【電子版限定】コメ、この時期になぜ値上がり? 23年産→24年産、端境期に在庫低水準 新米価格にも影響か
最近コメの価格が上がっているという報道を見かけるようになりました。現在、店頭に並んでいるのは主に昨年秋に収穫した2023年産米です。収穫から1年近くたっているはずなのになぜこの時期に値上がりしているの? 熊日のSNSこちら編集局(S編)にも質問が寄せられました。
まずコメの主要な流通ルートを押さえておきましょう。コメは収穫後、JAなどの集荷業者が農家から買い集めます。その後、卸売業者などを通じて小売店の店頭に並んだり、外食産業で利用されたりします。コメは1年かけて消費されていくので、その間は業者が適切な環境下で保管しながら取り引きされます。
次に農林水産省が公表している23年産米の相対取引価格を見てみましょう。相対取引価格とは、JAなどの集荷業者が卸売業者に販売する価格のことです。
昨年9月の全銘柄平均価格は60キログラム当たり1万5291円でした。それが今年の6月には1万5865円と3.8%高くなっています。昨年の出回りから今年6月までの平均価格は1万5307円と19年産米以来4年ぶりの高い水準です。
実はコメが収穫後に値上がりしていくのは珍しいことではありません。コメの取引価格はその時期の需要と供給のバランスで決まるからです。
農水省は今年6月末時点の民間在庫量を、昨年の6月末時点より20万トン少ない177万トンと見通しています。6月は早場米の収穫が始まる前の時期。穀物は収穫が始まる前の端境期に在庫が少なくなると、値上がりする傾向があります。23年産米にはこの傾向が当てはまっていると言えそうです。
ではなぜ在庫が減っているのでしょうか。一つは農水省が、主食用のコメの供給が過剰になって値下がりするのを防ぐために飼料用米などへの転作を誘導していることがあります。加えて23年産米は、猛暑の影響で主産地の新潟県産などの品質が低下して流通量が減ったことも挙げられます。インバウンド(訪日客)の増加で外食産業の需要が増えたとの指摘もあります。
さて、気になる今後の価格ですが、農水省が今年3月に公表した需給見通しによると、来年6月末時点の民間在庫量は176万トンと今年6月末時点からわずかに減少する見込みです。九州の早場米の産地では、JAが集荷する際に農家に払う24年産米の「概算金」を、23年産米に比べて引き上げたとの報道も出ています。これから本格化する主産地の収穫量次第ではありますが、24年産の新米に切り替わっても現在の価格水準が続く可能性もありそうです。(田上一平)
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