先輩に学ぶ、共に学ぶ。輸入車ディーラーアデル・カーズ(熊本市)の若手営業、整備士が語る成長環境【新卒採用・熊本企業インサイト】
ショールームで流線型のボディが輝く。重厚なエンジン音が心臓を震わせる。車好きでなくても見とれるような輸入車がずらりと並ぶ。熊本市南区のアデル・カーズ株式会社は、近見高架橋そばにあるポルシェセンター熊本、プジョー熊本、シトロエン熊本の3つの熊本県正規ディーラーを運営する。九州有数の歴史がある輸入車ディーラーで、新人はどのようにスキルを積んでいくのか。営業や整備の現場で働く若手社員に共通するのは、車の魅力を伝えたいという熱意、そして先輩の技術を積極的に吸収する向上心だった。
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目次
売らない接客でファンをつくる。全国最年少の「ポルシェプロ」
「こちらはポルシェ911のGT3。ブルーのカラーリングはなかなか出回らないです。エンジンのサウンドもファンが多いんですよ」
ポルシェセンター熊本のショールームで、2022年入社の山口祐輝さん(25)が笑顔で解説を始める。照明を浴びて輝く車には、2千万円を超える値札が付いていた。高級車として名高いポルシェ。「憧れの車に乗りたい」と心に決めて店を訪れる人がいる一方、興味はあるが敷居が高いと感じる人も多いという。
山口さんは、勧誘や売り込みを一切せずにポルシェの魅力を伝える「ポルシェプロ」として働いている。ポルシェジャパン(東京)の研修で各車種の歴史や性能を学び、認定を受けた。全国に正規販売店は約50店あるが、ポルシェプロは約20人しかいない。山口さんは熊本で唯一、そして全国で最年少の人材だ。
ポルシェの歴史や特徴を紹介し、成約の見込みがあれば営業担当者に引き継ぐ。「成約を目標にせず、ポルシェっていいな、この店にまた来たいなと思ってもらうことを心掛けています」。穏やかな語り口や優しいまなざしにその思いが宿る。
昔からポルシェに憧れているという男性が来店したことがあった。「この車はエンジンが後方にあるのが特徴です。加速や音もよくて、満足いく走りが楽しめます」。山口さんが語るうち、男性の目が輝いていくのが分かった。
別の日も、また別の日も男性はやってきた。「サーキットで走りたい」「旧型と最新型はどう違うのかな」。何度も対話を重ね、ついに成約の見込みが立った。営業に引き合わせたときの、男性のワクワクした表情が忘れられない。
山口さんは熊本学園大学経済学部を卒業後、営業職として入社。輸入車の魅力は、イタリア車を愛する両親に教え込まれた。国産とは一味違うデザインと乗り心地。就職活動では不動産や商社も受けたが、国産車ディーラーは受けなかったという。入社半年後の2022年秋、上司からの働きかけがきっかけで、ポルシェプロの研修・認定を受けた。
研修以上に学びがあるのは、先輩たちの商談だ。アデル・カーズの営業職は入社後、先輩に付きっきりで商談の流れを学ぶ。山口さんは今でも、先輩の商談を志願して見学することがある。「的確な説明と、車好きの心をくすぐる言い回しが本当にうまい。自分に響いた言葉はそのまま真似しています」
「両親が輸入車の魅力を教えてくれたように、たくさんの人にポルシェを伝えたい」。その目標に向かい、プロは今日も学び続ける。
説明するより、まずは仲良く。先輩に学んだ「信頼される接客」
プジョーとシトロエンの営業を担当する鎌田英里夏さん(24)は、「説明するより、まずお客様と仲良くなる」というスタイルを大切にしている。「いらっしゃいませ。暑いですね」。少しでもホッとして車を見てほしいとの思いから、感情のこもった明るい声で話しかける。
プジョーはライオンのエンブレムや角ばった外装が力強く、シトロエンは丸みを帯びたフォルムが愛らしい。唯一無二のデザインに魅了される人は多いという。入社後に性能や特徴を学ぶ機会はあるが、実際の接客では幅広い知識が必要だ。「乗り心地や旧型との違い、競合車種との比較…。質問に答えられず、『確認してきます』と先輩を頼ったことも何度もあります」
熊本学園大学商学部を卒業後、2022年に入社した。もともと、車に興味があるわけではなかった。人と接しながら達成感が得られる営業職に惹かれ、自動車ディーラーに目を向けた。アデル・カーズの会社訪問では女性の先輩社員が優しく語り掛けてくれ、「就活中で一番、ありのままの自分でいれた」という。
入社後はそんな先輩たちの技術をどん欲に吸収した。カタログを読みこむだけでは本当のセールスはできない。「圧倒的に売る人」の商談を見学し、車の特徴をどう伝えているか、ひたすらメモした。雑談や相手の悩みを聞き出す会話のテクニックにも気づかされた。
成長を感じた瞬間がある。ある日、若い夫婦がシトロエンのショールームにやってきた。デザインに魅力を感じつつも、踏み切れない様子だった。いつものように会話で距離を縮めつつ、心配事を聞いてみた。
「輸入車は初めてなんです。よく、故障した時に大変って聞くんですけど、実際どうなんですか?」
夫婦の正直な疑問を聞き、先輩の説明を思い出した。「実は国産の部品も使われているんです」「保証期間や、安心のメンテナンスパックもありますよ」。夫婦は「国産とあまり変わらないね」と納得し、購入してくれた。
実は、比較検討している車がある。実は、不安に思っていることがある。そうした客の懐の奥は、会ってすぐに聞き出せるものではない。
「だからこそ、説明する前に仲良くなるのが大事。お客様と長く付き合い、喜びや不満を正直に語ってもらえるような、信頼される営業になりたい」。鎌田さんの志は高い。
だから輸入車は面白い!メカニック社員の座談会
「生涯メカニックで活躍したい」。部門をまたいだ異動があるディーラーもある中、アデル・カーズでは技術職としてキャリアを極める道があるという。自動車整備系の専門学校を卒業して活躍中の3人に、輸入車を扱う面白さを座談会で語ってもらった。
―熊本にもたくさんの自動車ディーラーがある中、輸入車のメカニックを選んだ理由は?
上田 親が整備工場を営んでいて、自分も車に関わりたかった。輸入車にハマったのは映画「トランスフォーマー」がきっかけ。作中に登場するアメリカ車がとにかくかっこいい。海外の車を触ってみたくなりました。
井芹 私の実家も板金工場ですけど、輸入車はなかなか見ない。モータースポーツで見るような海外の車の構造を知りたいという好奇心もありました。
川元 同級生には国産車ディーラーに行く人が多かった。アデル・カーズという社名には正直ピンとこなくて、パンフレットを見て「ああ、ポルシェセンターか」と初めて分かりました。せっかくなら輸入車を触ってみたいと志望しました。
―実際に働く中で感じる技術的な面白さは?
井芹 国産車にはない構造を触れるのはいい。プジョーやシトロエンのディーゼルエンジンには、特殊な液体を使って排気ガスをきれいにする仕組みがあります。ギアが8速まである車もあるね。
川元 ポルシェは40年前の車が普通に走っているのがすごい。今ではほとんど見ない空冷式のエンジンを触るのはすごく緊張するけど、ありがたい経験だなって思います。
上田 車を本当に大切にするお客様も多いですね。外装の微妙な違和感に気づいて調整を頼まれることもあって、自分の技術も磨かれる気がする。
―就職してからも学ぶことが多そう。技術者というと職人肌のイメージがありますが、先輩との関係は?
川元 話しかけるとフランクに教えてくれる人が多い。自分は1年目のとき、井芹さんの下に付きました。作業手順を教わりながらも、雑談もたくさんしましたね。
井芹 「一緒にやろうぜ」という雰囲気が先輩たちにあるよね。ある時、先輩たちが難しそうな顔でエンジンを分解していて。「井芹、ちょっと来て」と呼ばれ、簡単な作業を手伝いながら様子を見せてもらいました。若手である私にも経験させたかったみたいです。
上田 やってみて、うまくいかなければ先輩に助けてもらう。故障に対応するマニュアルはあっても、そもそも何が故障しているのかを突き止めるのには経験がいる。後輩たちにはたくさん失敗と成功の経験を積んでほしいと思っています。
編集部ひとこと
取材を通して印象的だったのは、社員たちが主体的にスキルを身に付けていく過程だ。どんな営業になりたいか、自分で目標を見つけて学ぶ。自分で整備作業をやってみて、分からないことを聞きに行く。決して孤立しているわけではない。今回取材した若手社員の回りには、目標になり、頼れる先輩がいた。そんな環境の中で、若手たちはのびのびと実力を磨いているのだと感じた。
車に対する愛もあふれていた。時折インタビューが脇道にそれ、「あの車はここがいい」「最新型はこう変わった」と車好きトークが始まる。わいわいと語り合える仲間、向上心を持った先輩たち。そんな職場に惹かれる人にはぴったりの会社かもしれない。
アデル・カーズ株式会社 概要
所在地 | 〒861-4101 熊本市南区近見6丁目22-70 【電話】096(312)8888 |
---|---|
事業内容 | ポルシェ、プジョー、シトロエンの販売・整備、損害保険代理業 |
設立 | 昭和62年6月 |
資本金 | 4,000万円(グループ計9,000万円) |
役員 | 代表取締役/池永成正(ほか役員3人) |
店舗 | ポルシェセンター熊本、プジョー熊本、シトロエン熊本 |
関連会社 | (株)池永興産 |
ホームページ | https://www.adelcars.co.jp/ |
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