【この人に聞く・熊本地震⑮】県医師会長の福田稠さん 医療機関どう備える? 「物資の供給態勢、整備を」
![◇<b>ふくだ・しげる</b> 熊本市出身。1973年久留米大医学部卒、79年熊本大大学院医学研究科修了。国立熊本病院勤務を経て、81年愛育会福田病院院長、90年理事長。熊本市医師会会長を経て2010年から現職。70歳。](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-01/IP160628TAN000277000_03.jpg?itok=eYVdKNA4)
県医師会は熊本地震で、熊本入りした日本医師会の災害医療チーム(JMAT)などとともに、災害対応に当たった。災害時の支援体制や医療機関に必要な備えについて、福田稠[しげる]会長に聞いた。(林田賢一郎)
-県医師会は地震発生後、どのように対応しましたか。
「4月15日に災害対策本部を立ち上げ、18日に熊本入りした兵庫県医師会の先遣隊に、阪神大震災の経験を生かし、益城町のコーディネートを手伝ってもらった。宇土市は鹿児島県医師会、南阿蘇は東京都医師会というように医師会単位で支援を受け、全国から524チーム、2207人の支援を受けた」
「JMATは本来コーディネート支援ではないが、当時、対策本部の中心となる行政職員は避難所運営などに追われていた。医師会独自の組織と情報共有も大事だと実感した。熊本が中心となって今後、九州医師会連合会などでコーディネートに関する勉強会を開くなどしたい」
-大規模な医療支援は初の経験でした。
「今回は医療機関自体が被災し、県内医師が中心となって働くことが難しかった。一時的な医療の破断を県内外の災害医療派遣チーム(DMAT)やJMATが補い、6月から地元の医療機関に切れ目なく引き続くことができた」
-医療機関の被害も甚大で、病院の耐震化率(全国69%、県内62%)の低さも指摘されています。
「阪神大震災や東日本大震災の教訓は生きており、例えば公立学校の耐震化は進んだ。医療機関も地盤の被害が甚大で、建物は大丈夫なところも多い。旧耐震基準の施設は新耐震に建て替えが進んでいるが、道半ば。医療機関は命を守る場所であり、免震や耐震化について一部でも公的負担があると、より進むのではないか」
-一部の病院では食料不足もありました。
「数日分の水や食料、医薬品の備蓄は必要だが、限界がある。それぞれの業界と供給協定を結べないだろうか。必要な物資をどの会社がどこへ配給するか。決めておくとスムーズでダブりもない。流通段階で相応の備蓄はあるはずで、供給態勢を事前に整えておくのも大事だろう」
-県内の周産期医療の中核だった熊本市民病院の再開は、早くても2年後です。
「これまで新生児の県外搬送はしない方針でやってきたが、市民病院が担ってきた先天性の心臓病手術などが県内でできず、しばらくは県外対応になる。現在は(NICU=新生児集中治療室=を使う可能性のある)母親がお産前から県外へ出ていることもあるが、県内のNICUが満杯ということはない」
「再建に当たり、市民病院は総合病院の特性を生かすべきだ。母子をほかの診療科と連携してサポートできるのは市民病院。今後見込まれる出産数に合った、質的に高い施設を目指してほしい」
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
熊本・美里町で新鉱物発見、命名「不知火鉱」 東京大物性研究所など レアメタルのロジウム主成分
熊本日日新聞 -
「全容を明らかに」 元城南町議殺害、発生3年で容疑者逮捕 近隣住民に安堵感
熊本日日新聞 -
熊本空港、貨物便が苦戦 取扱量はコロナ禍前の半分 県、時間延長など機能強化へ
熊本日日新聞 -
北里柴三郎と恩師の強い絆、文面に 小国町の記念館、手紙複製を展示
熊本日日新聞 -
長崎次郎書店(熊本市)休業前最後の営業終える 150年の歴史に区切り 常連客ら別れ惜しむ
熊本日日新聞 -
大津高8発大勝 7連勝で首位堅持 サッカー高円宮杯U-18プレミア西地区
熊本日日新聞 -
フォレストリーヴズ熊本は10位 バレーボールのVサマーリーグ西部大会
熊本日日新聞 -
一般男子は熊本刑務所Aが連覇 熊日旗争奪熊本県一般剣道
熊本日日新聞 -
【新札の顔・柴三郎 偉人の残像㊥】「光る縁側」医学者の原点 今も地元児童ら雑巾がけ
熊本日日新聞 -
元城南町議殺害、強盗殺人疑いで男2人を逮捕 熊本県警
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
「すべての道は熊本に通じる」とは、蒲島郁夫前知事が熊本県内の道路整備に向けた意気込みを語る際に使ってきたフレーズ。地域高規格道路などの骨格的な道路や鉄道網は、地域・産業の活性化はもちろん大規模災害時の重要性も注目されています。連載企画「移動の足を考える」では、熊本県内の〝足〟の現在の姿を紹介し、未来の形を考えます。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を目指す記者と一緒に楽しく学んでいきましょう。
※次回は「相続・贈与は難しい」前編。7月12日(金)に更新予定です。