配管ジャングルに先端技術…日本の工業化の歴史体感 三井化学大牟田工場(大牟田市)見学ツアー開始
かつて三井三池炭鉱があり、日本の工業化を支えた「炭都」大牟田。その面影を残す大牟田市の三井化学大牟田工場は7月から、一般向け工場見学ツアーの受け入れを始めた。毎月1回、6人限定のプログラムで、市の体験型観光企画の一つ。7月19日、第1回のツアーに同行した。(大倉尚隆)
使い込まれた大小の配管、検査用の巡視路と手すり-。金属の〝ジャングル〟に交じり、れんが造りの作業場や石垣も目に入る。一帯は日本の工業化の一端を担った歴史そのものだ。
同工場の創業は1912年。三池炭鉱で産出される石炭を利用し、化学染料などを製造していた。ゴルフ場や排水処理場といった付属施設もあり、総面積は252ヘクタールに及ぶ。現在はクッション材に使われるウレタンや樹脂製眼鏡レンズ、殺虫剤や農薬の原料、栄養ドリンクの成分で知られるタウリンなどを製造。稼働中で最も古いプラントは1932年製と、90年以上の歴史がある。
毎年10月に開いていたバスツアーは工場内を車内から眺めるだけで、企業秘密保持のため、写真や動画の撮影はできなかった。新ツアーは「地域に愛される工場にしたい」と同社の若手社員有志が企画した。
見学者は事務所で工場の成り立ちや施設の概要についての解説を聞き、車で工場内へ入った。
空気から酸素と窒素を分離し取り出す30~40メートルほどのタワー型の「空気分離装置」前へ。下車した見学者は、企業秘密保持のためスタッフにカメラを預けて記念写真を撮影した。工場の中では比較的新しい、眼鏡レンズ用の樹脂素材プラントの関連施設前でも撮影時間が設定された。
車窓からの眺めも興味深い景色の連続だったが、移動中は撮影禁止。まぶたにしっかりと焼き付けた。
事務所に戻り、眼鏡レンズの強度試験を見学した福岡県粕屋町の自営業の男性(73)は「大牟田といえば石炭のイメージだが、最先端の材料がつくられているなんて驚いた。子どもたちに見てもらいたい」。ツアーを企画した同社ウレタン製造部の沼田直也さん(30)は「普段入ることができない化学工場の非日常的な雰囲気を味わってほしい」と参加を呼びかけた。
日没後、敷地外の高台を訪れ工場夜景を写真に収めた。昼間見た工場内の記憶と相まって、無数のライトに照らされた配管の集積が一層魅力的に輝いていた。
申し込みはウェブサイト「おおむたワンプレート」から。24年度は参加無料。次回は8月23日。
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