自分の仕事が街をつくる。文系も活躍するヤマックス(熊本市)の若手に聞いた「社会貢献できるコンクリートの仕事」【新卒採用・熊本企業インサイト】

熊本日日新聞 2024年9月30日 10:30
自分の仕事が街をつくる。文系も活躍するヤマックス(熊本市)の若手に聞いた「社会貢献できるコンクリートの仕事」【新卒採用・熊本企業インサイト】

 毎日歩く道路や橋、街中のビルを思い浮かべてほしい。誰もが知るそんな場所に、自分が関わったモノが使われているとしたら―。「コンクリート二次製品」を製造する株式会社ヤマックス(熊本市中央区)の社員たちは、「社会の役に立っている実感が持てる仕事だ」と口をそろえる。社員の8割が文系出身で、「コンクリートのことは入社して学んだ」という人も多い。コンクリート二次製品とは、そしてヤマックスで叶う「社会貢献」とはどんなものなのか。営業と製造の現場で経験を積んだ若手社員を取材すると、チームワークを大切にする温かい社風も見えてきた。

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目次

暮らしのどこかに、コンクリート二次製品

設計営業として、工場の社員と打ち合わせをする野田さん(ヤマックス提供)
設計営業として、工場の社員と打ち合わせをする野田さん(ヤマックス提供)

「これはボックスカルバートという製品です。複数の部材を組み合わせると、箱型のトンネルのようになります。高速道路の下を一般道が通る立体交差などに使われています」

形もサイズも様々なコンクリートの部材が並ぶヤマックス長洲工場(熊本県長洲町)で、広域営業課(福岡常駐)主任の野田知宏さん(31)=熊本学園大学卒、2016年入社=がそう説明する。

野田さんの仕事は、道路や建物を設計する建設コンサルタントなどに自社の製品を提案する設計営業だ。「道路の縁石や側溝、ビルの外壁…。全国の土木や建築の現場で、当社の製品が使われています」と胸を張る。

コンクリートを使った工事は通常、現場で生コンクリートを型枠に流し込み、構造物にする。一方、二次製品は工場で造り、施工者へ納品する。現場では部材を組み立てるだけでよく、省力化や工期短縮につながるのがメリットだ。建設業界の人手不足もあり、需要は高まっている。

ヤマックス長洲工場のストックヤードに並ぶ「ボックスカルバート」。高速道路の下に一般道が交わる立体交差や、地下の排水路などに使われている。
ヤマックス長洲工場のストックヤードに並ぶ「ボックスカルバート」。高速道路の下に一般道が交わる立体交差や、地下の排水路などに使われている。

野田さんは福岡で勤務しながら、熊本の道路建設にも関わってきた。台湾積体電路製造(TSMC)の県内進出を受けて整備が加速する、熊本市~大津町間の高規格道路もその一つだ。一般道との立体交差に使うボックスカルバートなどを福岡の建設コンサルタントに提案し、数十億円規模の受注につなげた。

「道が完成すれば、渋滞解消や経済活性化に役立つはず。自分の仕事が形になり、地域が発展する姿をこの目で見られるのが一番のやりがいです」

道路の設計図面をにらみ、他社やほかの工法と比較しながら自社製品の提案を練る。設計部門と連携し、強度などに問題がないか検討する。設計営業は、建築の知識が必要な理系の仕事にも見える。文系大学生だった野田さんがヤマックスの門をたたいたのは、「人の役に立つ仕事がしたい」という思いがきっかけだった。

駅のホームをヤマックス製品で。設計営業の新人は知恵を絞った

「自分の仕事の成果が道路や橋になり、地域が発展する実感が持てる」とやりがいを語る野田さん。
「自分の仕事の成果が道路や橋になり、地域が発展する実感が持てる」とやりがいを語る野田さん。

「社会人になっても、誰かのために体を張れる人間でありたい」。高校時代、ラグビーに熱中した野田さんにはそんな志があった。人や社会に貢献できる仕事がしたいと、警察官を目指して熊本学園大学経済学部に進学した。

就職活動で地元企業にも目を向けたとき、ヤマックスを知った。頑丈なボディで社会基盤を支えるコンクリート二次製品が、体を張って仲間と前に進むラグビーの精神と重なる。「ここで自分の思いを叶えたい」。警察官の最終選考を辞退し、入社を決めた。

駆け出しは本社の設計課だった。製品や設計の基礎を2年間学び、2019年に設計営業を行う広域営業課へ異動する。設計課は、製品を現場に配置する設計図を作ったり、安全性を精査したりする部門だ。

難しい計算はコンピューターが行うため「文系出身の自分でも仕事を覚えられた」という。何より、困ったときは先輩たちが助けてくれた。「計算が得意な人、製品に詳しい人など、個性があるんです。聞きに行くとみんな丁寧に教えてくれた」と振り返る。

ヤマックスのボックスカルバートが使われている、福岡県のバイパス道路の立体交差(ヤマックス提供)
ヤマックスのボックスカルバートが使われている、福岡県のバイパス道路の立体交差(ヤマックス提供)

設計営業としてデビューしたころ、野田さんに大型案件が舞い込んでくる。始まりは、支社への1本の電話だった。

「駅のホームをコンクリートに造り替えたい。二次製品の提案をいただけますか?」

電話の主は鉄道会社だった。福岡市にあるその駅は海に近く、鉄骨製のホームの土台がさびてしまっていたという。さびないコンクリートに目を付けての依頼だったが、ヤマックスにとって前例のない案件だった。

野田さんはすぐに鉄道会社を訪れ、従来のホームの図面を見せてもらった。高さ1メートルほどの複数の鉄骨の柱がホームを支えている。下には空間があり、乗客が転落した際に逃げ込めるようになっている。

「小型のボックスカルバートを並べたらできるかも…」。既存製品を組み合わせるイメージが思い浮かび、会社に戻って技術部門に伝えた。想定している使い方が可能か、構造の強度に問題はないかなど、相談しながら詳細を詰めていく。

大型のボックスカルバートの部材。複数の部材を組み合わせ、車も通るトンネルになる。
大型のボックスカルバートの部材。複数の部材を組み合わせ、車も通るトンネルになる。

「これならいける」。1週間ほどで図面が完成し、鉄道会社へ提案した。結果は成功。短期間で完成することや、転落時の退避スペースがある安全性が評価された。

「納品まで時間がない中、工場や設計など全社の協力があって進められた。無事に完成し、たくさんの乗客がホームに降り立つのを見たときは胸が熱くなりました」。野田さんの言葉に力がこもる。

入社9年目を迎え、提案力を磨く情報収集にも余念がない。土木に関する最新の法改正をチェックし、取引先に情報提供することもある。

「努力した分だけお客様が評価してくれて、次の仕事につながる。どうやったら要望を叶えられるか全力で考える原点を、これからも大切にしたい」と意気込みを語る。

「育ててくれる人がいる」。生物専攻の青年は鉄筋加工の現場で知った

ヤマックス本社の生産統括本部で働く馬締竜平さん。キャリアの原点は、松橋工場の鉄筋加工現場だった。
ヤマックス本社の生産統括本部で働く馬締竜平さん。キャリアの原点は、松橋工場の鉄筋加工現場だった。

「工場には助けてくれる人、育ててくれる人、自分に期待してくれる人がいた。仕事で大変なとき、その人たちの顔が目に浮かぶんです。あの人たちのためにもう一歩頑張ろうって」

本社生産統括本部の馬締竜平さん(27)=熊本大大学院卒、2022年入社=は目を細める。柔らかい物腰と、にこやかな語り口が人懐っこい。生産統括本部は、熊本県内外に8か所ある工場を管理する司令塔だ。2024年4月に異動したばかりの馬締さんは、生産状況の資料作成や業務改善策の検討などに関わっている。

学生時代の専攻は生物学で、ものづくりに関しては素人だった。キャリアの原点は、入社以来2年間在籍した松橋工場(熊本県宇城市)での経験だ。

コンクリートの中に仕込む鉄筋の加工に携わった。太さ1~2センチ、長さ5メートル以上の鉄筋を、製品に合わせて切ったり、曲げたり、溶接したりする。機械化されているが、重い鉄筋を運んだり、十数種類ある製品の加工手順を覚えたりとハードな面もあった。

「でも、工場の仕事は嫌じゃなかった。戻りたいとも思います。丁寧かつ順番に教えてくれる先輩がいて、一歩ずつ成長していく達成感がありました」

製品の種類は多く、鉄筋加工の手順を覚えるのも一苦労だ。馬締さんは上司から「1個ずつ覚えよう」と励まされながらスキルを伸ばした。
製品の種類は多く、鉄筋加工の手順を覚えるのも一苦労だ。馬締さんは上司から「1個ずつ覚えよう」と励まされながらスキルを伸ばした。

鉄筋加工は、製品の強度に関わる重要な工程だ。丁寧さはもちろん、全国各地からの発注をさばくスピードも求められる。自分にはものづくりの知識もスキルもない―。馬締さんが作業の遅さを自覚して落ち込んだとき、上司は声を掛けてくれた。「大丈夫だけん。1個ずつ覚えればよか」

ある製品が作れるようになると、タイミングを見計らったように「次はこれをやってみよう」と仕事を回してくれる。1人で作れる製品が増えるたび、チームの作業がより早く終わるようになった。育ててくれる人たちに恩返しできるようで、うれしかった。

「就職活動で感じた会社の印象は間違っていなかった。入社したのは、面倒を見てくれる採用担当者の温かい人柄が決め手でしたから」。馬締さんはそう言って胸を張る。

理系出身だが、ものづくりや土木とは縁がなかった馬締さん。「大変な時に誰かを支えられる仕事に就きたい」と就職活動を始めた。
理系出身だが、ものづくりや土木とは縁がなかった馬締さん。「大変な時に誰かを支えられる仕事に就きたい」と就職活動を始めた。

大分県出身で、2016年に熊本大学理学部に入学。大学院修士課程ではヒトの培養細胞に薬剤を投与し、効果を確かめる研究をしていた。研究職になる道もあったが、「全く違うことをやってみたい」と一般企業への就職を決意。入学した年の熊本地震を思い出し、「大変な時に誰かを支えられる仕事に就きたい」と考えた。復興を形作るコンクリートの仕事は、その思いと一致した。

特にヤマックスに惹かれたのは、採用担当係長の富田達也さんが選考中に熱心に励ましてくれたからだ。「君なら大丈夫。応援しているよ」。期待してくれる兄貴のような存在で、面接前に話すと緊張が和らいだ。「こうして接してくれる人がいる会社なら、働きやすいんだろうな」。その直感通り、周囲に支えられてキャリアを重ねている。

「大きなコンクリート二次製品は、みんなの力を合わせないとできません」。馬締さんはかみしめるように語る。身近な場所で暮らしを支える「縁の下の力持ち」。ヤマックス社員の1人1人が、その役割を担っている。

編集部ひとこと

馬締さん(左)と採用担当の富田達也さん。馬締さんは「就活時代から熱心に接してもらった」と感謝している。
馬締さん(左)と採用担当の富田達也さん。馬締さんは「就活時代から熱心に接してもらった」と感謝している。

♪トンネルだってビルだってコンクリートでできてる―。ヤマックスのCMソングの通り、街のいたるところにコンクリートはある。「この道路に、自分が関わった製品が使われているんだよ」。家族や友人にそう言えたら、どんなに誇らしいだろう。

取材で出会った社員は個性豊かで、人間的な温かみがあった。スポーツマンらしく誠実な野田さん。人懐っこい笑顔で慕われる馬締さん。後輩思いの富田さん。新卒採用では現在、最初に配属される職種を選べる「希望職種制」を導入している。文系でも理系でも、自分の強みや個性がチームのために生きる。社会貢献を実感しながら自分を高められる。そんな環境を感じた取材だった。

えっ、あんな場所にも?製品や施工事例も紹介中。ヤマックスの新卒採用ページはこちら

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株式会社ヤマックス 概要

所在地 〒862-0950 熊本市中央区水前寺3丁目9-5
【電話】096(381)6411
事業内容 土木・建築用コンクリート製品の製造・販売・戸建て住宅の販売
設立 昭和38年10月10日
資本金 17億5,204万円
役員 代表取締役会長/茂森潔
代表取締役社長/茂森拓
取締役副社長/森將彦
常務取締役/渡辺宏之
取締役/浦崎啓介、木山伸悟、森田芳文、津留清
監査役/長岡純生、松山隆文、中島邦介
従業員数 519人
支店等 3支店、8工場、8営業所
関連会社 (株)東北ヤマックス、(株)HOCヤマックスほか
ホームページ https://www.yamax.co.jp/

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