熊本市電・バスの全国交通系IC決済、「廃止」方針に抵抗強く 熊日S編アンケート 若い人ほど「反対」
熊本県内の路線バスなどで「Suica(スイカ)」などの全国交通系ICカード決済が廃止される方針について、熊日は「SNSこちら編集局」登録者を対象にアンケートを実施した。廃止に「反対」(どちらかといえばを含む)と回答した人が68・9%に上る一方、「賛成」(同)は14・1%にとどまり、決済手段変更に抵抗が強いことが浮き彫りになった。
バス事業者5社は、全国交通系ICカード決済を年内に廃止し、クレジットカード(クレカ)などのタッチ決済を新たに導入すると発表。機器更新費用が約12億円かかることを理由に挙げた。既にタッチ決済に取り組む熊本市電も、廃止する方針を示した。
アンケートは5月30日~6月2日に実施し、県外を含む1560人から回答を得た。
全国交通系の廃止に「反対」と答えた人が最も多く46・0%。次いで「どちらかといえば反対」が22・9%。一方、「賛成」は6・8%と最少で、「どちらかといえば賛成」と「仕方がない」を含めても23・9%だった。「どちらでもない」は7・1%。
全国交通系利用者の約8割、今後も存続する「くまモンのICカード」利用者も約5割が「反対」(どちらかといえばを含む)と回答。年代別では10~20代の約8割、30~60代の7割近くが「反対」で、若い世代ほど決済手段の変更に抵抗がある傾向がうかがえた。「公共交通をほとんど毎日利用する」とした人の反対は約8割に上った。
理由として、「県外から観光や仕事で訪れる際に不便」(熊本県外、60代女性)など、JRとの相互利用など観光客を含めた利便性の低下を挙げる人が多かった。「(クレカを持てない)子どもはどうしたらいいのか」(八代市、40代女性)、「利用法が限られるくまモンのICカードを子どもに持たせるのは非効率的」(熊本市、40代男性)などの不安も寄せられた。
一方、「賛成」(どちらかといえばを含む)の理由は、厳しい経営に直面する事業者の負担軽減に理解を示す声がほとんどで、「運賃値上げより納得」(菊池市、30代女性)、「路線を守るため仕方ない」(熊本市、30代男性)の声が上がった。「インバウンド(訪日客)に対応できるタッチ決済導入はいい選択」(熊本市、40代男性)との受け止めもあった。
アンケートは多く意見を集める目的で、無作為抽出する世論調査とは性格が異なる。(高橋俊啓、東有咲)
◆九州のバスの決済方法は…全国IC入れずタッチ決済採用も
「Suica(スイカ)」などの全国交通系ICカード決済が導入後に廃止となれば、全国で初のケースになるという。一方、九州・沖縄の路線バスには、全国交通系を導入しないまま、クレジットカード(クレカ)などのタッチ決済を取り入れる事業者も出てきている。
九州・沖縄の7県や、熊本の路線バス事業者5社でつくる共同経営推進室によると、現在、路線バスで全国交通系ICカードが全く利用できないのは鹿児島と沖縄の2県だ。
鹿児島では、鹿児島市が運営する路線バスが、市電とともに地域限定型の交通系ICカード「ラピカ」と、クレカのタッチ決済を導入している。
鹿児島市交通局によると、2005年に「ラピカ」を導入。その後、利用者から全国交通系ICカードへの要望が寄せられたが「費用面で断念」(市交通局)。今年3月、幅広くキャッシュレス決済に対応しようと、路線バスにタッチ決済を新たに加えた。市交通局は「タッチ決済導入に国の補助が活用できた。チャージする必要がなく、利用者から便利になったと好評だ」と話す。
沖縄も同様に全国交通系を導入せず、地域限定ICとタッチ決済で対応している。沖縄バス(那覇市)は、地域限定型のICカード「OKICA(オキカ)」が路線バスで使えるほか、3月に一部の路線でタッチ決済を取り入れた。
沖縄バスは「全国交通系の導入は費用面でハードルが高すぎる。県や国からの補助がないとどうにもできない」として、熊本の廃止方針に理解を示す。
一方、地域限定ICを廃止して、全国交通系を導入した事業者もある。長崎県営の路線バスは20年6月、地域限定型の「長崎スマートカード」のシステム更新を機に、全国交通系に切り替えた。
「『長崎スマートカード』のシステム老朽化への対応を検討する中、県外からの利用者の利便性を考慮した結果」と長崎県交通局。しかし、熊本と同じく将来への不安もある。「いずれは全国交通系も更新時期を迎える。費用は高く、ネックになるかもしれない」と漏らす。(東有咲)
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