どのくらい地下水を採取するの? 工場排水や水のリサイクルは?? 経済記者がイチから解説「もっとよく分かる」TSMC⑤

熊本日日新聞 | 2023年2月6日 09:39

地下水涵養のために水を張った転作田=2017年、大津町(白川中流域土地改良区協議会提供)

 台湾積体電路製造(TSMC)が菊陽町に建設中の半導体工場について、熊本県民の関心が特に高いのが「水」です。半導体は製造過程で大量の水を使うからです。熊本が誇る豊富な地下水が工場誘致の呼び水になった面もありますが、水資源が減少する懸念はないのでしょうか。

■地下水採取量、熊本市など11市町村の3%弱

 半導体はシリコンウエハーに付着した化学物質などを洗浄する工程で大量の「純水」を使います。TSMCの新工場を建設・運営する子会社JASM(熊本市)が公表した資料によると、新工場は1日1万2千立方メートルの地下水を採取する計画です。これは熊本市と周辺の計11市町村の採取量の3%弱に相当します。

 11市町村は県地下水保全条例で地下水の水位が低下している「重点地域」に指定され、菊陽町も含まれます。同地域では、くみ出し口の断面積が19平方センチを超えるポンプで地下水を採取するには知事の許可が必要です。現在は井戸を掘削しどのくらいの地下水をくみ上げられるのか試験をしている申請前の段階です。県環境立県推進課は「試験中の井戸では取水による水位低下はあまり見られない」としています。

 台湾では近年、水不足が深刻になっていることもあり、TSMCは水のリサイクルに力を入れています。昨年4月にJASMが菊陽町と立地協定を結んだ際は、工場で使用する水の70%以上をリサイクルするとしていましたが、10月に西村康稔経済産業相が建設現場を視察に訪れた際の資料では75%以上に「上方修正」しました。

■お手本はソニーグループ ますます水が必要に?

 地下水の涵養(かんよう)にも力を入れる方針です。お手本とするのはJASMに出資するソニーグループの取り組みです。大津、菊陽両町を中心とした白川中流域の農家に協力金を払って作付け前後の農地に水を張ってもらい、地下に水を浸透させます。JASMは年間に採取する地下水と同等以上の量を涵養するとしています。

 ソニーは2003年度に田んぼに水を張る湛水事業を開始。その後、KMバイオロジクス(熊本市)なども加わり、白川中流域の湛水面積は04年度の186ヘクタールから13年度は416ヘクタールに拡大しました。ただ農家数の減少もあり21年度は362ヘクタールでした。県環境立県推進課は「5~10月としている水張り期間の延長や協力農家の拡大を検討中」としています。

 県内では今後も半導体関連企業の立地が相次ぐ見通しです。ソニーは合志市に画像センサーの新工場建設を検討しており、TSMCも「日本第2工場」の菊陽町建設について「いかなる可能性も排除しない」としています。ますます水が必要になる可能性があります。

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