北里柴三郎の〝ライバル〟に注目 八代出身の緒方正規・医学博士 日本衛生学の基礎築く 故郷・東陽に記念碑も
小国町出身の細菌学者、北里柴三郎の新千円札発行をきっかけに、同じ熊本の医学校で学んだ八代市出身の医学博士、緒方正規(1853~1919年)への関心が高まっている。北里とはライバルながらも親交があった緒方の実家には生誕記念碑が残り、現代に功績を伝えている。
緒方は北里と同じ年に河俣村(現八代市東陽町河俣)で生まれた。北里と古城医学校(現熊本市中央区)で学び、現在の東京大医学部に進学。ドイツで細菌学と衛生学を修め、帰国後は母校の医学部教授として日本の衛生学の基礎を築いた。ペストがネズミからノミを介して、流行したことも証明した。
当時、緒方の研究で注目を集めたのが脚気[かっけ]の原因究明だった。感染症説や栄養不足説が唱えられる中、1885年に病原菌発見を発表。これに対し北里は、緒方の研究に不備があり、発見は認められないと指摘した。結果は緒方の誤りで、ビタミンB1不足が原因だと確定したのは1924年だった。
学問上の論戦を繰り広げた二人だが、私生活では交流があった。緒方の教授在職25周年祝賀会では、北里が門弟総代として「わが国へ実験医学をもたらし(中略)学問の方針を示された」とあいさつ。緒方が亡くなる間際にも病床を訪ねて見舞っている。
東陽町の緒方生誕の地には現在、子孫の緒方恵一さん(70)が暮らし、庭の一角に記念碑が残る。恵一さんは「旧河俣村のころ建てられたと聞いています。地元の誇りだったのでしょう」と推し量る。
近年は知る人も減り、記念碑を訪れる人は年に数人という現状だが、新千円札発行を機に顕彰の動きも出始めている。同市豊原下町の元会社員、鶴崎信二さん(66)は2021年、郷土雑誌「夜豆志呂[やつしろ]」で緒方の足跡を紹介した。
「知名度に差はあるものの、同じ熊本出身の偉人だ」と鶴崎さん。「新千円札の相乗効果で緒方にも注目が集まってほしい」と期待を寄せた。(河内正一郎)
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