動物との共生目指す拠点に 宇城市の「アニマルフレンズ」、開所から6カ月 個体管理でストレス軽減、譲渡会を毎月開催
熊本県が宇城市に新たな動物愛護センターを3月に開いて、約半年がたった。愛称は、動物を「友」として共に生きるという意味を込めた「アニマルフレンズ熊本」。保護犬や猫を適性に管理し、譲渡を推し進め、動物との共生社会の拠点となるよう愛護の取り組みを広げている。
「かわいいね」。18日、アニマルフレンズ熊本では月1回の休日譲渡会が開かれ、来所者が犬や猫を見て回った。半年間で譲渡されたのは犬40匹、猫27匹。獣医師の松本実樹さん(31)は「飼い主のいない子たちが多くいる現状を、まず知ってほしい」と訴える。
前身は1979年、熊本市東区に開設した県動物管理センター。保健所で保護された犬や猫を集め、殺処分するための施設だった。熊本地震後は逃げ出した犬や猫が保護されるケースが増えたため、殺処分を停止。飼い主捜しや譲渡に力を入れた。動物愛護の機運も高まったことから、県は「殺処分ゼロ」を目標に掲げ、2017年に動物愛護センターと名称を変えた。
名前は変わったものの、施設は動物を大部屋に集団で入れる構造で、長期間の保護には適さなかった。会議室や駐車スペースもなく、譲渡会の開催は難しかったという。そこで愛護団体メンバーなどでつくる有識者会議は19年、「新しい愛護拠点が必要」と提言。これらを受けて、県は新たな施設づくりに着手した。
宇城市に整備された新センターは延べ床面積1458平方メートルで、旧施設の3倍以上に拡張。犬は個室、猫はケージに1匹ずつ入れる個体管理が可能となり、感染症への懸念や動物のストレスが軽減された。犬が運動できる屋根付きのドッグランも備える。
手術室もあり、6月に飼い主のいない猫の避妊、去勢手術を無料で始めた。術後は元の場所に戻され、住民が共同で世話する「地域猫」として飼育してもらう。
毎月の休日譲渡会は、多目的スペースで猫や犬とゆっくり触れ合うことができる。今後は犬のしつけ方教室や防災研修会、小学生向けの「いのちの教室」を開く予定だ。引き取りの相談や施設見学も随時受け付ける。旧施設は現在も「別館」として、譲渡に向けた犬のトレーニングなどに活用されている。
新センターには犬50匹、猫80匹程度が収容可能だが、開所当初から満杯に近い状態が続いている。多頭飼育崩壊や飼い主が亡くなったケースが目立つという。
髙本芳寿所長(57)は「保護される動物がゼロになるのが理想。ペットを飼う時は最後まで責任を持つという意識を持ってほしい」と呼びかける。(清島理紗)
※譲渡相談や見学は事前申し込みを。☎0964(27)8115。
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