【この人に聞く・熊本地震41】防災学習アドバイザーの諏訪清二さん 子どもたちの「体験語りつぎ」 「心にしみる言葉、防災の原動力」

熊本日日新聞 2018年7月2日 00:00
 ◇<b>すわ・せいじ</b> 1960年、兵庫県明石市生まれ。2002年から同県立舞子高環境防災学科長。17年4月から同県立大大学院特任教授。著書に「防災教育の不思議な力」など。神戸市在住。58歳。
 ◇すわ・せいじ 1960年、兵庫県明石市生まれ。2002年から同県立舞子高環境防災学科長。17年4月から同県立大大学院特任教授。著書に「防災教育の不思議な力」など。神戸市在住。58歳。

 「ユース熊本地震を『語りつぐ』会」と題した合宿が28、29日、阿蘇市で開かれる。被災地の中高生が思いを分かち合い、未来に発信しようというワークショップだ。実行委員会の委員長で防災学習アドバイザー・コラボレーターの諏訪清二さんに、子どもたちが震災体験を語りつぐ意義を聞いた。(小多崇)

 -災害体験の表現活動は心身への影響を考慮すべきだとの意見があります。この時期に合宿を開く意図は何でしょうか。

 「発生直後は避けるべきだが、一定期間が過ぎ、安心感が生まれたころには環境を整えた上で表現活動を促すことが望ましいと言われている。東日本大震災では、機会を逸し、つらい思いを抱えたままの子どもたちがいる。地震発生から2年が過ぎた熊本の子どもたちが安心して語り合える場を提供したい」

 -子どもたちの「語り」にはどんな意味がありますか。

 「災害体験を自ら語ることで、気持ちが整理され、心のケアにつながる。一方、聞く側にとっては心にしみ込む言葉が、災害について考え、備える行動の原動力になると思う」

 -防災力の向上につながるんですね。

 「災害体験や教訓を真の防災につなげるには『ふに落ちる』ことが大切だ。体験の語りに対し、世の中は『社会的な意味』を見いだし、よりよい社会をつくる教訓との色合いを求めてしまう。ノウハウや知識に偏り、大人の視点で防災の大切さを子どもたちに押し付けがちだ」

 「もちろん大人の語りを否定するわけでなく、心に響く切実な体験が多く語られている。しかし、災害体験が防災に生かされていないのも現実だ。今回の大阪府北部地震で注目されたブロック塀の倒壊は、23年前の阪神・淡路大震災でも多発したことだ。しかし、市民も行政も学んでいなかった。ただ、災害体験は受け継がれないのが普通で、過去の課題が災害のたびに繰り返されている」

 -だからこそ子どもたちが語り合い、耳を傾けることが重要なのですね。

 「災害体験の語りには『社会的な意味』だけでなく、『個人的な意味』もある。その点、子どもたちは安心して話せる場では、教訓やノウハウを意識せず、素直に語ってくれる。そんな言葉こそ、聞いた子どもたちの心にもストンと落ち、次への『気持ち』を育ててくれる。大人が唱える災害への備えも、行動を求める以前に気持ちを育まなければ実行にはつながらない。防災教育の機会としても、今回のワークショップを有意義な場にしたい」
    

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