【この人に聞く・熊本地震⑯】中越防災安全推進機構理事の稲垣文彦さん 復興に必要なポイントは? 「住民と行政をつなぐ中間支援組織結成を」
熊本地震では、震災を経験した各地から支援が相次いでいる。2004年の新潟県中越地震で住民と行政をつなぐ中間支援組織を結成、ボランティアの組織化などに携わった中越防災安全推進機構(長岡市)の稲垣文彦理事も、その一人だ。熊本地震発生後、被災者支援の助言に当たる同氏に復興に向けたポイントなどを聞いた。(編集委員 毛利聖一)
-熊本でも仮設住宅の入居が始まりましたが、共同体の維持が課題となっています。
「土地の確保といった理由はあるのだろうが、できるだけ同じ地区の住民が近接して(仮設に)住めるよう工夫してほしい。共同体が生きているということは、行政にとっても仮設の運営や将来の復興、まちづくりがスムーズに進む。どうしても維持が難しい場合、生活支援相談員やボランティアの力を生かし、仮設で新たな共同体をつくってほしい。散らばった人が元の共同体で集まれるような機会も大切だ」
-中越地震の翌年に結成された「中越復興市民会議」とは。
「被災地に入ったボランティアらを組織化し、行政の目が届かない支援の隙間を埋めることに力を入れた。その後、メンバーは各地区の地域支援員として、住民と一緒に復興に向けた取り組みや計画づくりにも携わった。行政が被災者のニーズを全て把握するのは無理で、住民と行政をつなぐ中間支援組織が大きな役割を果たした。これから熊本でも被災者支援や復興のポイントになると思う」
-行政が留意すべき点は何でしょう。
震災はだれもが未経験。まずは被災経験のある自治体からの応援や提案を積極的に受け入れることではないか。新潟の場合、仮設住宅の運営にしても、県がコミュニティー重視の方針を早期に示した。それは、兵庫県職員の提案があったからだ。東日本大震災もそうだが、復興の先進地は、被災地の経験やノウハウ、人材をうまく取り入れている」
-新潟での再生のポイントは。
「県が創設した、3千億円規模の復興基金が大きかった。国の支援メニューは金額が大きい半面、使途の制約も多い。基金は、財団をつくって運用益を活用する方式のため、公金を充てにくい分野にも対応することができた。中間支援組織の運営や、神社の再建など多様な事業に使われ、復興の“バネ”となった」
「インフラなど、復興における国の支援は不可欠だが、イニシアチブをとるべきは住民に近い自治体だ。被災地の置かれた状況や課題は地域で異なる。政策をオーダーメードでつくるぐらいの気概が必要だ」
-東日本大震災では国が復興を主導した感があります。
「特別法や復興庁ができたが、実情をみると、上からのメニューに付き合わされ、必ずしも住民のニーズと一致しない施設ができたりしている。震災は、過疎といった、それまで地域が抱えていた課題を顕在化させる。最終的には住民が主体となり、本気を出さなければ、復旧から先の復興は無理だ」
「熊本で復興といっても、まだ響かないかもしれないが、一歩先を見据えて考えることも大切。長岡に来て『必ず復興できる』ということを実感してほしい。新潟も熊本の人たちに支えてもらった。熊本には復興のための人材、力ともに間違いなくある」
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