手作り漬物、法改正で衛生管理が厳格化 県内では以前から基準厳しく 生産断念するケースも…廃業は限定的か
食品衛生法の改正に伴い6月から、道の駅などで販売される漬物の衛生管理が厳格化された。製造施設の許可に加えて改修が必要となるケースもあり、原材料価格の高騰も相まって漬物作りを断念する人も。直売所の人気商品でもある漬物の味を守るため、熊本県内の生産者らは知恵を絞っている。
5月下旬、菊池市泗水町の道の駅泗水・養生市場の漬物コーナーには、ダイコンや摘果メロン、キュウリなど旬の野菜を使った数々の漬物が並んでいた。漬物を出荷する生産者は主に9事業者。8事業者が6月以降も出荷を続ける。
そのうちの一人、同町の女性(82)は、20年以上にわたり、カラシナ漬けなどを道の駅泗水などに出荷してきた。許可申請のため、漬物を作っていた自宅横の作業場に壁などを設け、野菜を洗うシンクも新調した。「年も年だから、もう辞めようかと何べんも思った。でも漬けるのは私の楽しみだから」と女性。これからも体が許す限り、漬物作りを続けるつもりだ。
一方で、ニンジンなどのみそ漬けを作ってきたJA菊池女性部泗水支部自然食品加工グループは、5月末で漬物作りを断念した。メンバーの女性(74)は「野菜や酒かすの値段が上がったので、採算が取れなくなった」。製造を続けるために必要な許可を申請しなかったという。
今回の法改正では、漬物を衛生的な環境で造るために、新たに「漬物製造業」としての許可申請が必要になる。昆虫などが混入しない施設であることや、手指で触れなくても開閉できるレバー式蛇口の手洗い設備の設置などを求められており、保健所による施設調査を経て営業許可証が交付される。
道の駅泗水の副支配人、齊藤ゆかりさん(53)は「旬の野菜に加え、漬物を楽しみにしているお客さんは多い。(法改正されたことで)〝おばあちゃんの味〟をもっと安心して買ってもらえる」と歓迎。買い物に来ていた菊池市の主婦(77)は「個人が作っている漬物は、作る人の『顔が見える』ので安心」と話し、メロンの甘酢漬をかごに入れた。
県健康危機管理課によると、県は法改正以前から独自の基準を設け、食品製造業者に高い衛生管理を求めてきた。このため、今回の改正で大規模な施設改修が必要なケースは他県と比べて少ないとみられ、漬物生産者らの相次ぐ廃業を食い止めた側面があるという。
直売所の人気商品でもある漬物作り継続に向けて、「県内各保健所での許可取得は、順調に進んでいる」と同課。5月末現在、469事業者が営業許可を取得または申請している。申請は6月以降も各保健所で受け付けており、故郷の漬物を手軽に味わう機会はおおむね守られそうだ。(石井颯悟)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツTHEMES
熊本の経済ニュース-
「生まれ変わっても店の続きを」 11月末で引退する有田正博さん 熊本市中央区・シャワー通り「PERMANENT MODERN」 セレクトショップの草分け
熊本日日新聞 -
合志市商工会が地域問題懇談会 市や市議と意見交換
熊本日日新聞 -
熊本市の「宿泊税」、事務負担支援の交付金などを事業者に説明
熊本日日新聞 -
熊本県の24年産米作況、102の「やや良」 もみ数多いが高温で粒の肥大抑制
熊本日日新聞 -
トマトの卸価格が高騰 1玉1000円も 熊本市の青果市場 猛暑が影響、品薄に
熊本日日新聞 -
8月の熊本県内の鉱工業動向、生産指数は3カ月ぶり上昇
熊本日日新聞 -
天草・牛深にビジネス拠点オープン 支所の空きスペース活用し整備、企業誘致を目指す
熊本日日新聞 -
ワークルール教育の充実を 連合熊本が県に提言 「ブライト企業」の厳格な確認も要求
熊本日日新聞 -
食品の衛生管理意識向上へ 熊本市、食品取扱業者に「ハサップ」認定ステッカー交付
熊本日日新聞 -
企業が持つ「知的財産」活用を 稼ぐ力向上へ 熊本市で協議会が会合
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「家計管理」。11月25日(月)に更新予定です。