【連鎖の衝撃 建物編④】 まさか、避難所「危険」 指定71カ所が使用できず 非構造部材の弱点浮き彫り
4月16日未明の本震後、熊本市西区の白坪小体育館。余震で天井がみしみしと音を立て、大量のほこりが舞った。
「大丈夫だろうか」。中にいた大勢の人たちは顔を見合わせ、外へ避難。ほどなく市の担当者が校舎の鍵を開け、「移動してください」と誘導した。体育館から運動場の車内や校舎へ、未明の再避難だった。
体育館の天井材は一部落下し、外壁にも亀裂ができているのが見つかった。運動場の車内で不安な朝を迎えたパート従業員西森安代さん(38)は「まさか避難所が使えないなんて。何を頼ればいいのか…」と途方に暮れた。
県内に最大562カ所あった指定避難所のうち、地震直後に避難所として使用できなかった建物は71カ所に上った。うち45カ所は学校施設で、ほかに公民館、益城町や宇土市の庁舎も含まれる。
ほとんどは天井材、照明器具、窓ガラスなどの「非構造部材」が落下したことなどにより、「避難所に適さない」と判断された。
熊本市西区の花陵中体育館でも天井材が落下。北区の龍田西小では敷地の擁壁に亀裂が見つかり、急きょ閉鎖された。
学校以外では益城町の総合体育館アリーナの天井材が剥落。指定避難所ではないが、グランメッセ熊本の窓ガラスも割れ、屋内立ち入り禁止となった。
避難所指定は、東日本大震災を契機に、2013年の災害対策基本法改正で市町村に義務付けられた。「適切な規模であること」や「生活関連物資を配布することが可能」などの条件があるが、建物の耐震性については定められていない。
ただし、指定の多い学校施設の耐震化は公共施設の中で最も進み、県内の公立小中学校の耐震化率は98・5%(15年度、全国12位)。熊本市は全小中学校で耐震化を完了し、市教委は今回「建物が倒壊することなく、一定の効果はあった」とする。
だが、非構造部材では60・1%(14年度)と耐震化率が低い。避難所とするには落下物からの安全性などが確保されなければならず、弱点が浮き彫りになった。
余震などに警戒するための「応急危険度判定」でも、熊本市内の学校校舎や体育館など134棟が「危険」とされ、使用できなくなっている。
国土交通省の防災担当者は「自治体の財政事情で、非構造部材の耐震化は後回しになることが多い。過去の震災でも指摘されていたが、今回も繰り返された。全国的に早急な対策が必要」とする。(馬場正広)
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