児童福祉費」は九州7県の全233市町村のうち、96・6%に当たる225市町村で5年前と比べて増加した。総額では1・4倍に増えており、市町村独自の施策に力を入れる自治体もある。ただ、九州でも全体的な少子化の流れは変わっておらず、住民サービスの最前線での模索が続く。
児童福祉費には児童手当や保育所関連費用、子ども医療費の補助といった経費が含まれる。
2021年度、九州の全市町村の児童福祉費は決算ベースで1兆1755億5000万円。16年度の8258億4300万円から42・3%伸びた。19年秋に全ての3~5歳児を対象にした国の幼児教育・保育の無償化がスタート。医療費補助の対象年齢も広がるなど国の制度拡充に伴い、市町村の支出も増えたことが背景にある。
ただ、子どもの数は減り続けている。
九州7県の15歳未満人口は22年1月時点で166万5250人。175万6268人いた5年前から5・2%減った。子どもが増えた自治体は1割強の27市町村にとどまり、利便性が高い都市部や周辺が中心だ。
例えば、熊本市の中心市街地から車で30分程度という熊本県嘉島町は、町内にある大型商業施設や自然の豊かさも〝武器〟に現役世代の移住・定住を促進。積極的に宅地開発を進め、九州でもトップ級の21・6%という15歳未満人口の伸びを達成している。
一方で9割弱の206市町村では子どもの人口が減少している。熊本県の水上村は、児童福祉費が5年前と比べて3倍超に増えているが、15歳未満人口は2割弱減った。
そんな中、国や県の補助の範囲を超えて、独自に子育て支援に予算を振り分ける自治体も少なくない。九州では4割弱の市町村が単独事業費を増やした。中には15歳未満人口の増加につながったケースもある。
福岡県中央部に位置する大任町[おおとうまち]は19年、国の幼保無償化に合わせて0~2歳児も所得制限を設けずに保育を無償化した。給食の副食費(おかず代)も町が負担。ランドセルの現物支給なども実施し、15歳未満人口は5年前と比べ13・6%増えている。熊本県合志市も私立保育園の新設補助などが奏功し、子どもの人口は6・4%伸びた。
成功事例は比較的財源に余裕がある自治体で目立つ。こうした市町村間の格差に対し自治体関係者からは、国による支援の底上げを求める声も漏れる。(九州4紙合同取材班)
■子育て支援に詳しい熊本大学の倉田賀世教授(社会保障法)の話
自治体には、横並び的に国が策定した事業を実施するだけでなく、地域の実情に応じた独自の支援を形成していく姿勢が求められる。子育て世帯が抱える個別のニーズは、対象者の少なさなどから表面化しにくい面もあるので、自治体は能動的に発見し、すくい上げる努力が重要だ。
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