【あの時何が 被災地障害者センター編⑨】支援活動の中軸担った「九州の仲間」
熊本地震で被災した障害者向けの「SOSちらし」が2016年7月以降、熊本市で暮らす障害者手帳の所持者に届き始めると、被災地障害者センターくまもとへの支援要請は爆発的に増えた。「破損した屋根のブルーシート張り」「大量のごみやがれきの処分」のほか、障害者だけでは難しい行政手続きや住まい探しなどを求める声が相次いだ。
「障害者への災害支援は、既存の福祉サービスでは不十分。枠に縛られない無償の支援に頼らざるを得ない」と事務局長の東俊裕(65)。行政に届く生活再建に関する要請も、障害者センターが対応した。
そのマンパワーを支えたのが連携する日本障害フォーラム(JDF)だ。04年に障害者の権利を保障する法整備や施策の推進を訴え、国内の主な障害者団体で結成。東日本大震災の被災地でも、障害者支援で力を発揮した実績があった。
常務理事の赤松英知(52)は福岡県田川市の障害者作業所に勤務し、作業所のネットワーク「きょうされん」の全国理事、篠原憲一(46)=熊本市=らとは旧知の仲だ。16年4月26日、JDF熊本支援センターを設置した赤松が、実動の中軸として期待したのが「九州の仲間」だった。
地元で駆け回る篠原らに代わり、きょうされん長崎支部事務局長の牛嶌輝彦(52)が、県内外からのボランティアを支援活動に結び付ける役割を担った。当初は益城町や西原村の障害者施設の支援に動き、5月の大型連休明けからJDFとして支援活動の調整に乗りだした。障害者福祉に詳しいボランティアを熊本市や益城町での戸別訪問に投入し、7月から障害者センターの支援活動を本格的にバックアップ。牛嶌は「東北での経験」を生かし、多くのマンパワーを的確な支援につなげた。
牛嶌は、きょうされん福島支援特別チームとして今も福島県などの被災地を定期的に訪れている。「時間の経過ごとに浮かび上がってくる課題や困り事、必要な支援の道筋などの見当が付いたことが、熊本での調整に役立った」
一方で、熊本の現状には厳しい見方もしている。「意外に社会資源が少ない」「どんな福祉サービスを受けられるか知らない人が多い」「精神障害がある人の居場所や行き場所が限られる」…。戸別訪問に当たった仲間から聞いた実態を踏まえ、牛嶌は顕在化した日常の課題にも目を向け、生活の建て直しにつながる支援策を考えていったという。
全国のボランティア延べ500人以上が協力したJDF熊本支援センターの活動は、17年3月末に終結した。その後も九州のメンバーは支援にかかわり続け、牛嶌は月1回ほど熊本の仮設住宅などを訪れる。「避難所に最後まで残り、今は仮設で1人暮らしをしている人もいる。そんな人たちは知った顔を見ると安心してくれるから」=文中敬称略(小多崇)
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