「おべんとうのヒライ」でやりたいことに挑戦する—熊本の味を支えるヒライ(熊本市)で奮闘する20代【新卒採用・熊本企業インサイト】
「この会社でなら自分の夢を実現できる」。熊本のソウルフードを数多く開発している「おべんとうのヒライ」で働く20代の社員たちはそう口をそろえる。商品開発部の女性社員は、入社1年目で新商品の企画を提案した。営業部の男性社員は4年目で副エリア長に抜てきされ、「責任と同じくらいやりがいがある」と手応えを語る。
なぜヒライは若手の登用に積極的なのか。なぜ彼らはこの会社でやりがいを感じ、日々成長できるのだろうか。熊本の食を支えるヒライで働く若手社員の現場をリポートする。
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目次
入社半年で新商品を開発 地元を離れて就職を決意した理由
「ここに入社したい」。鍵村裕加さんは大学生の時、合同説明会で偶然ヒライのブースに立ち寄った。実家が居酒屋を経営しており、中学生の頃から食に携わる仕事に就くことが夢だった。北九州市の西南女学院大学で管理栄養士の資格を取得し、商品開発の仕事を探して就職活動を続けている最中だった。
生まれは北九州市で、大学まで地元で過ごした。ヒライは福岡、佐賀にも店舗を展開しているが北九州市にはなかったため当時は名前も知らなかったが、入社してすぐに商品開発に携われることや、若い社員の挑戦を受け止めてくれる社風を知り、魅力を感じて面接を受けることを決めた。
2020年度に入社し、現在5年目。のり弁や唐揚げ弁当、ちくわサラダなど、ヒライのロングセラー商品や看板メニューをいくつも考案してきた「商品開発部」で働いている。工場から各店舗に出荷されるおなじみの弁当をはじめ、すしやサンドイッチ、おにぎりの新規開発とリニューアルを担当している。多い時で月10品を手がけることもあり、年間約100品の改良・開発を担う。
小さい頃から抱いてきた「商品開発に携わりたい」という夢は入社してすぐに実現する。入社して間もない1年目の夏。初めて弁当の新商品のアイデアを提案した。テーマは韓国料理で、野菜のナムルなどが具材のキンパ(韓国風のり巻き)、ヤンニョムチキン、サムギョプサル風に調理した豚肉をおかずに選んだ。
SNS上のトレンドや他社の新商品をリサーチする中で、韓国カルチャーが若い世代で流行していることを知った。当時はちょうど新型コロナウイルス禍だったこともあり、「気軽に海外気分を楽しんでもらいたい」とアイデアが浮かんだという。
女性をターゲットに定め、栄養バランスや一食当たりのエネルギー量を計算し、使う食材や調味料を調整する。これまでヒライが作ったことのないメニューだったため、工場で初めて扱う食材も多かった。そのため現場で調理する工場の担当者に聞き取りし、現実的に量産できるメニューかどうかも話し合いを重ねた。
食材やメニューが決まっても、調理方法の壁にぶつかった。工場から各店舗に送られる弁当は電子レンジで温めて食べることが想定されるため、豚肉が固くならないような調理をする必要があった。そんな時同じ部署の先輩が相談に乗ってくれ、アドバイスをもらいながら試行錯誤して乗り越えることができた。「最初からダメと言わず、どうやって形にするかを一緒に考えてくれました。言いやすい雰囲気があったから積極的に提案できたと思います」と当時を振り返る。
最初の提案から3カ月。ようやく完成した初めての弁当「korea(こりゃー)ヘルシー弁当」は、2021年度に全国規模の弁当・総菜コンテストで金賞を受賞した。全国から1000商品を超える応募があり、金賞はたった21品という快挙だ。「自分が開発した商品を食べてもらえた時が一番やりがいを感じます。私が開発した弁当を食べて、『継続して売ってほしい』と手紙を送ってくれたお客様もいます。その方とは今でも年賀状のやり取りを続けているんです」と鍵村さん。商品開発は買い物客と直接関わる仕事ではないからこそ、自分に届いた反応や意見を大切にしている。
現在は工場から出荷される商品を担当しているが、いずれは店舗で調理してできたてを提供するメニューの開発に携わりたいと思っている。「工場で作る弁当とはまた違う分野のメニューを作れるようになりたい。まだまだ自分に足りない部分はたくさんあるけど・・・自分の幅を広げてみたいです」と前向きだ。「周囲が応援してくれて、やりたいことを形にできます。夢を諦めず、チャレンジしてみてほしい」。商品開発や食に関わりたいと考える学生に伝えたい言葉だ。
食のインフラ支えるプロ集団 積極的に若手登用
ヒライは、勤続年数に関係なく本人の能力や実績次第で積極的な登用を実施している。人事課長の濵佳子さん(38)は「若手社員に活躍してもらうことで社内が活気付いています」と、その狙いを語る。これまでも社として多角的な事業展開やDXの導入など新しい取り組みを続けてきた。毎年店舗数も拡大しており、濵さんは「日々、業務の効率化が求められており、そのことも若手登用の一因となっています」という。配属先も基本的に本人の希望に沿うよう計画しており、直近の2年は連続で昇級を実現して社員のモチベーション向上を図っている。
弁当以外にオードブルやお節といった注文も受けるヒライは、世間が長期休みの時期に繁忙期を迎える。休暇を取るタイミングが世間と異なる分、若手のうちからやりがいのある仕事を任せてもらうことができる。成果と本人の希望があれば勤続年数にかかわらず、早い段階でステップアップすることも可能だ。
4年目で副エリア長に抜てき 「目標は仕事をする中で見つかる」
「頑張った分だけ評価してもらえる」。入社4年目の重藤聖英さん(25)は、今年4月に副エリア長に就任した。この役職はこれまで勤続数十年のベテランが務めており、複数の店舗の売上を管理する立場。「責任は大きくなりましたが、同じくらいやりがいがあります」と落ち着いた表情で語る。現在は阿蘇立野店(阿蘇市)、大津室店(大津町)を担当している。
重藤さんの主な仕事は、工場から配達される弁当の発注数や店内で手作りする弁当、総菜などの数を管理し、2店舗の利益を最大化すること。客層や弁当の売れ行きが店舗ごとに違うため、廃棄を少なくできるよう弁当の品ぞろえやご飯の量などを工夫している。
例えば大津室店は台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場から車で5分の場所にあり、昼休みの時間には工事関係者ら男性が多く来店する。そのため手早く食べられるよう、定番メニューのチキン南蛮や唐揚げ弁当、カツ丼などを多く並べ、ご飯が大盛りの商品も店頭に並べている。一方住宅街にある店舗の場合は高齢者や家族連れが多いため、天丼やカレー、野菜炒めなどメニューのバリエーションを増やし、選ぶ楽しさを感じてもらえるよう工夫する。
入社して1年間はいくつかの店舗を移動しながら現場の仕事を学んだ。2年目から店長として担当する1店舗の売上げや廃棄の削減、利益率の確保といった数値目標を追いかけた。最初は仕事を覚えることで精いっぱいだったが、現場をよく知るベテランのパート従業員らと協力して営業戦略を立て、2年連続目標を達成した。
副エリア長として、複数の店舗を管理するのは今年が初めての経験だ。店舗にいない間の客の動きや弁当の売れ行きは、店頭で働くパート従業員からの情報を基に把握している。「地域の祭りがあるとか学校が休みになったとか、地元に長く住む従業員に教えてもらっています。そういう時は弁当の発注を増やして対応します」と重藤さん。一緒に働く女性従業員は「もう20~30年働いている人もいる。重藤さんはよく話しかけてくれるし、仕事を任せてくれるからすごく働きやすいですよ」と教えてくれた。
編集部ひとこと
入社後すぐにやりがいのある仕事に挑戦でき、それを全力で応援してくれる環境がヒライにはある。今回話を聞いた2人の若手社員はどちらも生き生きとした表情で仕事の話をしてくれたのが印象的だった。企業としても店舗を毎年拡大し、業務が増える分「社員に還元したい」と2年連続昇級している。長く熊本に根差しながら革新を続ける姿勢が今の環境につながっているのだろう。もし少しでも「食に関わる仕事に興味がある」「挑戦してみたい」という気持ちを持っているなら、自分の可能性を試してみてはどうだろうか。「食のインフラを支える」という大きな使命を掲げるヒライでなら、夢を実現できるかもしれない。
会社概要
会社名 | 株式会社ヒライ |
---|---|
代表者 | 代表取締役社長 平井 浩一郎 |
事業内容 | お弁当をはじめとした惣菜、おにぎり、サンドイッチ等の製造及び販売 |
住所 | 〒860-0047 熊本県熊本市西区春日7丁目26-70 |
設立 | 1968年5月 |
資本金 | 5000万円 |
従業員数 | 2167名(正社員341名、パート・アルバイト1,826名) |
グループ会社 | 持株会社のヒライホールディングス、炊飯業のどんどんライス、運送業のサントップ運輸、事業給食宅配業のヒライ給食宅配サービス、人材派遣業のスターワーク、大分の「鳴門うどん」を展開する九州フードサービス、同じく「うまいめし」を展開するうまいめし、餃子・饅頭等を製造販売する三桃食品、原材料の仕入れを行うサン・ミールサプライ、タバコを販売しているワイド・リサーチ |
問い合わせ先 | 管理本部 人事総務課 096-324-3666 |
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STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
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