75歳以上の免許返納率、熊本は九州最下位 上位は首都圏ずらり、にじむ地域差 何歳で返納? 家族に促され「ふざくんな」も

熊本日日新聞 | 2022年9月21日 07:09

寺原自動車学校で高齢者講習を受ける男性(右)。指導員から安全運転のアドバイスを受けていた=熊本市中央区

 75歳以上の後期高齢者ドライバーの免許返納率について、熊日の「SNSこちら編集局」(S編)が警察庁の運転免許統計を基に独自集計したところ、熊本県は2021年、九州・沖縄で最下位の全国41位だったことが分かった。熊本の返納率3・71%は、トップの東京の7・14%を3ポイント余り下回っていた。

 警察庁による集計は16年が最後のため、その際に使われた計算方法に従って21年の75歳以上の自主返納件数と、20年末時点の75歳以上の免許保有者数を比較。都道府県ごとの返納率を算出した。

 20年末時点の熊本県の75歳以上の免許保有者は10万4374人。これに対し、21年の75歳以上の自主返納件数は3868件だった。

 返納率の上位は東京、神奈川、埼玉と首都圏が占めた。九州・沖縄のトップは沖縄の5・06%。一方、下位には長野や和歌山が並び、最下位は徳島の3・36%だった。

 熊本県警運転免許課は「公共交通が充実している都市部だと返納を決断しやすく、地方と差が生じているのではないか。ただ、九州の中で返納率が低い理由の分析は難しい」とした。

 自主返納は高齢者による交通事故のニュースにも影響されるとみられる。

 熊本県内の全年代の自主返納件数は19年に過去最多の7133件を記録。この年の4月に東京・池袋で、当時87歳の男が運転する乗用車が暴走し、母子2人が死亡する事故が発生した影響がうかがえる。

 その後は20年、21年と減少に転じており、全国的にも同じ傾向だ。県警は「20年以降はコロナ禍で高齢者は外出を控えたため、特に返納を急ぐことはなかったのでは」と推測。「返納を後押しするには自治体などが設ける返納者への特典周知なども大切だ」とした。

 熊本県内の免許保有者は14年の119万9395人をピークに減少が続く。一方で75歳以上の免許人口は年々増加しており、21年末時点で10万7583人と10年前の1・42倍に。免許保有者のほぼ10人に1人が75歳以上だ。(立石真一)

■荷物持ってバス「乗る気にならない」/免許更新「これが最後」

 免許返納するならいつ? S編取材班が、75歳以上の免許更新に必要な高齢者講習の参加者に話を聞くと、返納をためらう高齢者ドライバーの本音が見えてきた。

 「イラストを覚えてください。何個もありますよ」

 熊本市中央区の寺原自動車学校。高齢者講習参加者は、日付を答えたり、絵を記憶したりする認知機能検査を終えた後、講義や実車講習を受ける。取材した日には、90歳を超える参加者の姿もあった。

 夫婦2人暮らしの熊本市中央区の主婦(78)は80歳で返納予定という。ただ、夫が先に免許を返納したため、通院などで運転ができるのは妻だけ。「車が凶器になるかもしれないという不安と運転できなくなる不安、両方ある」と口にした。

 ゴールド免許所持者の同区のアルバイト男性(74)は「正直まだ返納を考えたことはない。周りに気遣いができなくなったら運転しちゃいけない」と自戒を込めた。

 熊本市東区の元団体職員の男性(77)は家族から返納を促され、「つい、ふざくんなと言ってしまった」と明かした。重い荷物を持ってバスなどに乗る気にはなれず、「85歳くらいになったら返納を考えるかな」。

 妻が入所している施設に行くのに車が欠かせないという同区の元会社員の男性(78)。それでも「免許更新はこれが最後と思っている。買い物は宅配とかで何とかなる」と話した。

 時間貸駐車場大手の「パーク24」(東京)が今年2月、全国の会員に実施したアンケート(6940人が回答)によると、60代以上の約3割が自身の免許返納を「考えたことがある」と答えた。そのきっかけを複数回答で尋ねたところ「操作ミスによる交通事故のニュースを見た」が圧倒的多数だった。

 寺原自動車学校の高齢者講習担当、紫垣英隆指導員(70)によると、70代でヒヤリとする運転をする人もいれば、80代で好成績の人もいるという。「一概に年齢だけでは計れない」と紫垣さん。その上で「更新は自分の運転を見つめ直す機会。返納についても考えるきっかけにしてみては」とアドバイスした。(立石真一)

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