八代港で「白タク」横行 違法タクシー立証難しく 訪日客増で移動手段の充実が課題
八代市の八代港周辺で、外国人運転手による違法タクシー「白タク」の運行が横行している。訪日客の増加で〝需要〟も急増。熊本県警は取り締まりを強めるが、違反者の摘発に至るケースは少ない。港から目的地への移動手段が乏しいことも一因になっている。
5日朝、新港町のくまモンポート八代に中国・上海発着のクルーズ船が寄港し、数千人の観光客が降り立った。バスや正規のタクシーに乗り込む人が大半だったが、一部は、港の駐車場や周辺の道路脇で待機する白色の県外ナンバーを付けたミニバンに乗って市街地方面へ向かった。
市と熊本運輸支局によると、八代港では昨春に国際クルーズ船の寄港が本格化し、白タクも目立ってきた。今年7月の調査で、1日に100台近くを確認。訪日客が外国語の配車アプリで予約し、港からホテルへの移動や観光地を周遊する際に利用しているとみられる。
最近は熊本市のJR上熊本駅や熊本電鉄北熊本駅でも、白タクとみられる車両が複数台目撃されている。ただ、県警によると、道路運送法違反(白タク行為)の摘発事例は過去3年間で1件もない。利用者は来日前にアプリ内で決済するため、違法性の鍵になる金銭の授受を確かめにくい。さらに運転手から「家族を無償で乗せた」と言われれば、白タク行為の立証は難しいという。
白タクは安全面の懸念や、事故でけがをした際に補償を受けられない恐れがある。5日、県警と九州運輸局は違反を抑止しようと、くまモンポート八代で中国語や英語の啓発チラシを配った。周辺の道路には疑わしい車両が複数いたが、職員の一人は「運転手に声をかけたが、『自分は違う。友人の送迎』と言って去った」とこぼした。
白タク行為が横行する背景には、個人旅行客の増加もある。市によると、市内のタクシーは全8社で計213台あるが、くまモンポートでは1時間以上タクシーを待つケースもある。
タクシー不足の解消に向け、10月から道路運送法の特例に基づく八代地域外事業者のタクシー営業が始まった。市港湾クルーズ課は「白タクは容認できない。需要に応えられるよう、今後は市外のタクシー会社にも協力を呼びかける」とした。
県タクシー協会の小山剛司会長(59)は「日本のタクシーのサービス水準は海外よりも高い。運転手を確保し、安心して利用してもらえる環境を整える」と説明。タクシー会社が実施主体となり、一般ドライバーが有償で利用者を運ぶ「日本版ライドシェア」についても、「ライドシェア導入で需要を賄えれば、白タク防止にもつながるかもしれない」と話した。(上島諒)
◇白タク◇ 営業に必要な許可を受けずに自家用車(白色ナンバー)で営業している違法タクシー。道路運送法では有償で人を輸送する場合、国の許可が必要と規定。許可を受けたタクシーのナンバープレートは緑色。違反者は、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはその両方が課せられる。利用者の罰則はない。
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