被災地の母子、支えたい 助産師の浦崎さん(熊本市)人吉・芦北で活動 母乳ケア、育児相談も

熊本日日新聞 | 2021年04月20日 16:00

「ひとよし母子支援ステーション」で助産師の浦崎貞子さん(右)に母乳のケアを受けた母親ら=3月下旬、人吉市
再建した助産院のシンボル、レモンのステンドグラス前に座る浦崎貞子さん。「子育ては甘いだけじゃない」という意味を込めた=熊本市東区

 熊本市東区の助産師、浦崎貞子さん(74)は、昨年7月の豪雨直後から、人吉市土手町の蓬莱[ほうらい]保育園に設置した「ひとよし母子支援ステーション」を拠点に、助産師ら5人と乳房マッサージなどで被災母子のケアに取り組んでいる。

 「肩の力を抜いて、赤ちゃんとぴったりくっついてね」。3月下旬、母子支援ステーション開所日。浦崎さんは、生後2カ月の長女を連れた深松伊織さん(28)=あさぎり町職員=に授乳のこつを優しくアドバイスした。

 約1時間半後、すっきりした表情になった深松さん。「子どもと2人だけの時間が長いので、リラックスできた」と笑顔で帰宅した。浦崎さんは月2回、ここで授乳指導やベビーマッサージを行い、育児相談にも応じている。

 「桶谷[おけたに]式」と呼ばれる乳房マッサージの第一人者だ。これまでケアした母親は1万人を超える。浦崎さんの自宅兼助産院は、2016年の熊本地震で大規模半壊した。この時、避難先の近くの小学校で、乳腺炎になりかけた母親を見つけたことが被災地でのケアの始まりだった。

 地震の避難生活では、栄養の偏りや地震への恐怖から、多くの母親が落ち着いて授乳できなくなった。母親の動揺を子どもも敏感に感じ取るため、母乳トラブルが発生。SNSで呼び掛けると、「母乳がつまった」「子どもが母乳を飲んでくれない」との相談が数多く寄せられた。

 「災害後は母乳トラブルが増えるが、子どもの泣き声などを気にして避難所から離れてしまう。困っている母親は地域にいるけれど見えにくい」と浦崎さん。知人宅を借り、約1年間ボランティアでケアを続けた。

 豪雨後もすぐに人吉市に駆け付けた。母子支援ステーションを訪れる母親は、「みんな疲れきっていた」と言う。生後間もない赤ちゃんを抱えて避難したシングルマザーは温かい食事を取れず、母乳も止まりかけていた。「濁流のような音が聞こえ、夜中に目が覚めてしまう。でも誰にも言えなかった」。そう訴える母親もいた。

 「怖かったね」。気持ちを受け止め、マッサージで母乳が出るようになると、母子ともに安心した表情になる。「そんな変化がうれしい」と言う。人吉市でケアに当たった母親は延べ300人以上。昨年10月までは県助産師会などと共同で週2回通い、8~12月は芦北町でも活動した。

 地震の翌年、助産院を新築した。「日常を一瞬にして奪われる恐怖や無念さを味わった。だからこそ、役に立てる限りは被災地に足を運ぶ」。表情に固い決意をにじませた。(清島理紗)

 浦崎さんTEL090(4993)7354。感染症予防のため予約制。

記事アクセスランキング

  1. ${ranking.title}

※アクセス数(24時間以内)を元に集計

フォローする

  • facebook
  • twitter
  • LINE
  • youtube
  • note