えっ、学校健診って今も上半身裸なの!? 熊本市教委は今年から「原則、着衣で」 プライバシー配慮… 医師には戸惑いも

熊本県内の小中学校は新学期に入り、子どもたちの健康診断(健診)の時期を迎えた。「まだ上半身裸の健診をしている学校はあるの?」。熊本市東区の事務職女性(47)が熊日のSNSこちら編集局(S編)に声を寄せた。S編では2年前、「裸の健診はセクハラ」と訴える女子高生を取材したパートナー地方紙の記事を紹介した。あらためて熊本市の状況を調べた。
女性の長男は今春から中学生。入学先では「男女ともに上半身裸で健診を受ける」とママ友から聞き、現在小学3年の長女の進学にも不安を持ったという。「体の成長に敏感な時期。同級生と比べ、『学校に行きたくない』と言わないだろうか」
女性も心配する「裸の健診」を控える取り組みが、本年度から広がりそうだ。文部科学省は今年1月、学校健診を「原則着衣」で実施するよう各都道府県教育委員会などに通知。正確な検査や診察に支障のない範囲で原則、体操服や下着を着用とした。また、医師が必要に応じて着衣をめくり視診や触診する場合があることを、事前に保護者らに説明するよう求めた。
熊本市教委も通知を受け、3月に市立の全小中高校に「原則着衣」で健診を実施する方針を初めて示した。従来は「ついたてやカーテンなどで個別の診察スペースを確保する」「待機する人数を最小限にする」などプライバシーの配慮を促すにとどめ、服装に関しては各校に判断を委ねていた。一歩踏み込んだ今回の方針に、女性も「ほっとする子どももいる。安心した」という。
市教委によると、「上半身裸のまま健診を受けさせていた学校がこれまであるか、把握はしていない」が、着衣健診を求める声も届いていなかったという。
一方、診察する側の受け止めは。「子どもたちが我慢せず声を上げられるようになった点はいいことだし理解できる」と話すのは、学校健診に25年近く携わる杉野クリニック(熊本市西区)の杉野茂人院長(67)だ。
「現場の判断次第だったので、昨年まで裸での健診を続けていた校医もいたと思う」と話す杉野さんは、10年ほど前から、上半身裸を恥ずかしがる女子の児童生徒が増えたと感じていた。自身は現在、養護教諭に相談し、下着の上から診察している。
ただ「校医の立場からすると着衣での健診はやりづらい。戸惑う先生もいるはず」という。例えば、背骨が曲がっていないかを診る際、「裸でも見分けるのは難しい。服の上からだと診察にならない」。杉野さんの場合は、子どもに背中を向けてもらい、養護教諭に服をめくってもらい診察しているという。
熊本県立高校でも「原則、着衣」の健診が徹底される。杉野さんは「病気の見逃しがあれば、本末転倒。プライバシーへの配慮と正確な健診が求められる校医の負担は大きくなる」と感じている。映像写真など科学技術を活用した手法も一案として示しながら「見直しへ向けた議論が必要」と訴える。(東有咲)
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熊本市出身。早回しの歌に乗せた形態模写やデフォルメの効いた顔まねでデビューして45年。声帯模写も身に付けてコンサートや座長公演、ドラマなど活躍の場は限りなく、「五木ロボ」といった唯一無二の芸を世に送り続ける“ものまね界のレジェンド”です。その芸の奥義と半生を「ものまね道」と題して語ります。