新規感染2千~4千人 コロナ第7波の体験談 遠い医療、逼迫する保健所 熊本県内で何が

熊本日日新聞 | 2022年7月31日 08:30

 新型コロナ感染「第7波」が全国で猛威を振るっている。60歳未満が重症化する割合は低いが、感染者数が多いため医療機関や保健所業務は逼迫[ひっぱく]。「SNSこちら編集局」(S編)で体験を募集したところ「100回電話しても病院につながらなかった」「ホテル療養できたのは症状のピークを過ぎてからだった」などの声が寄せられた。熊本県内で今、何が起きているのか。(立石真一、岡本遼、太路秀紀)

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 熊本市の自営業の女性(49)宅では7月19日、高校1年の息子の新型コロナウイルス感染が判明した。家族4人暮らし。女性自身も3日後の22日、喉の痛みや体のだるさに加え、39度近い熱が出た。感染は間違いないと思ったが、病院には行かず、市販の解熱薬を飲んで自己判断で自宅療養を選んだ。

 女性は数字に反映されない〝感染者〟とみられるが「保健所は対応に追われて大変だと思うし、私のようにあえて診断を受けない人もいるのではないか」。10日間の自主療養期間も折り返しを過ぎ、体調も回復してきた。「最後まで家でじっとしている自信がない。外出しちゃうかも」

 7月に入って熊本県内の一日当たりの新規感染者数は急増した。5日以降は連日千人を超え、20日以降は2千~4千人台を記録している。

熊日のオンライン取材に、発症からホテル療養に移るまでの体験や心境を語る熊本市の女性会社員(55)

 ■ピーク過ぎて療養

 16日に発症した熊本市の女性会社員(55)は発症直後、37~39度で乱高下する熱に苦しんだ。基礎疾患がある同居家族への感染を防ぐためにホテル療養を希望したが、保健所から連絡がきたのは19日の昼過ぎ。ホテル療養に移れたのは発症から6日経過した後の22日で、症状のピークを過ぎてからだった。

 自宅療養を余儀なくされた間も感染対策を工夫し、家庭内感染は防いだ。「私の場合は症状が強い時に家族の助けがあったが、1人暮らしの人は病院やホテルのサポートがないと相当きついと思った」と話した。

 ■電話100回つながらず

 19日に陽性となった熊本市の女性会社員(45)は、18日の午後6時ごろから39度を超える熱が出たため、新型コロナの相談を受け付けるコールセンターに電話した。しかし「かけ直してください」の案内が繰り返し流れるばかり。100回近くかけ、ようやく担当者と話ができたという。

 19日に受診可能な病院を3カ所紹介されたが、それらの病院も100回ほど電話してもつながらず。結局、最寄りの病院を自分で探して予約した。

 駐車場に到着したら再度電話するように指示を受け、予定の時間に電話したが、そこでも30分ほどつながらず、車内で待つことに。周りにも同じように車内で待つ人たちが数多く見られたという。女性は「対応が大変なのは重々承知しているが、喉が痛くて体調が悪い時に主な連絡手段が電話というのが一層つらかった」と嘆いた。

 ■リスクも子どもの世話が

 3人の子どもがいる熊本市の自営業の女性(39)は20日から丸2日間、39度を超える熱に苦しんだ。22日には小学生の長男と長女も40度近くまで熱が上がり、自宅で一緒に寝込んでいたが、3歳の次女は影響を受けず、一人で元気に家の中を遊び回っていたという。

 夫は仕事で出張中。家庭内感染を防ぐため現地にとどまってもらう事も考えたが、リスクを取って帰宅してもらった。「家族全員が感染するのは避けたいけれど、小さい子どもがいると、どうしても世話が必要になる」とした。

 ■車中で2時間待機

 合志市の女性介護職員(56)は身近に感染者が出たため24時間後に職場にあった抗原検査キットで検査をするも、当初は陰性だった。しかし、体調に異変を感じて翌15日に改めて抗原検査をすると、今度は陽性判定が出た。

 全身のだるさから39度近い高熱が出たが、ちょうど3連休に。保健所に連絡するもつながらず「どこに連絡すればいいのか調べることすらしんどかった。事前に把握しておけばよかった」と振り返った。

 連休明けに医療機関を受診したが「車の中で2時間以上待った。冷や汗とせきが出て、この時が最もつらかった」。介護現場は慢性的な人手不足だが、療養期間だけでは体調が万全に戻らなかったため、当初の予定よりも長く休むことを選んだという。

 最も気を使ったのは同居する80歳の母親の存在だった。10日間の自宅療養中は同じ部屋では過ごさないようにして、家庭内感染は防ぐことができた。

感染者の急増を受け、保健所の対応方針の変更を伝える熊本市のホームページ

 一方、医療機関や保健所の業務も逼迫[ひっぱく]している。

 ■キット不足で検査絞る

 県南のクリニックに勤める女性医師(50)は、20日ごろからPCR検査キットが入手しにくくなり、検査を絞らざるを得ない状態に陥っている窮状を訴える。

 7月初めに比べて入荷が数分の一に。そのため、検査は陽性の可能性が高い患者限定にしており、4割ほどだった陽性率は8割近くまで上昇した。医師の検査のみで診断する「みなし陽性」もあるが、保健所から運用は限定的にするよう求められているという。「希望するすべての患者さんに検査したいけれど、仕方がない」

 クリニックのスタッフは10人弱。発熱の相談など朝から電話が鳴りっぱなしで受付係だけでは足りず、看護師も交代で電話対応に追われる。スタッフの増員も検討中で「終わりが見えないのがつらい」と明かす。

 ■業務手当て対象外でも

 県南の病院で調理師を務める男性(50)は、職場で濃厚接触者の自宅待機が相次ぎ「平均年齢が高い限られた職員でぎりぎりシフトを回している」という嘆きの声を寄せた。

 医師や看護師に支給されるコロナに関する業務手当ては対象外だという。「医師や看護師ばかりがクローズアップされがちだけど、入院患者に年中無休で3食提供する厨房の現状も知ってほしい。休業できる部署ではない」と話す。

 ■中核病院こそ疲弊

 「開業医以上に各地の中核病院が大変だ」と訴えるのは、県内の中核病院に勤める男性医師(46)だ。症状が深刻なコロナ患者ばかりを受け入れなければならず、人手不足と医療スタッフの疲弊が顕著だという。「コロナ対応は日本の医療界全体で見ると特定の医療機関に負担が偏っているのが現実だ」と説明する。

 男性医師は、中核病院の病床を減らし、内科よりも他の診療科を優遇してきた国の方針に問題があったと指摘する。「小手先の対応ではなく医療全体に対する方針を再検討しないと何度でも同じような問題が起きる恐れがある」と述べた。

 ■帰宅は午前2時

 熊本市の男性会社員(61)は、県内の保健所で働く次女(30)の健康を心配する。帰宅は連日、午前2~3時になるという。

 次女は本来は別の部署だが、業務が逼迫したため応援に入っている。陽性者と連絡を取る担当だが、感染第7波で感染者が急増。夜10時ごろまで続けても回らず翌日に。翌日はさらに仕事が増えるという悪循環に。「保健所でも一部の職員に業務が集中しているという。何とか平準化できないものだろうか」と口にした。

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