観光イチゴ園、復興へ結束 南阿蘇村の8農園

熊本日日新聞 | 2021年04月26日 15:50

熊本地震で被災し、昨年再開した木之内農園でイチゴ狩りを楽しむ観光客=16日、南阿蘇村立野
南阿蘇村の観光イチゴ園マップと、加工品の試作品を紹介する阿蘇健康農園の原田大介さん=18日、同村河陽

 熊本地震では、阿蘇観光の柱の一つとなっていた観光農園も、施設の損壊や幹線道路・鉄路の寸断で大きな打撃を受けた。この5年で交通インフラの復旧は進んだものの、新型コロナウイルスの感染拡大が客足回復に影を落としている。そんな中、南阿蘇村の八つの観光イチゴ園がタッグを組み、「イチゴ狩りの村」として観光客にアピールする取り組みを始めた。

 地震で甚大な被害を受けた木之内農園(同村立野)は昨年1月、観光イチゴ園を3年9カ月ぶりに再開した。本震から5年となった4月16日に訪ねると、ビニールハウス内を観光客が行き交い、真っ赤に色づいたイチゴをつみ取っていた。

 同農園の観光イチゴ園は1989年に開園。地震前は1・2ヘクタールで営み、多くの観光客を呼び込んでいた。地震による土砂崩れで農業用水路が壊れ、イチゴは全滅。ジャムの加工場や黒川地区の苗床も使えなくなった。

 「地区外への移転も頭をよぎったが、育ててもらった立野に恩返しがしたかった」と村上進社長(57)。近接地にハウスを再建し、復興へ歩み始めたところにコロナ禍が広がった。外国人客は姿を消し、国内客も激減した。

 今季は50アールで営業。1日約200人が来園しているが、「1日に観光バス10台、約千人が訪れていた地震前にはまだ遠い」と村上社長は言う。昨夏に再建した加工場に続いて今季はハウス内に売店を新設し、「少しずつ地震前に近づけていきたい」と力を込める。

 南阿蘇地域では30年ほど前から観光イチゴ園が続々とオープン。12月ごろからシーズンに入るイチゴ狩りは冬場の阿蘇観光の柱として定着し、約6万人が訪れるという。県のオリジナル品種「ゆうべに」「ひのしずく」をはじめ豊富な品種がそろい、県産イチゴのPRにも貢献している。

 父が開設したイチゴ園を継いだ、南阿蘇ふれあい農園(同村一関)の田尻徹さん(39)は、「客の反応を直接見られるのがやりがい。食べ比べ用に複数の品種を同時に栽培し、完熟時期を調整するのも技術の見せどころだ」と話す。

 村内の各農園は「観光名水いちご振興会」をつくり技術向上に努めてきたが、地震を機に連携を強化。SNSのグループで情報共有し、イチゴが品切れしそうな日は来園者を他園に紹介する仕組みにした。コロナで大量のつみ残しが出た昨季は、村役場前で合同販売会を開いた。阿蘇健康農園(同村河陽)の原田大介さん(44)は「災害や困難を経験したことで、農園間の“垣根”がさらに低くなった」と言う。

 昨年1月には、農業を軸に宿泊観光客を取り込む農泊事業の推進組織「南阿蘇名水ICHIGOネットワーク協議会」を村内の飲食店や温泉施設と共に立ち上げ。今季はイチゴの食べ比べを楽しむイベントを開き、農園紹介のパンフレットも作った。加工品開発にも取り組み、第1弾としてイチゴから抽出した成分を使った除菌スプレーを発売した。

 イチゴ狩りのシーズンは5月まで続くが、県内では大型連休を前に再びコロナの感染が拡大している。協議会の事務局長を務める原田さんは、「厳しい状況でこそ結束と挑戦が重要だ。魅力的な観光農園が集まる南阿蘇ならではの強みを生かし、一人でも多くの人に村へ足を運んでもらう取り組みを進めていきたい」と今後を見据える。(中尾有希)

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