【この人に聞く・熊本地震⑮】県医師会長の福田稠さん 医療機関どう備える? 「物資の供給態勢、整備を」

熊本日日新聞 2016年7月2日 00:00
 ◇<b>ふくだ・しげる</b> 熊本市出身。1973年久留米大医学部卒、79年熊本大大学院医学研究科修了。国立熊本病院勤務を経て、81年愛育会福田病院院長、90年理事長。熊本市医師会会長を経て2010年から現職。70歳。
 ◇ふくだ・しげる 熊本市出身。1973年久留米大医学部卒、79年熊本大大学院医学研究科修了。国立熊本病院勤務を経て、81年愛育会福田病院院長、90年理事長。熊本市医師会会長を経て2010年から現職。70歳。

 県医師会は熊本地震で、熊本入りした日本医師会の災害医療チーム(JMAT)などとともに、災害対応に当たった。災害時の支援体制や医療機関に必要な備えについて、福田稠[しげる]会長に聞いた。(林田賢一郎)

 -県医師会は地震発生後、どのように対応しましたか。

 「4月15日に災害対策本部を立ち上げ、18日に熊本入りした兵庫県医師会の先遣隊に、阪神大震災の経験を生かし、益城町のコーディネートを手伝ってもらった。宇土市は鹿児島県医師会、南阿蘇は東京都医師会というように医師会単位で支援を受け、全国から524チーム、2207人の支援を受けた」

 「JMATは本来コーディネート支援ではないが、当時、対策本部の中心となる行政職員は避難所運営などに追われていた。医師会独自の組織と情報共有も大事だと実感した。熊本が中心となって今後、九州医師会連合会などでコーディネートに関する勉強会を開くなどしたい」

 -大規模な医療支援は初の経験でした。

 「今回は医療機関自体が被災し、県内医師が中心となって働くことが難しかった。一時的な医療の破断を県内外の災害医療派遣チーム(DMAT)やJMATが補い、6月から地元の医療機関に切れ目なく引き続くことができた」

 -医療機関の被害も甚大で、病院の耐震化率(全国69%、県内62%)の低さも指摘されています。

 「阪神大震災や東日本大震災の教訓は生きており、例えば公立学校の耐震化は進んだ。医療機関も地盤の被害が甚大で、建物は大丈夫なところも多い。旧耐震基準の施設は新耐震に建て替えが進んでいるが、道半ば。医療機関は命を守る場所であり、免震や耐震化について一部でも公的負担があると、より進むのではないか」

 -一部の病院では食料不足もありました。

 「数日分の水や食料、医薬品の備蓄は必要だが、限界がある。それぞれの業界と供給協定を結べないだろうか。必要な物資をどの会社がどこへ配給するか。決めておくとスムーズでダブりもない。流通段階で相応の備蓄はあるはずで、供給態勢を事前に整えておくのも大事だろう」

 -県内の周産期医療の中核だった熊本市民病院の再開は、早くても2年後です。

 「これまで新生児の県外搬送はしない方針でやってきたが、市民病院が担ってきた先天性の心臓病手術などが県内でできず、しばらくは県外対応になる。現在は(NICU=新生児集中治療室=を使う可能性のある)母親がお産前から県外へ出ていることもあるが、県内のNICUが満杯ということはない」

 「再建に当たり、市民病院は総合病院の特性を生かすべきだ。母子をほかの診療科と連携してサポートできるのは市民病院。今後見込まれる出産数に合った、質的に高い施設を目指してほしい」

RECOMMEND

あなたにおすすめ
Recommend by Aritsugi Lab.

KUMANICHI レコメンドについて

「KUMANICHI レコメンド」は、熊本大学大学院の有次正義教授の研究室(以下、熊大有次研)が研究・開発中の記事推薦システムです。単語の類似性だけでなく、文脈の言葉の使われ方などから、より人間の思考に近いメカニズムのシステムを目指しています。

熊本日日新聞社はシステムの検証の場として熊日電子版を提供しています。本システムは研究中のため、関係のない記事が掲出されこともあります。あらかじめご了承ください。リンク先はすべて熊日電子版内のコンテンツです。

本システムは「匿名加工情報」を活用して開発されており、あなたの興味・関心を推測してコンテンツを提示しています。匿名加工情報は、氏名や住所などを削除し、ご本人が特定されないよう法令で定める基準に従い加工した情報です。詳しくは 「匿名加工情報の公表について」のページ をご覧ください。

閉じる
注目コンテンツ
熊本のニュース