【この人に聞く・熊本地震⑰】熊本市男女共同参画センターはあもにい館長の藤井宥貴子さん 避難所の女性への配慮は? 「点検重ね生活環境改善」
![◇<b>ふじい・ゆきこ</b> 熊本市の私立幼稚園教諭、育児サークル主宰、育児情報誌の発行、編集・プランニング会社設立を経て、2012年、同社が熊本市男女共同参画センターの指定管理者の1社となったことに伴い現職。同市在住。52歳。](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-01/IP160618TAN000047000_02.jpg?itok=pVh_mZZx)
熊本市男女共同参画センターはあもにい(同市中央区)は地震後間もなく、避難所での性暴力防止を訴えるチラシを手作りして配布し、女性や子育て家庭に配慮した避難所の環境整備活動を続けている。館長の藤井宥貴子さん(52)に課題などを聞いた。(荒川直子)
-性暴力防止のチラシの制作と配布の経緯は。
「はあもにいは当初、指定避難所ではなく、4月14日夜は応急的に地域の方々十数人を受け入れた。以後の運営などを考えて翌日を迎えたら、県外の男女共同参画センター関係者や防災に詳しい女性たちから支援申し出のメールや電話が多数届いた。その中に、『避難所の性暴力被害防止をすぐに』という助言があった。東日本大震災時の被害者のカウンセリングを今も続けているという東北の方からだった。『熊本では1件も被害を出さない』という気持ちでスタッフと動いた」
-チラシには阪神・淡路大震災や東日本大震災での被害事例が載っています。避難者の受け止めや効果は。
「受け取った女性たちからは『気を付けよう』という声を聞いた。一方、『この避難所で起きるわけがない』『不安をあおるな』という声もあった。掲示もお願いしたが、女性トイレだけに張り、男性の目に触れない所もあった。『男性にも避難所の居づらさはある』という抗議の電話も受けた。丁寧に説明したが、性別で分けられない人たちへの配慮も含め、対応の大事さに気付かされた」
-東日本大震災などの教訓に基づいて内閣府が定めた防災・復興の取組指針によると、男女共同参画担当部局や男女共同参画センターには、予防から復興までの各段階に重要な役割があります。
「地震前は、指定管理者なので市の担当課の指示や許可を待って避難所運営を補助するという程度の認識だった。しかし、実際に地震が起きると待つ時間はなかった。女性相談を行う他の公的機関にもデータを共有してもらいチラシは配布できたが、指定管理者の難しさを感じた。災害時の自主性、役割や連携をどうするか。課題が浮かび上がった」
-避難所の女性や母子への配慮を点検したり、意見箱を置き避難者の声を聞いたりする活動を続けています。
「4月下旬に始め、5月の連休明けに避難所が集約されて以降は市内の拠点避難所を3周した。更衣室や授乳室の設置など避難所の生活環境は時間を追うごとに整備され、多くの避難所で女性の管理者も配置された」
-今後の方向は。
「女性のニーズに沿った支援物資を送ってもらうなど、全国の男女共同参画センターや研究者、女性市民団体のネットワークに支えられた。今後は県内の他のセンターなどと連携し、避難所生活が長期化する女性の自立支援、女性目線の防災リーダー養成などに取り組みたい」
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本地震-
熊本地震で被災の馬具櫓と石門周辺、石垣復旧案を承認 熊本城修復検討委
熊本日日新聞 -
大津町の国重文「江藤家住宅」、被災からの復旧工事が終了 落成式に町民ら100人出席
熊本日日新聞 -
消防団詰め所、全て復旧 南阿蘇村乙ケ瀬区の建て替え工事完了
熊本日日新聞 -
被災した古墳の復旧課題知って 熊本県教委など山鹿市で市民講座 来年3月まで前10回
熊本日日新聞 -
熊本城の復興願う音色響く 熊本県内7高の吹奏楽部員ら、熊本市の新市街でチャリティーコンサート
熊本日日新聞 -
国重文の熊本城・平櫓、石垣復旧工事始まる 高さ19メートル、加藤時代に築造
熊本日日新聞 -
熊本競輪場再建、新400メートルバンクや防災機能も 地域住民ら招き内覧会
熊本日日新聞 -
日本大腸肛門病学会 県に500万円寄付金 災害からの復旧復興に活用を
熊本日日新聞 -
能登の復興遅れ…被災者ら疲労濃く 地震から5カ月、信濃毎日に出向中の熊日記者ルポ
熊本日日新聞 -
住民70人、たすきつなぐ 西原村で12時間リレーマラソン
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
「すべての道は熊本に通じる」とは、蒲島郁夫前知事が熊本県内の道路整備に向けた意気込みを語る際に使ってきたフレーズ。地域高規格道路などの骨格的な道路や鉄道網は、地域・産業の活性化はもちろん大規模災害時の重要性も注目されています。連載企画「移動の足を考える」では、熊本県内の〝足〟の現在の姿を紹介し、未来の形を考えます。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を目指す記者と一緒に楽しく学んでいきましょう。
※次回は「相続・贈与は難しい」前編。7月12日(金)に更新予定です。