どのくらい地下水を採取するの? 工場排水や水のリサイクルは?? 経済記者がイチから解説「もっとよく分かる」TSMC⑤
台湾積体電路製造(TSMC)が菊陽町に建設中の半導体工場について、熊本県民の関心が特に高いのが「水」です。半導体は製造過程で大量の水を使うからです。熊本が誇る豊富な地下水が工場誘致の呼び水になった面もありますが、水資源が減少する懸念はないのでしょうか。
■地下水採取量、熊本市など11市町村の3%弱
半導体はシリコンウエハーに付着した化学物質などを洗浄する工程で大量の「純水」を使います。TSMCの新工場を建設・運営する子会社JASM(熊本市)が公表した資料によると、新工場は1日1万2千立方メートルの地下水を採取する計画です。これは熊本市と周辺の計11市町村の採取量の3%弱に相当します。
11市町村は県地下水保全条例で地下水の水位が低下している「重点地域」に指定され、菊陽町も含まれます。同地域では、くみ出し口の断面積が19平方センチを超えるポンプで地下水を採取するには知事の許可が必要です。現在は井戸を掘削しどのくらいの地下水をくみ上げられるのか試験をしている申請前の段階です。県環境立県推進課は「試験中の井戸では取水による水位低下はあまり見られない」としています。
台湾では近年、水不足が深刻になっていることもあり、TSMCは水のリサイクルに力を入れています。昨年4月にJASMが菊陽町と立地協定を結んだ際は、工場で使用する水の70%以上をリサイクルするとしていましたが、10月に西村康稔経済産業相が建設現場を視察に訪れた際の資料では75%以上に「上方修正」しました。
■お手本はソニーグループ ますます水が必要に?
地下水の涵養(かんよう)にも力を入れる方針です。お手本とするのはJASMに出資するソニーグループの取り組みです。大津、菊陽両町を中心とした白川中流域の農家に協力金を払って作付け前後の農地に水を張ってもらい、地下に水を浸透させます。JASMは年間に採取する地下水と同等以上の量を涵養するとしています。
ソニーは2003年度に田んぼに水を張る湛水事業を開始。その後、KMバイオロジクス(熊本市)なども加わり、白川中流域の湛水面積は04年度の186ヘクタールから13年度は416ヘクタールに拡大しました。ただ農家数の減少もあり21年度は362ヘクタールでした。県環境立県推進課は「5~10月としている水張り期間の延長や協力農家の拡大を検討中」としています。
県内では今後も半導体関連企業の立地が相次ぐ見通しです。ソニーは合志市に画像センサーの新工場建設を検討しており、TSMCも「日本第2工場」の菊陽町建設について「いかなる可能性も排除しない」としています。ますます水が必要になる可能性があります。
残り 479字(全文 1603字)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本の経済ニュース-
熊本トヨタ自動車、子ども食堂に棚田米200キロ贈る
熊本日日新聞 -
熊本銀行が金融セミナー 25年3月に県民交流館パレアで J-FLECと協力
熊本日日新聞 -
2025年1月の野菜価格は前月を下回る見通し 九州農政局
熊本日日新聞 -
TSMC工場の稼働前後の水質比較、熊本県が独自調査へ 1月から実施 工場周辺の井戸や河川
熊本日日新聞 -
和紅茶の出来、素晴らティー 英国品評会で今年も受賞 水俣市と芦北町の生産者
熊本日日新聞 -
九州農政局長に熊本県出身の緒方氏が就任へ
熊本日日新聞 -
TSMC熊本第1工場が量産開始 「安定した先端半導体の生産拠点に」
熊本日日新聞 -
11月の熊本県内求人倍率、1・24倍 6カ月ぶりに下落
熊本日日新聞 -
【とぴっく・長洲町】充電式チェーンソーを寄贈
熊本日日新聞 -
【速報】TSMCの熊本第1工場が量産開始
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学びましょう。
※この連載企画の更新は終了しました。1年間のご愛読、ありがとうございました。エフエム熊本のラジオ版「聴いて得する!お金の話『まね得』」は、引き続き放送中です。