一人でも多く、学び支えて 「あしなが奨学金」物価高、全額給付で資金不足 学生ら19日から街頭募金
親を亡くしたり、親に障害があったりする子どもの学びを支える「あしなが奨学金」。近年は物価高の影響や全額給付への変更で申請者が増え、資金不足から支給を受けられない人の割合が高くなっている。大学進学後に奨学金を受けるようになった熊本県立大3年の谷岡奈央さん(22)=熊本市東区=は「一人でも多く、必要としている人に届いてほしい」と19日に始まる募金活動に参加する。
京都府京丹後市出身で、高校2年への進級を控えた2019年3月、父が病気で倒れた。記憶障害などの後遺症で休職を余儀なくされた父に代わり、同居していた姉と妹を含めた家族5人の生活を支えるのは、主に母の収入だった。
谷岡さんの日常も一変した。午前5時半に起き、家族全員分の洗濯や朝食の用意といった家事を引き受けた。修学旅行や模試に必要な費用を工面しようと、放課後はアルバイトを掛け持ちして働いた。「頼れる人がいないのがしんどかった」と当時の心境を打ち明ける。
奨学金を運営する「あしなが育英会」(東京)によると、近年は特に月3万円を支給する高校生向けの奨学金の不採用率が高くなっている。24年度は全国で3487人が申請し、支給対象となったのは1538人。県内では77人の申請に対し、採用されたのは36人。採用率は46・8%にとどまった。
要因の一つに、一部貸与だった高校生向けの奨学金を全額給付とした23年度からの制度変更がある。返還不要とすることで負担をなくし、大学進学を目指してほしいとの狙いからだが、申請者の増加に比べ、募金活動などを通じて集める資金が追いついていない。
奨学生の家庭には、最近の物価高の影響も重くのしかかっている。高校生や大学生らの保護者を対象に、育英会が7月に実施したアンケートでは、94・2%が「収入が物価上昇分をカバーできない」と答え、食費や光熱水費などを削って生活する苦しい生活実態が明らかになった。
あしなが奨学金を知ったのは大学に進学してからという谷岡さん。「もっと早く知りたかった」という思いもあるが、奨学金を受けられたことで大学生活の助けになっているという。
大学生の奨学生らでつくる「あしなが学生募金事務局」は、毎年4月と10月に街頭で募金を呼びかける。谷岡さんは事務局の九州エリアマネジャーを務めており、「奨学生の高校生から『谷岡さんが頑張っているから私も頑張ろうと思えた』と言ってもらうこともあり、やりがいになっている」と力を込める。
募金活動は19、20、26、27日の正午から午後6時、熊本市中央区の鶴屋百貨店前と辛島町電停前で。(横川千夏)
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