有斐学舎、移転し再出発 熊本出身者の学生寮 埼玉・志木市から東京・小平市へ 火災契機、OB・OGらサポート
![移転して再スタートを切った有斐学舎の前に立つ(左から)髙橋宥貴さん、松原浩さんと美紀さん=東京都小平市](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240621TAN000067000_02.jpg?itok=eA7YiFeF)
首都圏の大学・大学院に通う熊本県出身者の学生寮「有斐[ゆうひ]学舎」が5月初め、埼玉県志木市から東京都小平市に移った。契機となったのは、寮舎の一部を焼いた昨年末の火災だ。焼け出された学生は行き場を失いかけたが、寮のOB・OGである「舎友」や多くの人々が親身にサポート。学生たちは新たな寮で再スタートを切った。
有斐学舎の前身は現在の東京都文京区にあった「紫溟[しめい]学舎」。済々黌を創設した佐々友房ら熊本の教育者が1881(明治14)年に設けた。翌82年には「有斐学舎」の名称になり、数回の移転を経て1976年に50室を備える男子寮を志木市に構えた。2017年から女子も受け入れている。
運営する公益財団法人肥後奨学会(渡邊博太郎[ひろたろう]理事長)によると、鉄筋コンクリート4階建ての志木市の寮舎は老朽化が著しく、数十年前から建て替えが懸案となっていた。検討が繰り返される中、昨年12月に起きた火災で1室を全焼。ほかにも使えなくなった部屋があり、「舎生」と呼ばれる寮生は一部が避難を余儀なくされる事態に陥った。
肥後奨学会常務理事の松原浩さん(62)は「近所のみなさんが公民館を避難先として開放し、学生に衣服を提供するなど支えていただいた」と振り返る。さらに「発足以来の舎友は総勢3千数百人に上る」というOBらが支援に奔走。物資や総額450万円もの義援金を寄せたほか、移転先探しも不動産業を営む舎友が汗を流してくれたという。
有斐学舎と同様に地元出身者が住む他県の寮も心強い味方になった。高知、愛媛、滋賀3県の学生寮が年明けから4月末まで、舎生16人を受け入れてくれた。滋賀県の湖国[ここく]寮(東京都三鷹市)に身を寄せた熊本市出身の髙橋宥貴[ゆうき]さん(法政大4年)は「みなさんに助けていただき、仲間が増えたようでありがたかった」と感謝する。
小平市の新しい寮は、企業の社員寮だった建物で、各部屋は以前より広め。環境が整い、舎生41人が入居した。松原さんは舎友の一人で、寮母を務める妻美紀さん(59)と寮に住み込み、舎生を支えている。
松原さんは「定員は60人で、年度途中からも入居できる。熊本出身の方はぜひ訪ねてみてほしい」と、仲間入りを呼びかけている。(小多崇)
※有斐学舎は小平市学園西町1-2-15、☎042(386)4702。
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